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Don Basilio, o il finto Signor

ドン・バジリオ、または偽りの殿様

オペラなひと♪千夜一夜 ~第九十九夜/最強の脇役~

いろいろバタバタしていたもので随分空いてしまいましたが、脇役シリーズです。
実はこの人を2桁の最後に持ってきたくてここで脇役シリーズを始めてみたのでした。

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Spoletta

ピエロ・デ=パルマ
(Piero de Palma)
1925(1924?)~2013
Tenor
Italy

伊ものの録音で脇役と言えば彼でしょう。伊国に於ける最も有名な脇役テノールといっても過言ではないと思います。

何と言っても録音が多い!200以上もあるそうな!概して脇役の売れっ子は小さな役でもたくさん録音しているものですが、これだけの数登場している人というのは、ちょっと他には思いつきません。レパートリーも70を越えるとか。場合によってはかけ持ちをしていたりもしています。
これだけ録音が多い理由はもうひとつ。藝歴がとても長い!録音だけ見ても40年に亘っています。デビュー後すぐのテバルディとも音源を吹き込んでいますし、キャリア末期にはなんとペルトゥージやフリットリとも共演しています。要するに、20世紀の本格的なオペラ録音時代を通して活躍していたという訳です。
そう思って彼の名前で調べてみると本当にありとあらゆる録音に参加していて、改めて彼の驚異的な経歴に舌を巻くことになります。あのスポレッタ(G.プッチーニ『トスカ』)も、あのベッペ(L.レオンカヴァッロ『道化師』)も、あのカイウス先生(G.F.F.ヴェルディ『ファルスタッフ』)も!といった具合。圧倒的な美声や華麗なテクニックで聴かせる歌手はたくさんご紹介してきましたけれども、これほどの脇のスペシャリストは、ちょっと他に思いつきません。

そんなわけで今回の脇役シリーズの〆に、彼ほど相応しい人もいないでしょう。

<演唱の魅力>
上述のとおりその圧倒的な藝歴の長さ、そして脇役としてのレパートリーの広さが何と言っても目を引きます。同じ役での登板も多く、スポレッタなんてそれこそえらい話で、私がいつも参考にしているサイトを見てみると、テバルディ、ゲンジェル、オリヴェロ、ステッラ、シリヤ、L.プライス、ニルソン、カバリエ、ネブレット、ヴァネスと繰返し歴代のプリマと共演しています。
何故これほどまでに重用されたのでしょうか。

当然と言えば当然ですが脇役はそこまでたくさん歌う訳ではありません。ヴィンコやクラバッシのところでも少し触れましたが、それでも変な話バスなんかはそもそも第1歌手でも脇のことが多いので案外アリアがあったりするものなのですが、テノールだソプラノだなんていうと第1歌手が目立つ歌を歌うものですから、本当に僅かな出番のことが多いように思います。その僅かな瞬間で役柄のキャラクターを感じさせるような表現力がまずは必要になってきます。ただ、もちろんデ=パルマもその点素晴らしいのですが、そこが秀でているという話だけであれば、ここまででご紹介した脇役歌手たちとあまり変わらない。

