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Don Basilio, o il finto Signor

ドン・バジリオ、または偽りの殿様

オペラなひと♪千夜一夜 ~第五十一夜/Mr.Ms.~

どうもいつも男声が続きがちなので、たまには女声続きで行きたいと思います(笑)

MarilynHorne.jpg
Arsace

マリリン・ホーン
(Marilyne Horne)
1934~
Alto, Mezzo Soprano
America

「とか言いながらタイトルに“Mr.”って入ってるやないかい!」と思ったそこのあなた!全くごもっともです(笑)
歴史的な経緯からオペラには妙な習慣があり、男装をした女性が男性役としてしばしば登場します。これをズボン役と言い、英雄と言うべき役回りのこともあります。結構これは曲者で、技術や歌心だけ俎上にとれば大変優れた歌唱を示したとしても、声質が可愛すぎたり色っぽ過ぎたりすると、様にならない!で、そうした役での活躍が目立つのがホーンなのです。或る意味で男よりも男らしい、立派な声で、きりっとした若武者が目に浮かびます。特にロッシーニの諸役については、彼女なくしては語れないもの が多々あります。

しかし、その男勝りな声をどうにも受け入れがたいと思った批評家が日本にはおり、そのために長らく正当な評価がなされてきていませんでした。このあたり同様にこの頃の米国で活躍した歌手であるサザランドやミルンズともどもこっけこけに言われているのを見るにつけ、や、それは違うんじゃないの?と思ってしまいます。彼女の声、技術、歌心はいずれをとっても超一級のものだと思いますし、上述のとおり彼女がいなければその後のロッシーニ・ルネッサンスへの足がかりは、確実に一つ少なかったでしょう。
「男性顔負け」というアピールをし過ぎましたが、もちろん女性の役でもその素晴らしい歌唱を駆使していろいろな功績を残しています。ロッシーニもですが、意外と知られていないところだとグラントペラの録音がいくつかあり、これらも聴き逃せません。

実生活の夫君はバスのニコラ・ザッカリア。ちょっと意外な感じもしますが、一緒の録音も多いです。

<演唱の魅力>
この人の場合良くも悪くも常にまず言及されるのは、その太い響きの声です。好む好まざるに関わりなく、その声の響きは非常に印象的。「野太い」「男のような声」「ゾッとする」なんていう評が出るのもわからないではないのですが、僕自身は決して悪声ではないと思っています。深い響きのある声で、やわらかみのある響きなので、ベル・カントものや仏ものでは非常に映えます(尤も、彼女自身のレパートリーは僕が聴く範疇を超えてかなり広いので、より適正を感じるエリアもあるのかもしれませんが)。中でもやはりまず外せないのはズボン役で、その力強い響きは魅力的です。どうしても女声が男性役をやるとのには声質の部分で無理があって、場合によると歌そのものの立派さに至る前に違和感を覚えてしまうこともありますが、ホーンの場合はその違和感があまりありません。むしろ凛々しい若者の姿を素直に想像できるという点で、彼女は他の歌手よりも恵まれていると言っていいでしょう。ただどうしてもそのイメージが先行しているところがあって、彼女を評価する向きの人の中でも、女性役を演じた時の評価というのはいま一つ出てこないように思うのですが、それでは極めて一面的な捉え方のように感じます。何故なら、彼女は女性の役を演じてもきっちりとその力を出すことのできる人だからです。当然ながら女性の役を演じるに当たってはアルサーチェ(G.ロッシーニ『セミラミデ』)やタンクレディ(同『タンクレディ』)と同じような歌は歌いません。その声のやわらかさを遣い、より甘みのある表現で女性らしさを出しています。このように書くと当然のことしているようですが、それをハイレベルで実現しているからこそ、引退後久しい現在になっても取り沙汰される優れた歌手である訳です。彼女の評に於いて、どうもこうしたことは不当に無視され過ぎているように感じます。

その秀でたコロラトゥーラの技術も彼女の大きな武器でしょう。特にロッシーニの作品で顕著な高度な転がしは特殊な技能というべ きで、彼女の同世代でそれが可能だった人は少ないです。そういう意味では彼女はその後来るロッシーニ・ルネサンス及び現代のロッシーニ歌手たちの先鞭をつけたと言っても過言ではないと思います。本当にある時期までのロッシーニのメゾはホーンとベルガンサ、ちょっと下ってヴァレンティーニ=テッラーニと一部バルツァがほとんど。いまでこそ百花繚乱というべき様相ではありますが、こうした先達がいなければ状況は違っていたかもしれません。また意外と見過ごされがちですが、コロラトゥーラの技術はグラントペラでも多用されています。彼女がこの領域でも素晴らしい録音を残しているということは、理由のないことではないのです。

<アキレス腱>
やはり声がやわらかいのだと思います。堅い声が欲しい作品ではいま一つ。
具体的なことを言うとボニング盤『イル=トロヴァトーレ』(G.F.F.ヴェルディ)のアズチェーナは明らかにミスキャスト。これは他にもヴィクセルのルーナ伯爵とかサザランドのレオノーラとかトホホなところがあるもんで余計印象が悪いという説もありますが^^;(ちなみにサザランドはここでは持ち味が違うだけで素晴らしい歌手だと思います)。アムネリス(同『アイーダ』)やエボリ(同『ドン・カルロ』)も歌っているそうですが……ヴェルディのこういう大きい役はこれらから考えるとイマイチなような気が。
未聴ながらツェルリーナ(W.A.モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』)も歌ってるようですが、怖いもの聴きたさがあるようなないような(笑)でもミニョンは良かったので悪くないかもしれません。

<音源紹介>
・アルサーチェ(G.ロッシーニ『セミラミデ』)
ボニング指揮/サザランド、ルロー、セルジ、マラス共演/LSO&コヴェント・ガーデン王立歌劇場合唱団/1966年録音
>いろいろな意味でいまや古いスタイルと言わざるを得ないとは思いますが、ひとつ重要な録音であると思います。何と言ってもホーンのアルサーチェ!これはやはり素晴らしい歌だと思います。この荘重な作品の主人公として、登場場面から華のある存在感を示して呉れますし、技巧の面でも舌を巻きます。まずはこれだけしっかり歌っているということだけでも評価されるべきですし、力強い若武者の姿を充分に表現していると思います。加えてここではサザランドとの相性の良さも特筆すべきもの。このふたりの声の重なりを聴ける重唱はこの録音の白眉でしょう。サザランドそのものもいまやベストのセミラミデではないとは思いますが、それでも立派な歌です。ルローのアッスールは技術的には辛いところもありますが、なかなかカッコいい悪役声で頑張っていると思います。セルジは正直つらいなぁ……どうせならアリア両方カットでも良かったのでは。ボニング先生の指揮はいいところもありますが、だるいとこはだるいといういつもの感じ。なにより盛大なカットが残念ではあります。とはいえ、ホーンの魅力を語る上では欠かせない音盤でしょう。

・タンクレディ(G.ロッシーニ『タンクレディ』)
ヴァイケル ト指揮/クベッリ、パラシオ、ザッカリア、ディ=ニッサ、シューマン共演/フェニーチェ歌劇場管弦楽団&合唱団/1983年録音
>流石に古い録音だなとも思いますが、ここでのホーンはやっぱり名唱だと思います。彼女はこの作品を好んで各地で取り上げ、人気の復活に一役買ったそうですが、それもよくわかる立派な歌唱。ここでもその凛々しい声が非常に活きていますが、終幕の死の場面などpで持っていく部分もよく練られた歌だと思います。これが中身のない歌唱だったらいったいどんな歌唱を期待しているのでしょう。また外面的なところではありますが、彼女は原作通り悲劇で終わるフェラーラ版に拘っていたのだそうで、そういったエピソードを勘案しても、何も考えずただ綺麗に歌いましたという人ではないのは透けて見えると思うのですが。共演ではパラシオが凛々しくてよいですが、クベッリはもうちょっとかな。

・ジョヴァンナ・セイモール(G.ドニゼッティ『アンナ・ボレーナ』)
ヴァルヴィーゾ指揮/スリオーティス、ギャウロフ、アレグザンダー、コスター、ディーン、デ=パルマ共演/ヴィーン国立交響楽団&合唱団/1968-69年録音
>この音盤も既にギャウロフとスリオーティスの回でそれぞれ登場し、世間の評は兎も角個人的には名盤と思う、というお話をしているところですね^^サザランドとの声の相性がよく取り沙汰されますが、スリオーティスともいい感じ。従ってアンナとジョヴァンナの重唱の場面はお見事、ヴァルヴィーゾの采配もあって緊張感のある仕上がりになっています。意外と少ないギャウロフとの重唱も聴き逃せません。2人とも声が最も豊かな頃ですからかなりの充実感があります。当然ながらホーン単独で歌う部分でもその技術の高さで聴かせ、特にカバレッタは立派な演奏だと思います。

・ミニョン(C.L.A.トマ『ミニョン』)
デ=アルメイダ指揮/ヴァンゾ、ザッカリア、ウェルティング、フォン=シュターデ共演/フィルハーモニア管弦楽団&アンブロジアン・オペラ合唱団/1977年録音
>名盤。かつて大流行した演目ですが、こうして聴ける録音の何と少ないこと!可憐な少女の役にホーンが似合うのかと最初思いますが、いざ聴いてみると流石というところ。名アリア“君よ知るや南の国”は豊麗でやわらかな声に合っていますし、コロラトゥーラを要求される部分もあるので、実は彼女の本領を示せる役ですね^^ヴァンゾのスタイリッシュで気品のあるヴィルヘルムは仏ものテノールの理想的な歌唱だと思いますし、夫君ザッカリアのロタリオも滋味の溢れる歌で感動的。ウェルティングの煌びやかなアリアも見事。脇役で参加しているフォン=シュターデも双葉より芳しいですね、彼女のミニョンも聴きたいと思いますが。ちょっと指揮がまったりし過ぎな気もしますが、それは作品そのものにも言えるかもしれません^^;けど、悪くないです。

・フィデス(G.マイヤベーア『預言者』)
ルイス指揮/マックラケン、スコット、バスタン、ハインズ、デュパイ、ドゥ=プレシス共演/ロイヤル・フィルハー モニック交響楽団&アンブロジアン・オペラ合唱団/1976年録音
ルイス指揮/ゲッダ、リナルディ、ジャコモッティ、エル=ハーゲ共演/RAIトリノ交響楽団&合唱団/1970年録音
>いまやマイナーになってしまっていますが、これはもっと演奏されていい優れた作品だと思います。ホーン演ずるフィデスはお仕着せ預言者ライデンのジャンの母親ですが、この作品の真の主役は彼女ではないかと言うくらいの活躍ぶりを示す役どころ。ホーンはドラマティックで貫録たっぷりです。ここでもかなりのコロラトゥーラ(ヒロインに与えられた音楽よりも高度です笑)がありますが、見事に捌いています。ロッシーニが書いているものとは聴いた感じでもかなり理窟が異なる音符の並びだと思うのですが、ほんと にたいしたものです。綺羅星のようなスターを並べた76年盤が立派な演奏だとは思うのですが、ジャンについてはゲッダの方がいいかな。いずれにせよ『ユグノー教徒』や『悪魔のロベール』の良い音源も出てきている訳だし、復刻して欲しい楽しめる音源です。作品自体もマイヤベーア渾身の作品だと思うし、リヴァイヴァルして欲しいです。

・ラウラ(A.ポンキエッリ『ジョコンダ』)2013.12.6追記
ガルデッリ指揮/テバルディ、ベルゴンツィ、メリル、ギュゼレフ、ドミンゲス指揮/ローマ聖チェチーリア管弦楽団&合唱団/1967年録音
>不滅の名盤。ここではその豊かで柔らか味のある声をフルに使って、ラウラを優しい人物として描くことができているのではないかと思います。また、意外なぐらいドラマティックな歌いぶりで、藝風の広さを感じさせます。テバルディとの対決場面はこの音盤の白眉と言って良いかもしれません。テバルディ、ベルゴンツィのところでも述べたとおり共演陣及びガルデッリの指揮はいずれも見事でこの決して短くない作品を一気に聴かせてしまう音源です。再販を強く希望します!

・マッフィオ・オルシーニ(G.ドニゼッティ『ルクレツィア・ボルジア』)2014.9.3追記
ボニング指揮/サザランド、アラガル、ヴィクセル、デ=パルマ、ヴァン=アラン、ザッカリア共演/ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団&ロンドン・オペラ合唱団/1961年録音
>名盤。アルフォンソ役以外のすべてが揃った演奏です。特にサザランドが凄い。ホーンは流石にこうした男役を演じるとびしっとハマりますね^^歌い口も凛々しく、アラガルとの若者コンビに説得力があります。大物を揃えた脇役陣とのアンサンブルの中でも埋もれずにきっちり存在感を発揮し、若者たちをリードしていくところは流石の一言。しかしそれ以上にこの人の技巧の高さに唸らされると言ってもいいかもしれません。有名なクープレの2回目の自由自在な装飾には圧倒されます。こういうコロラトゥーラを嫌う向きもありそうですが、公平に見てここまで歌える技術力は評価されるべきです。彼女の名唱のひとつとして、記憶に留めるべきものだと思います。
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Chalicotherium (Anisodon)

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カリコテリウム
Chalicotherium
(Anisodon grande)

この前upしたテリジノサウルス、いじれば作れるのではないかと思ったカリコテリウムを早速。

どうしても「カリコテリウム」という名前のイメージの方が強いですが、どうやら最近はこの学名はお釈迦になっているようで、一番一般的なgrande種は「アニソドン」という属になっているようです。作品ではちょっとややこしいので、敢えて「カリコテリウム」で。
詳しくはこちらのafragiさんのサイトもご覧くださいませ。

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一般的なカリコテリウム、なんて言いましたが、そもそもカリコテリウムってなんだよ!ですよね笑。
またまたかなり変わった哺乳類です。
指の本数が奇数でそれらが蹄になっている仲間、即ち奇蹄類(この説明はかなりざっくりです、ちょっと違うやつもいますから、まあ押しなべてということでw)、現在生きているところで言うとウマ、サイ、バクの親戚筋に当たります。
が、こいつら蹄生えてないんだよねwww前指も後ろ指も全部鉤爪!しかもなんだか長い前脚を持っていてとっても不思議な姿。
こんなやつ現在おりませんから、どんな暮らしをしてたんだろね?となる訳です。

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よく立てるよねとよく言われますが、後肢としっぽで3点作れれば意外と立たせるのは難しくないもんです^^
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ベニテングタケ

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ベニテングタケ
Amanita muscaria

なまけっとの時に冬虫夏草がウケたのに味を占めて再びキノコにチャレンジ!
※「味を占めて」作ったのに冬虫夏草はあんまり美味しくないし、ベニテングタケは不可食菌なのがこの文のミソ。と言っても北欧などではベニテングタケは毒抜きして食べているそうですが。

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テングタケの仲間ですから、どうしても作りたいのはツバとツボ。
ツバというのはキノコの柄の部分にちょろちょろっとついてるやつ、ツボは根元の部分にある卵みたいなやつのこと。双方あるのがテングタケの特徴です。

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本当は傘の部分を丸く作りたかったのですが、構造上うまく行かず、みんなどっか欠けて虫食いになってます^^;
ちなみに野外でキノコを見つけたときに蟲が食べてたりカタツムリがついてたりするやつは食べられるっていう俗信がありますが、嘘です。蟲にとっては毒ではないけどヒトにとっては毒キノコというものも珍しくありません。

お分かりかと思いますが、赤で作ってるのでベニテングタケと言ってますが、他の色で作れば他のキノコになりますw
今回は単なる赤折り紙でもよかったのですが、模様がうまく遣えそうな気がしたので千代紙。それらしくなったかな?