彼がこうして数多く起用されたのは、やはりオペラの出演者としての根本と言っていい、卓越した歌の巧さと声の良さにこそ理由があるのではないかと思います。彼の大活躍(敬意を表して!)は、オペラに於いて主役を張るような歌手でなければ歌はほどほどで充分と言うようなことは絶対にないことを実を以て証明しているような気がするのです。しっかりと彼の歌を堪能できる場面と言うのは必ずしも多くないのですが、例えばベッペのセレナーデ。全曲の中で目立ち過ぎず引きすぎない適度な存在感を保ちつつも、決定的に歌が巧みで、その名調子に暫し耳を奪われてしまいます。或いは『アンドレア・シェニエ』(U.ジョルダーノ)での密偵。こちらがまたほんの一瞬の出番ではあるのですが、絶妙なセンスで紡ぎだされるそのことば捌きのうまさ!普段ならそのままジェラールのアリアへのつなぎとして聴き飛ばしてしまいかねないようなところですが、この一瞬にデ=パルマの妙技が詰まっています。より大きな編成になったときのアンサンブル能力の高さにも“耳を聴き張る”ものがあります。例えばそれは『グリエルモ・テル』(G.ロッシーニ)のロドルフォ、『ラ=ファヴォリータ』(G.ドニゼッティ)のドン・ガスパロで楽しむことができます。特に『ラ=ファヴォリータ』のスタジオ録音は、主役のテノール不在のアンサンブルで、コッソット、バキエ、ギャウロフといった人たちの中でもテノールパートとして十二分の役割を果たしている点で特筆に当たるのではないかと。
そして声の良さ!これは単に美しい声であるということだけではなく、彼の立ち位置、持ち役として適度な声の響きになっているということがミソだと思います。例えば彼ぐらい演技功者で歌もうまい人が脇役で登場するとして、その声がデル=モナコなりパヴァロッティなりシラグーザなりといったような声だったらどうでしょう?それはもう鶏を割くに焉んぞ、と言う話にどうしてもなってしまいますよね。美声なんだけれども派手すぎない、美しいんだけれどもちょっと個性を感じさせる。そんな声質が彼の藝風の根本にあるんじゃないかなと。

このように考えて行くと、彼はあたかもオペラの脇役として活躍するためにこの世に生を受けたのではないかと、そんなことをふと思ってしまうのです。

<アキレス腱>
脇役の神様とも言うべき人ですし、自分の領分を判った仕事をしているひとなので、正直微妙なポイントを感じることは殆どないんですよ。長く歌う場面になってもそもそも歌がうまいから聴かせちゃいますしね。

敢えて言うと声量はないです。だからライヴ盤で奥で歌っていると聴こえづらい。
本当にそれぐらいでしょう。

<音源紹介>
・スポレッタ(G.プッチーニ『トスカ』)
マゼール指揮/ニルソン、コレッリ、フィッシャー=ディースカウ共演/ローマ聖チェチリア音楽院管弦楽団&合唱団/1966年録音
>数多ある彼のレパートリーの中でどの役のイメージが強いかと言うと、僕としてはやはりこの役のイメージなのです。怪物と言うべきスカルピア男爵の側近と言うことで、大々的に歌う部分がある訳ではないものの存在感は欲しい。こういう役で「絶品」と言う言い方も変な感じがありますが、デ=パルマのスポレッタの匙加減の見事さは本当に素晴らしいです。男爵の手下の狡猾な悪人としての憎々しさを感じさせると同時に、彼もまた男爵に恐怖を感じる小市民であることを感じさせる役作り、ことば回しが巧みで歯切れの良い歌い口。何度聴いても唸らされる藝です。上述のとおり録音もたくさんありますし、スタジオ録音も多いですが、ここでは個人的にイチオシな音盤を。

・ベッペ(L.レオンカヴァッロ『道化師』)
モリナーリ=プラデッリ指揮/デル=モナコ、トゥッチ、マックニール、カペッキ共演/ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団&合唱団/1959年録音
>デル=モナコの傑出したカニオが取り沙汰される録音ですが、彼のベッペもまた秀逸であります。こちらも上述しましたが、彼にしては珍しく独立した聴かせどころのセレナーデが何と言ってもお見事!彼が実は物凄く歌がうまいことを強く印象付ける歌唱ですが、そこは彼らしく自分の役柄をよくわかっていて、素敵過ぎないし優美過ぎない。劇中劇の人物としての薄っぺらさと、旅一座の若者らしい品のなさを感じさせる歌に仕上げているのです。そして非常にユーモラス。白塗りのアルレッキーノが気取って歌うのが目に浮かぶようで、とてもコミカルです。この劇中劇が喜劇であることはこの作品に於いてかなり効いていて、あの壮絶な“衣装をつけろ”で1幕が締まったあと、2幕の決定的な殺人の場面の間の緩衝材の役割を果たしている訳ですが、ここであっけらかんとしたばかばかしい雰囲気をどれだけ出せるかというのが大きなポイントになります。当然デ=パルマは、その点でも100点満点です。