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折角なので育っていない子も作ってみました^^
これより育ってないものは本当に卵みたいになっており、そこを突き破って傘が開き、柄が伸びていくんですね。で、元あった卵っぽい部分がツボになる。テングタケの傘の白いポチポチは実はその卵を突き破った時の卵の上側の破片なんです。
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オペラなひと♪千夜一夜 ~第五十夜/歌劇王~

いや~感無量、第五十夜です!
当初毎週1人ずつ紹介してアラビアンナイトよろしくやっていこうと「千夜一夜」と名付けたものの、早々に毎週の投稿を諦め、途中で現在の場所に移築して足かけ4年でようやっと五十夜!千夜一夜やろうと思ったら同じペースで書いても80年かかりますね苦笑。

という訳でめでたい切り番ですので、なんかしようと。
と言っても指揮者やら演出家やらについて書く力量は僕にはございませんで……

折角なので今年生誕200年のこの人の話をしようと。
※指揮者の話ができねえなら作曲家の話なんてもっとできねえだろ!という批判は甘んじて受けます(笑)。

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ジュゼッペ・ヴェルディ
(Giuseppe Fortunino Francesco Verdi)
1813~1901
Composer
Italy

予想どおりだと思いますけどヴァーグナーではなく、ダルゴムイシスキーでもなくヴェルディです(ヴァーグナーは苦手だしダルゴムイシスキーは『ルサルカ』しか知らないし^^;)

伊歌劇のみならずオペラそのものを代表する作曲家であり、日本に於いては「歌劇王」という敬称を冠されることもあります(尤も、ヴァーグナーのことを指していうこともありますが)。生涯に約26曲ものオペラを作曲しています(と言ってもカウントの仕方によってこれは変わりうる数で、『第1回十字軍のロンバルディア人』を『ジェルザリム』に仕立て直したり、『ドン・カルロ』や『マクベス』などのように同じ題名のまま改作したりというのを含めるとこれよりも多くなります)。この数自体は必ずしも飛び抜けて多い数ではありませんが、その中には現在でも劇場の主要なレパートリーとなっている作品が沢山あります。またオペラ以外の作品では『死者のためのミサ曲(レクイエム)』が有名ですが、それ以外にも小さいものから大きなものまで作品を残しています。
個々の作品への私自身の感想はこちらに。一応全部聴いてはいるのですが、記事を書こうと思って聴き直したりしてると全然進みませんね^^;

ヴェルディの作風だとか音楽的な価値だとかっていうことを詳しく語るには、自分の知識はあまりに貧弱ですし、ヴェルディの人となりだとか生涯、或いは演奏史についてもより詳しい方がたくさんいらっしゃるのでそれらについては一家言ある方に譲るとして、今回は彼の作品の中でも秘密の名盤を、涙を飲んで5つだけご紹介します。
秘密の名盤なので有名なスタジオ録音とかカラスの『椿姫』とかミトロプロスの『運命の力』と『エルナーニ』とか伝説のNHK『オテロ』とかよく言及されるものは敢えて除きました。結果、歌手でも本来触れたいひとが登場せず、更に指揮者で聴く人からすれば噴飯ものかもしれないラインナップになった気もしますが、それでも敢えて絞った結果、ということで(笑)

・『アッティラ』
シノーポリ指揮/ギャウロフ、カプッチッリ、M.ザンピエリ、ヴィスコンティ等/ヴィーン国立歌劇場管弦楽団&合唱団/1980年
>初期ヴェルディからはこの音盤を。
作品自体はムラッ気の多いテミストクレ・ソレーラが途中で投げしまいフランチェスコ=マリア・ピアーヴェがなんとか回収した台本なので、相当ずっこけです^^;(詳しくは後日改めて記事を書きますが)だから上演として成功させるには演奏者側に相当の力量が必要だと思いますが、この演奏は物凄い記録です。
何より先ず演奏の温度が違います。初期のヴェルディを演奏する上で欲しい熱気が物凄い!これが誰の力かと言えば一番はエツィオのカプッチッリでしょう。押し出しの強い立派な声と表現でプロローグからハイテンションなのですが、やはりカバレッタでのハイBが凄まじい!しかもこれをbisに応えて繰り返してくれるなんて!人々を熱狂させる娯楽としての歌劇の素晴らしさを端的に伝える演唱と言っていいと思います。また、シノーポリもテンションが高いですね。彼はどっちかと言うと理知的で分析的な演奏を構築するという印象のある人ですが、これを聴くとちょっとイメージが変わります。実は彼を一夜にして有名にした演奏がこれだというので、芯の部分はホットな人なのかもしれません。題名役のギャウロフは声について言えば最盛期を過ぎていて、彼にしては渋く纏めている感じではあるものの、やはり特筆すべき存在感。悪夢について語るアリアでは、この作品の中にも後年のヴェルディに繋がる苦悩する人間の姿が確かな筆致で描かれていることを感じさせます。これらのひとに較べると、テンションは高いもののちょっと声が可愛すぎるザンピエリや、やや細めのヴィスコンティ(まあなよっとした役だからいいんだけど)は若干落ちるような気はするのですが、総体として見たときにはめり込まずいい印象を残して呉れます。
オペラの熱狂を好む向きにはおススメです。

・『イル=トロヴァトーレ』
クレヴァ指揮/ベルゴンツィ、ステッラ、バスティアニーニ、シミオナート、ウィルダーマン等/メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団/1960年
>熱狂の演奏と言えばこれも外すことのできないもの。この作品のスタジオ録音と言えばやはりセラフィン盤が代表的だと思うのですが、あれが端正過ぎるまたはコッソットが若々し過ぎてキャラじゃないと思っている向きにはこれは超おススメです!
クレヴァはそんなに有名な指揮者でもないかなと思うのですが、ライヴでテンションの高い演奏を結構残しており、その最右翼がこれ。畳みかけるようなテンポが異常な熱気を生み、その異常な熱気が更に音楽を煽っていくような凄い棒です。ライヴらしい疵があったり、合唱やらオケやらがあまり巧くなかったりということはあるのですが、この熱気はそういったものを度外視させるだけのパワーがあります。
そうした熱気の中で歌手たちの奮闘も凄まじいです。やはりセラフィン盤唯一のミス・キャスト、若過ぎたコッソットが迫力満点、老獪なシミオナートになっているのが、まずは大きなポイントです。アズチェーナはこのぐらい異常なオーラを漂わせている方がキャラクターとしても物語としても面白さが増します。この作品の真の主役がアズチェーナであることを納得させて呉れる演奏です。最高のルーナ伯爵、というか伯爵その人のようなバスティアニーニもスタジオ録音での安全運転からハンドルを切るのがギリギリの過激な歌いっぷりになっていますがこれまた見事。シミオナートとバスティアニーニはフォン=カラヤンのライヴでも対決していますが、あの温度の低い重ったるい演奏とは違いふたりともキレッキレで丁々発止というところ。ステッラもこのひとのベストと言っていい歌唱でしょう。彼女のイメージは美しい声による美しい歌唱というところではないかと思いますが、そんなところを飛び越えた力漲る歌。そして、極めつけはベルゴンツィ!彼を単に優等生的な折り目正しい歌を歌う人だと思っている方には是非とも聴いていただきたい!彼らしい歌の端正さをキープしながら、マンリーコはこうあって欲しいという理想どおりの強烈なテンションの高さ、それに輝かしい高音と非の打ちどころのない凄まじい熱唱です。これでフェランドがヴィンコならまったく文句なかったのですが、ウィルダーマンも悪くはないでしょう。
昨今聴けない兎に角テンションの高い『トロヴァトーレ』がお好きな方は是非!

・『ドン・カルロ』
アバド指揮/ギャウロフ、カレーラス、フレーニ、オブラスツォヴァ、カプッチッリ、ネステレンコ、ローニ等/ミラノ・スカラ座歌劇場管弦楽団&合唱団/1977年
>この作品の最高の録音のひとつと言っていいでしょう。
アバドの『ドン・カルロ』と言えばスタジオ録音で補遺まで贅沢に乗っけたものが有名ですが、仏語版だったりアバドのゆったりしたテンポ取りだったりがこの作品のヴェルディらしさを殺いでしまっていて賛否が分かれるところ。普通聴けないところがあったりというのは興味深いものの、僕も今ひとつと思っています(ギャウロフの宗教裁判長が聴けるのが最大のポイントですが)。
この録音はそこでの消化不良な気分を解消して呉れる超名演です(このメンバーで悪かったらよっぽどですが)。スタジオ録音同様5幕版に加え通常はカットされる様々な音楽が入っています。アバドはスタジオ録音でのトロさは何処へやら、ライヴだというのもあるかと思いますが見事な采配で、この長い版を飽きさせることなく聴かせて呉れます。同じようなメンバーで録音したフォン=カラヤンがオケを鳴らし過ぎでオペラというよりは声楽的交響曲のような風情になっているのに対し、こちらはしっかりとオペラですしね!(笑)ちなみにここでは述べませんが、この上演はフォン=カラヤンの嫌がらせで放送ができなかったという曰くつきのもの。
歌手ではやはりまずはギャウロフのフィリッポが素晴らしい!この役を歌わせたら右に出る者はいないということを再確認できます。声そのものは全盛期の張りのある輝かしい響きではありませんが(と言っても凡百の歌手とは格が違いますが)、その表現のうまみと言ったら!恐らく唯一だと思うのですが、ロドリーゴの死を受けたカルロとの重唱(後に『死者のためのミサ曲』の“ラクリモーザ”に転用される)を彼の歌で聴けるのも儲けものです。カルロのなよっとしたキャラクターにはやはりカレーラス!『カルメン』のドン・ジョゼもそうですが彼の虚弱であんまりおつむがよさそうでないのが母性本能を擽る感じがカルロという役にはピッタリです(褒めてます、褒めてます)。フレーニももっと可憐な娘役のイメージが強くはあるのですが、何を歌わせてもうまみのある歌唱をするひとだなあとしみじみ思わせます。これだけのエリザベッタはなかなか聴けるものではありません。ロドリーゴのカプッチッリがまた演劇的な歌唱と華のある存在感でカッコいい!エツィオのときのようなハデハデ歌唱ではありませんが、カルロに寄り添う義人でありながらフィリッポにも近付く高度な政治家という役どころがハマっています。この役についてはバスティアニーニと東西の横綱でしょう。エボリのオブラスツォヴァは技術的にもう一声というところもありますが気迫の歌唱で、美貌のアリアは圧巻。バンブリーやコッソットだったらと思わなくもないですが、充分な内容だと思います。ネステレンコの宗教裁判長はこれだけだと思いますが、若いときの歌だけに大変輝かしい声で上から下まで文句なく鳴ります。ギャウロフとの対決も力負けすることなく、手に汗握るアツい場面に仕上がっています。修道士のローニも流石の名脇役ぶりですし、スカラですからオケも合唱もしっかりしています。
『ドン・カルロ』がお好きなら座右に置きたい演奏のひとつです。

・『シモン・ボッカネグラ』
ガヴァッツェーニ指揮/ゴッビ、トッツィ、ゲンジェル、G.ザンピエリ、パネライ等/ヴィーン国立歌劇場管弦楽団&合唱団/1961年
>不滅の名盤アバド盤への対抗盤です。
アバド盤がカプッチッリやギャウロフを配した素晴らしい演奏であることは言を俟ちませんが、だからと言ってそれのみが秀でた演奏だという訳ではなく、このガヴァッツェーニ盤もまた異なるベクトルでの超名演だということができます。端的に言えば、前者が音楽的に磨き上げられた『シモン』だとすると、後者はより劇的な『シモン』だということができると思います。
ガヴァッツェーニは面白くない演奏をすることもある人ですが、ここではオペラのツボを把握した非常に立派な演奏。間の取り方や盛り上げ方、それにテンポ感などいずれもあらまほしきもので、彼の劇場感覚の確かさを感じさせます。生前「シモンを演じられるのならば他にどんな条件があろうとも行く」と語ったというゴッビは千両役者っぷりをフルに発揮。偉大な政治家として風格のあるシモンを演じたカプッチッリよりも、より曲者らしいシモンです。フィエスコについてもスケールの大きな歌唱を繰り広げているギャウロフに対し、非常に人間臭い歌唱をするトッツィという対比が成り立っていると言えるでしょう。メトを代表する演技派のバス歌手であった彼の持ち味が十二分に活かされています。両盤の特徴の違いを一番感じさせるのはパオロかもしれません。アバド盤のファン=ダムが本当に音楽的に美しい歌を歌っているのに対し、ガヴァッツェーニ盤のパネライは演じている、という感じ。自分で自分を呪う場面は特に強烈です。海賊盤の女王ゲンジェルもライヴらしいパワフルな歌唱をしていますし、ザンピエリ(こちらはテノール)も良い声でまずまず。
アバド盤を愛聴している方にこそ聴いていただきたい名盤。

・『オテロ』
セラフィン指揮/デル=モナコ、カルテリ、カペッキ、クラバッシ/RAIトリノ管弦楽団&合唱団/1958年
>今回はこれのみ放送音源ですが、ライヴに負けない熱気があるもの。
『オテロ』の名盤もたくさんあり、なかでもデル=モナコのオテロによるものはそれこそいい演奏がたくさんある訳ですが、その中でもデズデモナのカルテリとイァーゴのカペッキはあまり言及されないけれども忘れることのできない歌唱です。
音が必ずしも良くないのは残念ですがセラフィンの指揮は大変見事。冒頭の嵐の場面から一気に物語の世界に引き込まれます。このあたりは流石の手腕と言うより外ありません。必ずしもオケは巧くないですが、立派な演奏です。オテロのデル=モナコもいつもどおりカッコいい!「喜べ!」の一語だけで聴くものを夢中にさせられるオテロはやはり彼だけかなと思います。このオテロに絡むカペッキのイァーゴがいやらしいぐらいの演技派っぷり。器用な歌い方をする人に共通する点だとは思うのですが、pの表情付けが非常に巧く、心憎いです。そしてカルテリのデズデモナ!このひとは早くに結婚して辞めてしまったのですが、それが全く勿体ない!こってりとした美声で紡ぎだされる彼女の歌の表現力たるや。そしていつもながら渋く脇を固めるクラバッシもいいです。
『オテロ』の隠れ名盤、聴かなきゃ損損です!
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Therizinosaurus

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テリジノサウルス
Therizinosaurus cheloniformis