・ドン・ガスパロ(G.ドニゼッティ『ラ=ファヴォリータ』)
ボニング指揮/コッソット、パヴァロッティ、バキエ、ギャウロフ、コトルバシュ共演/テアトロ・コムナーレ・ディ・ボローニャ交響楽団&合唱団/1974-1977年録音
>ドニゼッティの作品に登場する第2テノールでも最も活躍する役柄ではないかと思います。というのも、役としても主役のフェルナンドとレオノーラに対して敵愾心を抱く貴族でありドラマを動かす役ですし、第1テノールが不在の中大規模なアンサンブルが展開される2幕フィナーレでは結構しっかりアンサンブルに絡んでくる、3幕フィナーレでも重要と美味しいところ盛りだくさんなのです。で、この中で老獪なデ=パルマさんの歌いぶりがとても説得力があって決まっています。役の描き方ももちろんですが、件の2幕フィナーレでも全く凹まないし、若々しい声を響かせるパヴァロッティに対していい意味で年齢を感じさせてコントラストがはっきりついている。ちょっと皮肉な歌いぶりも流石のものです。そもそも名盤ですが、性格テノール好きにもオススメできます。

・エルヴェイ(G.ドニゼッティ『アンナ・ボレーナ』)
ヴァルヴィーゾ指揮/スリオティス、ギャウロフ、ホーン、アレグザンダー、コスター、ディーン共演/ヴィーン国立交響楽団&合唱団/1968-69年録音
>同じく皮肉で冷酷な感じがハマっているのがこちら。暴君エンリーコの側近ですから立ち位置的にはスポレッタに通ずるものもあると思います。出番こそ多くはありませんが、王の権力を間接的に示す役ですから、やはり彼のようにうまい役者が演じると演奏が一段と盛り上がります。個人的なお気に入りはペルシの第2のアリアでの絡みの部分で、王の命令を淡々と伝える冷酷さがいい。アレグザンダー(どうしてどうして人気がありませんが良いテノール!)の情熱的な歌とヴァルヴィーゾの活き活きとした音楽にピリッとスパイスを利かせています。

・ロドルフォ(G.ロッシーニ『グリエルモ・テル』)
シャイー指揮/ミルンズ、パヴァロッティ、フレーニ、ギャウロフ、コンネル、D.ジョーンズ、トムリンソン、マッツォーリ共演/ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団&アンブロジアン歌劇合唱団/1978-1979年録音
>またしても権力者の側近役ですが、この作品については実は親玉ゲッスレルよりも印象的な歌を与えられていると言っていいでしょう。このロッシーニの大叙事詩の1幕フィナーレは、テル以下の主要キャストが一切登場しない異色のナンバーですが、そこで酷薄な圧政者の代表として現れるのがこの役。彼は合唱含むスイスの人々とは違う動きを明瞭に聴かせています。またその冷たい雰囲気に加えて、抵抗するスイス人に対する苛立ちをロッシーニの優美な旋律に乗せて軽やかに歌ってしまうデ=パルマさんの手腕はここでもお見事。主要キャストがいない場面と言いながら、この録音では彼以外にもこの場面にD.ジョーンズやコンネル、トムリンソンといった大物を並べていることもあって、大変充実した音楽に仕上がっています。

・密偵(U.ジョルダーノ『アンドレア・シェニエ』)
サンティーニ指揮/コレッリ、ステッラ、セレーニ、ディ=スタジオ、マラグー、モンタルソロ、モデスティ共演/ローマ歌劇場管弦楽団&合唱団/1963年録音
>出番はほんのわずか!長いところでもジェラールのあの有名なアリアの直前に報告にやってくる密偵と言うこの役は、多分歌う部分で行ったらあの長い作品の中のほんの数10小節に過ぎず、普通なら聴き飛ばしてしまうのですが、彼が演じるとそんな舞台装置的な役でさえぐっと印象的に聴こえてきます。ここでのその一瞬のことば捌きのうまさには本当に頭が下がり、これだけでプロの密偵が簡潔で素早い報告をして去っていく姿が活き活きと脳裏に浮かびます。この録音はデル=モナコ、テバルディ、バスティアニーニのガヴァッツェーニ盤に隠れて注目されることが少ないですが、主役3人はもとよりこうした小さな脇役に至るまで揃った超名盤です。