以前作品を作ったデイノケイルスとともに謎の恐竜として知られています。
最も特徴的だとされているのが前肢についている鋭い爪。これがためについた名前も「草刈鎌の竜」という意味。
その前肢とともにわずかに見つかっている身体の骨から様々な姿が想像され、例えばカメのような姿に復元されたり(種名は「カメのような姿の」という意味)、前肢の印象から超巨大な肉食恐竜に復元されたり、兎に角いろいろなすがたにされてきました。
現在ではセグノサウルスと呼ばれる、鳥へと進化していく過程で植物食に適応したグループだと考えられています。

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本当はもっと前傾の恐竜らしい姿勢にしたいところだったんですが、前肢が重すぎてバランスが取れず(^^;
両手を挙げて威嚇をしている、という体で作りました。だから思いっきりゴジラ立ちっぽいけど、赦してww

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個人的なイメージでは、こいつらと絶滅した哺乳類のカリコテリウムやメガテリウムは収斂なのかなと思っていたり。
どれもいまいち正体のわかっていない生き物=今似たような姿をしたやつがいない生き物なので、推論でしかないですけどね笑。
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かはくの展示から・恐竜展特別編~第4回/オヴィラプトルの仲間

このblogは国立科学博物館の公式見解ではなくファンの個人ページですので、その点についてはご留意ください。

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オヴィラプトルの仲間
Oviraptorosauria
特別展

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ひとくくりにしてしまったけど今回の特別展の中でも重要なポジションを占めるグループ。

上の写真はまだ厳密な種名はついていないけれども、典型的なオヴィラプトル顔の頭蓋骨。変な顔でしょ?wwどっちが前かと言われると、はてと首を傾げてしまうぐらい妙チクリンな顔をしていますが、左側が前です。
歯がない動物は、特に化石種だと大変厄介です。というのも、歯はその動物が何を食べていたかという根拠になるからで、それがないとなると何を食べていたのかよくわからない。食性は動物の生態の重要な要素ですから、これは大問題です。
このオヴィラプトルの仲間も卵食だとか貝食だとかいろんなことを言われましたが(ちなみに卵も貝も食性がよくわからない動物が食べてたことにされるものの定番。あとは蟻とかもそうですねww)、結局よくわかっていないようです。どうやら植物…?

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「インゲニア Ingenia yanshini 」という名前で展示されている標本。真ん中に展示されているのが前回お話ししたホロタイプで大変貴重なもの。
オヴィラプトルの仲間では小型ながらがっしりした身体をしており、比較的研究の進んでいる種類です。が、11/20付の『恐竜の楽園』さんの記事を拝見するにどうやら名前が変わりそう^^;
遣おうと思っていた名前が既に遣われていた場合には使用できないというのは学名をつける際の基本的なルールのひとつで、「インゲニア Ingenia」という名前が既に別の生き物の学名として遣われていたことで無効名になったということ。新たな学名として「アジャンシンゲニア Ajancingenia yanshini 」が提唱されているそうですが、『楽園』さんもおっしゃってるように、今回はちょっと?な展開のある顚末です。

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続いてノミンギア Nomingia gobiensis 。こいつもホロタイプ。
こいつで有名なのはしっぽの先の骨がくっついてひとつの骨、尾端骨になっていること。現生の鳥でもしっぽの骨は尾端骨になっていますが(華やかな尾があるように見えるのはみんな尾羽です)、鳥への進化とは直接関係ない独自の進化だと考えられています。とはいえ彼らも鳥に非常に近いとされる恐竜です。

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それからリンチェニア Rinchenia mongoliensis ですが、これもまたホロタイプ。
こうも多いと「ホロタイプってそんな珍しいの?」と思うかもしれませんが、こんなにホロタイプがあるなんて普通あり得ないですからね!今回が異常なんですからね!笑
今回の恐竜展にも関わってらっしゃる蒙国の高名な恐竜学者リンチェン・バルスボルドさんによって名づけられた恐竜。
学名に人の名前をつける時には自分の名前をつけるということはひけらかしみたいになるのでしません。「献名」と言い、高名な人や最初に発見した人(当然自分自身でなければ)の名前を献呈するのが一般的。あれ?じゃあリンチェニアは?となりますが、これは実は事情があって、蒙国の名前の付け方として、父親の名前の後ろ半分を子供の名前の前半分にするという習慣があるのだそうで、つまりバルスボルドさんのお父さんが○○・リンチェンさんなんですね^^という訳で、お父さんに献名しているのです。

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もう1個、とびきり珍しいのがこれ。これも実骨です。
なんと卵の中でかなり成長した胚がそのまま化石になっています!これにより蒙国からたくさん出てくる長細い卵の主が、実はオヴィラプトルだったということを証明した研究史的にも重要な化石です。
どこがどうなってるのかちょっとわかりづらいですが、綺麗に保存されているのはわかるかと思います^^

<参考>
・「大恐竜展 ゴビ砂漠の脅威」図録/国立科学博物館/2013
・恐竜の楽園 「インゲニアは無効名で、改名」2013/11/20
http://www.dino-paradise.com/news/2013/11/a-new-name-for-the-oviraptorid-dinosaur-ingenia-yanshini.html
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ホホジロザメ

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ホホジロザメ
Carcharodon carcharias

ここではいろいろなサメをご紹介してきましたが、実は最初に作ったのはこいつ。
いまでも覚えていますが、確か法事で乗った新幹線でこねくり回していたら偶然できたんですね。そしたら隣に乗ってた出張帰りの酔っぱらいのサラリーマンにえらく気に入られて、めんどくさいから1個あげました。思い出深い逸品ですね!!(笑)

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そんな感じで作ったというのもあって細かい部分で違うところ(いつもながら鰭の数とか)はあります。
が、まるまるとした樽のような胴体は結構気に入っていたり。個人的な技術の問題もあるのですが、折り紙で膨らみや重厚感を出すのは結構毎回苦戦するところなので^^;

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このサメは胎生ということで、赤ちゃんの形で出産をします。お腹の中に居るときから凶暴さは変わらないらしく、母ザメを解剖中に胎児に咬まれたなんて話もあるとか。くわばらくわばら…
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オペラなひと♪千夜一夜 ~第四十九夜/魔性の天鵞絨~

すっかり空いてしまいました。
怠けていた訳ではなく、このひとを書くにはあれも聴いとかなきゃこれも聴いとかなきゃとやっていたら結構時間が経ってしまったのです……という訳でどうにかまたそれなりのペースで行きたいものです。

久々に女声。

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La Principessa di Eboli

グレース・バンブリー
(Grace Bumbry)
1937~2023
Mezzo Soprano
America

ソプラノとメゾとどちらでも成功を収めたという人ではありますが、個人的にはメゾの印象が強いです。というか私自身が寡聞なだけかもしれませんが、一般に手に入りやすい全曲音源の多くがメゾとしてのもののように思います。と言う訳で、ここで私が述べていくのも、殆どメゾとしてのバンブリーの話になりそうです。

いまでこそ黒人のオペラ歌手と言うのは珍しくなくなったのではないかと思いますが、彼女が出てきた頃はまだまだ風当たりの強い時代だったようです。とはいえ一回り上の世代にはレオンタイン・プライス、シャーリー・ヴァーレット、同い年にはマルティナ・アローヨ、一回り下にはジェシー・ノーマンやキャスリーン・バトルと、徐々に勢力を拡大していこうと踏ん張っていた人たちの1人と言えるでしょう。

齢70を超えてからも来日してコンサートを行っていますが、その声の若々しいことは驚嘆すべきです。ちょうど同じ時期に来たコッソットが迫力や存在感といったもので見せていたもののその声の衰えは隠すべくもなかったのに対し、艶やかでうっとりとするような美声で聴かせていたのは大変印象に残っています。

<演唱の魅力>
あくまで私個人の持っているイメージの話ばかりで恐縮なのですが、同じ女性でもソプラノの演じるヒロインよりも、メゾの演じる役どころ(それは往々にして敵役だったりする訳ですが)の方が、実は女性的な部分を見せなければいけない、或いは魅力的な女性として振る舞わなくてはならない場合が多いように思っています。色戀の真っただ中にいる人物よりも、横槍を入れる人物の方がそうした側面が強いというのはちょっと面白いところではありますが、たぶん悪役に魅力がないと物語が面白くないというのと同じところに帰結するんでしょうね。印象の薄いダース・ヴェイダーなんて見たくないでしょう?笑

で、まさにそういった役がびしっと来るのが今回のバンブリーです。
天鵞絨のように濃厚で豊かな声は、魔性の女と言うイメージに似つかわしい。主役を惑わせ、物語に色を添える役がしっくりくるのです。ただ、その「魔性」というのを単なる誘惑する性悪女として捉えてしまうのはちょっと一面的で、そのときそのときそのキャラクターは必死に、真摯に、真面目に振舞っているんですよね。彼女はそのあたりを出すのが本当にうまいなぁと思うのです。紋切り型の悪役である以上に、人間的な葛藤(まあ人間じゃない役があったりもしますが)や女性らしい感情の表出のある彼女の演唱は、登場人物に深みを与え、鑑賞者の共感を呼ぶのです。
当然ながら歌それ自体も素晴らしいです。繰り返しになりますが声も素晴らしいです。しかし、それ以上に上記のようなおおきなプラスワンがあることが、バンブリーの魅力をいや増しているように思います。

そう考えて彼女の当たり役を眺めてみると、なるほどそうした立体的な役作りをしてこそのキャラクターが揃っています。その最右翼がG.F.F.ヴェルディ『ドン・カルロ』のエボリ公女!声質の面からもキャラクターの面からも、僕の中でのエボリのベストは彼女です。コッソットの描くそれよりももう少し大人の女と言う感じで、いい意味での粘っこさがあります。同じような部分が活きるのが『アイーダ』のアムネリスでしょうか。こちらも上品に育てられている王の娘の顔とひとりの女としての葛藤がよく出ています。

<アキレス腱>
僕自身が聴けているものが少ないというのもあるように思うのですが、このひとはヒロインよりもちょっと癖のある役の方がいい演奏が多いような気がします(だからメゾの役がいいのかな~どちらが鶏でどちらが卵という話にも思えますが)。全曲聴けてませんが、トスカとかはどうなのかな~という感じでした。さりとて、ドラマティックなソプラノ役もどうなのかな……異常人マクベス夫人は、少なくとも私の趣味ではなかったです。

<音源紹介>
・エボリ公女(G.F.F.ヴェルディ『ドン・カルロ』)
ショルティ指揮/ギャウロフ、テバルディ、ベルゴンツィ、フィッシャー=ディースカウ、タルヴェラ共演/コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団&合唱団/1965年録音
>私の中ではエボリと言えばバンブリー!というぐらい印象が強いです。コッソットやバルツァの烈しさや、シミオナートの風格ももちろん棄てがたいのですが、若々しさと貴族としての気品のバランスが一番取れているのは彼女ではないかと思います。全く違う特徴を持つ2つの大きな見せ場についても、ヴェールの歌では重くなり過ぎたりしないし、美貌のアリアではドラマティックな迫力があり聴き応え十分。更に言えば作中でも派手な音楽が当てられているキャラクターなので、何と言いますか華やかな存在感があるのも魅力です。この録音については既に何度も触れていますが、FDが楽しめるかどうかにかかっている、という名盤です。
(2020.9.9追記)
レヴァイン指揮/ギャウロフ、ドミンゴ、フレーニ、L.キリコ、フルラネット、ロビンズ共演/メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団/1983年録音
>ようやっとこの映像を観ることが出来たのですが、画面で見て改めてバンブリーの演じるエボリに鮮烈な印象を受けました。歌はもちろんながら舞台での気品と色気、いずれも際立っています。華やかなヴェールの歌ももちろんいいのですが、彼女の勢いというか迫力が遺憾なく発揮されているのはカルロの想い人がエリザベッタであることがわかってからの3重唱でしょう。全盛期のドミンゴすら気圧されるほどの怒り狂いっぷりは天晴れ。そして4重唱から悔悟の場面、美貌のアリアまでの流れは完全に主役ですね笑。共演もいずれ劣らぬ熱演に加え、レヴァインの外連味溢れたオケ、伝統的ながらリアリティのある演出もあって超推薦盤。です

・アムネリス(G.F.F.ヴェルディ『アイーダ』)
メータ指揮/ニルソン、コレッリ、セレーニ、ジャイオッティ、マッツォーリ共演/ローマ歌劇場管弦楽団&合唱団/1967年録音
ラインスドルフ指揮/L.プライス、ドミンゴ、ミルンズ、R.ライモンディ、ゾーティン共演/LSO&ジョン・オールディス合唱団/1970年録音
>この役もまた彼女の最大の当たり役です。若々しく突っ走るわがままそうなコッソットとはまた別の、こちらもより大人の雰囲気のアムネリス。と言ってももちろんオバサン臭い訳ではなく、どちらかというと思慮深く、普段は熱情を表には出さなさそうな感じと言いましょうか。逆に言えばだからこそアイーダにねちねちと詮索する部分の厭らしさや、ラダメスを説得しようとする場面と続く裁判の場面での悲痛な訴えがより強く活きてくる訳です。全体にはラインスドルフ盤の方が「ああ、アイーダ聴いたぁっ!!」という気分にさせて呉れる演奏。L.プライスはベストというべき出来で、バンブリーとの絡みの場面などは最高です。ミルンズやR.ライモンディ、ゾーティンの男性低音もうまみがあります。ドミンゴは凄くいいのですが、ムーティ盤の方が輝いていたような。や、あくまでドミンゴ基準での上下ですが(笑)メータ盤はバンブリーと共にコレッリが本当に素晴らしいラダメス!第1幕のアリアからぶっ放して呉れるだけではなく、最後の最高音を楽譜通りpから見事なデクレッシェンド!当然4幕とのバンブリーとコレッリの絡みはこの録音のハイライト。セレーニとジャイオッティはいずれもどっちかっていると地味であまり評価されませんが、歌はきちっとしてるし表現にも味があるし、何よりその渋い存在感が僕自身は好きで、ここでも十二分にその渋さを発揮しています。問題はニルソンが可哀そうな感じが全然しないところでしょうか……。

・カルメン(G.ビゼー『カルメン』)
フリューベック・デ=ブルゴス指揮/ヴィッカーズ、フレーニ、パスカリス共演/パリ・オペラ座管弦楽団&合唱団、パリ木の十字架合唱団/1969-1970年録音
>どうも評判がいま一つなんですがこの『カルメン』は名盤だと僕は思います。まずは単なる妖女になり過ぎず、1人の等身大の女性として魅力的なカルメンを演じたバンブリーが大変見事!キャラクターを意識し過ぎて妙にグラマラスに歌おうとすると“勘違いオバサン”みたいになっちゃうのですが、そこを音楽的にしっかりと歌うことで逆にリアルな人物像を構築しています。永遠の娘役フレーニのミカエラがまたべらぼうにうまい!娘にミカエラとつけるぐらいご本人お気に入りの役だというのも良くわかる没入ぶりで、特にアリアはベストではないかと思います。ヴィッカーズのジョゼの評価が低いのが解せないのですが、これまた立派な歌唱。そもそもは生真面目な軍人であったという側面を考えれば彼の融通の利かなそうな感じはとてもいいし、その不器用さからストーカー男に転落していく様もいい。同じく低評価のパスカリスもなかなかどうして立派な歌唱で、ブランのようなエレガントさはないにしろその荒々しさは鬪牛士らしいし、近年流行のバスによる重ったるいエスカミーリョよりうんといいと思います。その他メルセデスはじめ脇役陣もうまいですし、指揮もからっとして心地よいです。