・ワグネル(A.ボーイト『メフィスト―フェレ』)
サンツォーニョ指揮/ギャウロフ、クラウス、テバルディ、スリオティス共演/シカゴ・リリック・オペラ管弦楽団&合唱団/1965年録音
>ことば捌きの快活さ、巧さと言うところで行くとこの役も彼の当たり役と言っていいでしょう(録音の必ずしも多い作品でもないのに、シエピともクリストフともギャウロフともスタジオ録音を遺しています!)。ここでは個人的にこの作品最高の録音と思っているこのライヴ盤を。不審な影に怯えるファウストの不安に対し、能天気な多弁さで説得しようとする若い学生を、実に軽々しくコミカルに演じてみせています。たくさん喋っているのですが、それが頭に入って来ずどんどん流れて行ってしまうところなど本当にリアル。同じ声なのに、ガスパロで年長者に感じられたのに対し、ここでは若い軽薄さを出して見せるあたりの藝達者さにも脱帽させられます。

・マストロ・トラブーコ(G.F.F.ヴェルディ『運命の力』)
パタネ指揮/カレーラス、カバリエ、カプッチッリ、ギャウロフ、ナーヴェ、ブルスカンティーニ共演/ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団/1978年録音
>これもまたコミカル路線。この重厚で巨大な悲劇を立体的なものにするコミック・リリーフとして、ブルスカンティーニとともに引きたっています(ここではプレツィオジッラのナーヴェがやや弱いので余計に^^;)ここでもまた喋る喋る笑。ごくごく明るく楽しいのですが、面白おかしくなり過ぎずクスッとした笑いで、集中度の高い息の詰まる展開の中で、ほっと一息つかせて呉れるちょうどいい箸休めになっているあたりのセンスは流石です。この演奏、ナーヴェはいまいちだと言いましたが下手ではないですし、むしろ他のメンバーが凄過ぎ。これがライヴだというんですから大したもんです。

・使者(G.F.F.ヴェルディ『アイーダ』)
メータ指揮/ニルソン、コレッリ、バンブリー、セレーニ、ジャイオッティ、マッツォーリ共演/ローマ国立歌劇場管弦楽団&合唱団/1967年録音
>これも彼があちこちで起用されている役ですが、本当にここまで来ると藝の領域と言いますか。第1幕でアモナズロが攻めてくるというのを伝えに来る小さな役なのですが、どうも後の大テノールの登竜門になっている節があり、トマス・モーザーやニコラ・マルティヌッチといった大物も歌っている中で、ダントツで歌がうまく説得力があります。王が戦争を高らかに宣言するに至るまでの緊迫した空気が歌からひしひしと感じられるのです。脇の名手の面目躍如と言いますか。

・カイウス先生(G.F.F.ヴェルディ『ファルスタッフ』)
フォン=カラヤン指揮/タッデイ、パネライ、カバイヴァンスカ、ペリー、アライサ、シュミット、C.ルートヴィヒ、ツェドニク、ダヴィア共演/WPO&ウィーン国立歌劇場合唱団/1980年録音
>ヴェルディ翁最後の作品の口火を切るのは脇役ながらこのカイウス。勢いのある幕開けの音楽に乗った彼の演じる医者が第一声を発すると一気に物語の世界へと引き込まれていきます。ここではバルドルフォを独国のツェドニクが歌っているのもあって、恐らく唯一と思われる伊独の名キャラクターテナー夢の競演(?)になっています。ここに、名優タッデイとダヴィアが絡んできて冒頭から非常に充実したアンサンブルが繰り広げられています。フォン=カラヤンもこういう曲には合ってます。もう少し歌って欲しいとすら思いますが、そこを歌わせないのがこの作品の特徴でもあるので難しいところです。
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赭麈図