・ヴェーヌス(R.ヴァーグナー『タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦』)
サヴァリッシュ指揮/ヴィントガッセン、シリヤ、ヴェヒター、グラインドル、シュトルツェ、クラス共演/バイロイト祝祭歌劇場管弦楽団&合唱団/1962年録音
>ヴァーグナーが苦手な僕でもこれは凄い演奏、確かに超名盤だと思いました。ヴェーヌスは最初と最後にしか出てこない、言ってしまえばチョイ役な訳ですが、この役が決まらないとタンホイザーはなんで道踏み外したのかわからん、なんてことになりかねない要役です。最初に登場した場面での適度な色気がまずあらまほしきもの。カルメンでもそうでしたが色気は或る種のスパイスですから、効かせ過ぎると却って味わいを損なってしまいます。そのあたりの匙加減が彼女は非常に巧いと思います。しかし圧倒的なのは終幕で登場したときの強烈な存在感!そこまでのヴィントガッセンのローマ語りと、タンホイザーを懸命に引き留めるヴォルフラムのヴェヒター、それに轟然と火の点いた演奏を繰り広げるサヴァリッシュの中でさえなお強い印象を残す彼女の演唱に耳を奪われます。ああ、ヴァグネリアンはこういうのを求めてヴァーグナーを聴くんだなぁと嘆息するような素晴らしい演奏です。その他ここで挙げなかった共演陣にも死角はありません。

・シメーヌ(J.E.F.マスネー『ル=シッド』)
ケラー指揮/ドミンゴ、プリシュカ共演/ニューヨーク・オペラ管弦楽団&合唱団/1976年録音
>隠れた名曲の名盤。というか相変わらず唯一の商業録音でしょうか。珍しく彼女が純然たるヒロインを演じていますが、気品のある貴族の娘を演じさせた時の良さはエボリに通ずるものがあると思います。ドラマティックな迫力も必要な役どころですが、そのあたりも十分。この作品の真価を伝える歌唱でしょう。力感漲るドミンゴの英雄ぶりも見事で、プリモ・ウォーモ的な本作を楽しむのに不足はありません。プリシュカの渋い父親役もハマっていますし、その他脇役陣も不満のない出来です。
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かはくの展示から・恐竜展特別編~第3回/デイノケイルス

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デイノケイルス
Deinocheirus mirificus
特別展

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特別編第3回にしていきなりですが今回の本丸のひとつとも言える展示です!!こんなものが東京に来るとは!!!
以前こちらで作品を紹介しましたが、40年に亘り巨大な腕のみが発見されていた謎の恐竜です。
肩の骨だけで1.2m、二の腕の骨だけで0.9m、腕全体では2.5mにもなるという化け物(笑)

ごくごく最近北大の小林先生のグループもタルボサウルスの歯型がついたと考えられる身体の骨と言う大きな発見をしていますし、今年のSVPでは李先生らのグループが本体部分の化石を発見し、想像以上の異様な姿であったという報告があったという話もあります。

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そんな恐竜・古生物ファン垂涎の生きもののホロタイプが今回は展示されているのです!!!
ホロタイプ?なにそれ?と思われる方もいらっしゃいますが、これは要するに新種として名前をつける根拠となる標本のこと。つまりまさにこの化石に対して新しい名前をつけたということです。当然実物化石です(笑)更に言えば新たな発見があった時には、この化石がその生き物かどうかを判断する基準になるのです。
デイノケイルスについて言えば、40年近く他の発見がなかった訳ですから、その間世界唯一の標本として知られていたもの!世界中の恐竜ファンが「本の世界では知っているけれども実物なんてみることはできない」と思っていた、まさにその標本を、今、東京で観ることができるのです!

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現在モンゴルでは化石の酷い盗掘が後を絶たず、化石の持ち出しが規制されようとしています。
そういう意味で、今後例えば恐竜展などで復元全身骨格が登場することはあっても、この標本を東京で観ることは恐らくできないと思われます。この機会を是非お見逃しなく!
同時に盗掘の惨たらしい現状があるということについてもちょっと頭の片隅に置いていただければ。

兎に角素晴らしい標本です!是非ぜひ足をお運びください!

<参考>
・「大恐竜展 ゴビ砂漠の脅威」図録/国立科学博物館/2013
・大人の恐竜大図鑑/土屋健著/洋泉社/2013
・ナショナルジオグラフィックニュース
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20131106002&expand
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Hallucigenia

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ハルキゲニア
Hallucigenia sparsa

旧作ではありますが^^
前回のウバザメ同様なまけっとでなかなか人気があったので、こちらでもご紹介。

オパビニアと同じくいまから5億年前のカンブリア紀に棲息していた謎の小動物。どんな生き物だったかはおろかどっちが上なのか、どっちが前なのかもわからない、この時代の奇怪な生物の中でも群を抜いた不思議な存在です。
名前の意味はラテン語で「幻」という中二心を擽るいいセンス^^

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これ作るのかなり苦戦して、本当はかなりごまかしてます^^;
脚の本数も棘の本数も実際は7対ずつなのですが、脚は6対しかないし、棘に至っては5対しかありません。もちろん技術的な至らなさもあるのですが、この方針でそこをきちっと作っても美しく観えなさそうだなというのもあって、ここではそれは諦めました。

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昔はおしりだか頭だかに丸い身体の一部があったとされていたのですが、最近どうやらなかったことにされているようです。詳しくは良くわからなかったので、なんとなくそれっぽいようなそれっぽくないような形にしてお茶を濁しています笑。

ちなみに、以前に紹介したダイオウグソクムシは、こいつを作った時の基本形から作りました。
ちょっとの差でだいぶ印象も変わるもんです^^
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かはくの展示から・恐竜展特別編~第2回/ヴェロキラプトル

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ヴェロキラプトル
Velociraptor mongoliensis
特別展

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プロトケラトプスとともにモンゴルを代表する小型肉食恐竜です。
前回「モンゴルと言えばプロトケラトプス!」と言う話をしましたが、それと同じぐらい重要な存在と言ってよいでしょう。なにより『ジュラシック・パーク』での活躍で一気に有名になりましたしね^^

とは言ってもあの映画の中でのヴェロキラプトルは、完全にフィクションの世界の生き物です。そもそもあの映画でヴェロキラプトルとして登場する恐竜は、大きさからいっても外見からいってもデイノニクス。あんなに大きくはありませんし、もっと顔もほっそりしています(こうなったのにはそれなりの経緯もあるのですが)。また、大変頭のいい恐竜として描かれていますが、恐らくあそこまで賢くはなかったでしょう。ここはむしろ同じ肉食恐竜でもトロオドンなどを思わせます。

ヴェロキラプトルと言えばプロトケラトプスとの格闘化石は大変有名です。今回はこれはレプリカしか来ていませんが、両者が闘いの最中に砂嵐で埋もれたという標本は、保存状態も極めて良く、見ごたえがあるというところを通り過ぎて、ちょっと如何わしいぐらいです(笑)
とは言えそれだけの保存状態の化石が実際に出るのがモンゴルの恐ろしいところw
今回の恐竜展で展示されている上の写真も実骨ですが、これもまた信じられない保存状態!

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特に見どころはここ。
先ほどの標本のお腹のあたりですが赤線でくくってある部分にあるのはヴェロキラプトルの骨ではなく、ヴェロキラプトルが食べた生き物の骨です!
食べたものが化石に残るということはやはり滅多にありませんし、この場合その骨の特徴から彼(彼女かもしれませんが)の最後の食事が翼竜(プテラノドンなど恐竜時代の空を飛んでいた爬虫類の仲間)であったことまでわかります。プロトケラトプスもそうでしたが、保存状態とともに神業的なクリーニングにも感嘆します!こんなものは早々拝めません。今回はアップしませんが、頭や爪など他の身体のパーツもつい最近解剖したものではないかと疑うほどのもの。
ここの解像度の悪い写真などではなく笑、是非是非会場で実物をご覧になってください!

2013.12.28追記
書くのをすっかり怠っていましたが、この標本の話題はもうひとつ。
実は頭は伊国に、身体は日本にこれまで保存されていて、何と今回頭と身体が30年ぶりの再会を果たしたのだとか!そういう目でこの化石を眺めてみると、また感慨深いものがあります^^

<参考>
・「大恐竜展 ゴビ砂漠の脅威」図録/国立科学博物館/2013
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ウバザメ

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ウバザメ
Chetorhinus maximus

先日のなまけっとにあたり、大きい作品が欲しいな~というのもあって作った作品。
結構人気もあったのでこちらでも^^

折角大きい作品を作るなら、身近な紙を使ってもカッコいい感じに仕上がるんですよ~というのを見せたくてギラッファティタンと同じように新聞紙で。とはいえ英字新聞なのはカッコつけですw
今回出したものの中にはサメも結構あったので、その流れで。ジンベイザメやメガマウスでもいいかなという気もしていたのですが、折角なまけっとみたいな企画に持っていくにはあまりにもベタというか普通な気もしたし、北九州市立いのちのたび博物館で展示されていて印象的だったウバザメを、と考えた次第。

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非常に大きなサメの仲間ですが、プランクトンを濾して食べる大人しい性質。
ヒゲクジラも同じような生活をしていますが(実際、わあクジラさんだとおっしゃったお子さんがいました)、彼らがクジラヒゲと言う特殊な体の期間を使うのに対し、鰓の一部を使います。ところがプランクトンの量が減る冬の時期にはこの鰓のパーツは落ちてしまうのだそうで、その期間にどうしていうのかは謎なのだとか。
そういう重要なパーツなので、もう少し鰓を目立たせても良かったかなと思ったり。

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新聞紙は結構広がるので、今回は結構糊で固定しています^^;

<参考文献>
サメ ――海の王者たち――/仲谷一宏著/ブックマン社/2011
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かはくの展示から・恐竜展特別編~第1回/プロトケラトプス

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プロトケラトプス
Protoceratops andrewsi
特別展

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この前述べたとおり特別編です^^

モンゴルを代表する恐竜のひとつで、目立った角こそありませんが有名なトリケラトプスのご先祖様筋にあたると言われています。大人から子供まで本当に多くの個体が見つかっており、研究も進んでいる部類の恐竜でしょう。モンゴルと言えばプロトケラトプス、プロトケラトプスと言えばモンゴルということもできると思います。
そして今回の特別展では、ちょっと通常では考えられない保存状態の彼らの化石をたくさん目にすることができます。

この写真の個体は会場入り口に鎮座ましましているものですが、こいつして実骨の全身骨格!普通なら彼だけでも十分眼福ものです。

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上記の個体の横にあるこれも実物の卵化石。
これらはかつてプロトケラトプスの卵とされてきましたが、今では違う恐竜の卵だと言われています。じゃあ何の卵なの?というのはどうぞ実際足を運んでご覧になってください!

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会場中盤に居るこれらの個体も非常に素晴らしい状態!加えて大きくて見応えも満点です。

彼らの種名(種の話はこちらandrewsiは、モンゴルでの恐竜発掘で名高いロイ=チャップマン・アンドリュース(1884-1960)に因むもの。これだけでもモンゴルの恐竜代表たる感じがします笑。
今回の特別展ではアンドリュースは一つの軸と言って良いでしょう。写真撮影はできませんが、米自然史博のアンドリュース隊の時代の地図や道具も展示されています。これは必見!

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保存状態とともに素晴らしいのがクリーニング(剖出)の技術!
化石そのものはやはり大変脆いものなので、綺麗に残されていたとしてもそれを取り出すのには尋常一様ではない苦労が伴います。しかし、この上の写真を観てください!肋骨などの細い骨を綺麗に浮かせて、ぎりぎりのところで保ち、トンネルのような空洞を作っています。これは最早超絶技巧と言うべきで、化石を残した自然の素晴らしさもさることながら、その良さを引き出す人の技にも嘆息せざるを得ません。

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また、プロトケラトプスについて言えば、今回は大人から子供まで実骨を観察できるのも嬉しいところ。上の写真は15体もの幼体が折り重なった化石。これも驚異的な保存状態で、砂嵐で一気に埋もれてしまったのではないかと考えられています。
成長による頭蓋の変化もかなり面白いので、是非ぜひ会場で見較べてみてください。

<参考>
・「大恐竜展 ゴビ砂漠の脅威」図録/国立科学博物館/2013
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なまけっと報告

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やりっぱなしというのもあれなので^^
先日11/2に以前宣伝していたなまけっとに出展してきました^^

なまけっとそのものが予想以上の大入りで来場者がなんと1324名!
しかもこの数には小学生以下は入っていないし、多分受付をスルーしちゃった人も結構いると思われるので実際には1500ぐらいはいたのかもしれないなと。これは本当に大快挙だと思います。企画者のみなさんは本当にお疲れ様でした!
このため、我々小人数ブース勢は超大忙しになってしまって、しかも自分は細将貴先生のイワサキセダカヘビの講演(これは非常に面白かった!)の司会を仰せつかって2時間ほどそちらに行っていたのもあって、結局ほとんどブース周りができなかったのです。。。これは心残りなので、次回はなんとか余裕を持ちたいところです。イベント全体としても予想以上に多かったというのもあるかと思うのですが、率直に言ってもう少し次はスペースの上でも朝の準備の上でも余裕が欲しいのかなと個人的には思いました(ただ参加だけした自分がこんなことをいうのは非常に恐縮なのですが)。

こうしたイベントには初参加ということで事前準備についても当日の展示方法についても反省点が多いです^^;
やっぱり七つ道具的なものは用意しておいた方がいいし、カンパ箱ももう少し見栄えを考えた方がいい。暗くなってしまう箱を使うなら、照明を入れた方がいいなどなど。あと、「せびりや」なのか「せびりあ」なのか自分でブース名がわかんなくなっていたのも次回は統一したいww
一方で、配置の仕方(最初に看板、途中にいくつか目玉になりそうな展示を用意しながら様々な作品を並べ、最後にカンパ箱という流れ)などは悪くなかったと思います。場所が良かったのも大きい。

反応は概ね上々だったのかなと。夜の交流会でも多くの方に覚えていてもらえていたし^^
twitterでフォローしてくださっている方と実際にお会いできたのは非常に嬉しかったです(講演の司会のためオフィス・ジオパレントの土屋さんにお会いできなかったのが痛恨ですが。。。)
うちとしてはおススメは折鶴“Oridzurusaurus japonicus”だった訳ですが、人気があったのは深海人気でのダイオウグソクムシのほかに、ウミウシと象の行進曲、ウバザメ、そして何故だか冬虫夏草wwwもう本当に冬虫夏草については多くの方からコメントいただきました。
このイベントではこのあたりが狙い目なのかな~という印象。

次回の大阪開催と博物ふぇすてぃばるに向けていろいろ反芻していければと思っています^^

最後に、不在がちだった自分の代わりにブースを切り盛りしてくれた相方とバイト前にもかかわらず設営を手伝ってくれた妹、そして来場してくださったすべての方に最大限の感謝を。
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