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赭麈図
Shasu-zu
The Elk (Cervus canadensis)

イエローストーンで観た生き物をテーマにした作品を、グリズリーバイソンに続きもうひとつ。エルクです。
公園内で最初に出逢った野生動物であり、終盤にはかなりの群れも観ることができました。ホストファミリーの家では夕食にも出て来て、とっても美味しかった!とはいえ臭みがあるので、趣味は別れるかも。
知識として知ってはいましたが、実際生きたものを間近に観ると大きいこと大きいこと。

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欧米での大型のシカの呼称にはかなり混乱があり、私もきちんと把握できてはいないのですが、ここで人々にエルクと呼ばれていたのは、ワピチと呼ばれることもあるアメリカアカシカでいいのだと思います。
ちなみに欧州でエルクというとヘラジカのことになります。

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野生動物で、しかもかなり大きな生き物ですから、それなりに距離を保ちながら静かに静かに眺めていた、その独特の静かな緊張感と、その中でもひしひしと感じられた生命力は忘れられません。
その双方を表現できないかと考えて、紙選びをしてみました。

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今回はうまくパーツが作れたので前足後足ともに副蹄もつけてみました。
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怪蟇図

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怪蟇図
Kaiba-zu (Gerrothorax pulcherrimus)

日本画風折り紙、イエローストーンで観たもので折りたいものはまだあるのですが一旦古生物に戻りまして。

以前に一度作ったゲロトラックスですが、こいつもこのシリーズとの親和性が高そうな気がしていて、ずっと作りたかったものでした。最後の一押しになったのは、前回曠野群牛図でバイソンを折るのに使った琳派の描く水面のような紙を仕入れたこと。この紙の有効な使い方をいろいろ考えていたのですが、水中の生き物のバックに使うのはありがちだけど、ありだろうと。
ちなみにいつも古生物の時は中国語名を調べて題名をつけるのですが、今回は見つからず……怪蟇というのは完全に創作した言葉です^^;

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ゲロトラックス本体には今回も初代龍村平蔵の天平彩管錦から。
天女が舞っている図案なのですが、どういうわけだかこの生き物を作るとものすごく雰囲気が出ます。たぶんほかの両棲類、爬虫類、単弓類あたりでも行けそうではあるのですが、ここまでフィットするかなあ。

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本作では一匹だとちょっと寂しい気がしたのでもう一匹。変化をつけるために白系で作っていますが、こちらも龍村平蔵の文様を使ったもの。こちらも絶妙に白化個体のような風情が出ています。

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上から見るとよくわかりませんが、今回実は口の部分を改訂しました。かなり大きな口で目の前に来たものをばくりっとやったという話があったので、手を入れてみたところ結構あっさりできました。本作一番の売りポイント^^
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曠野群牛図

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曠野群牛図
Kôya-gungyû-zu
Biosons on the Prairie (Bison bison)

前回イエローストーンでハイイログマ(グリズリー)を見た話をしましたが、もちろん彼の地で観たのは熊だけではございません(笑)
動物も植物も、そして地学面でも面白いもの素敵なものがたくさんあったのですが、次いで感動的だったのはアメリカバイソンをたくさん見ることができ、一度は間近で群れに遭遇したことです。

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アメリカバイソンそのものはかつて上野動物園で飼われていましたので何度となく観ていたのですが(残念なことに老衰で亡くなったようです。子供のころはあのバイソンとマンドリルが一番の目当てだったのですが、どちらも亡くなってしまいました。。。)、それでも2頭ほどが囲いの中にという感じだった訳です。
今回は公園内ですからもちろん野生の個体を観ることができましたし、何と言ってもその群れを、広い空の下で観ることができたというのはやっぱり感動的でした。本や映像の中で知識として持っていた、野生のウシ科の動物の群れが目の前にいる……私にとって強く印象に残っている体験です。

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まずはこのバイソンの姿をなんとかして作品にしたいというところからスタートした訳ですが、まずこのスタートのところから結構つっかかりました^^;
このひとたちってもこもこなイメージがありますが、それは上半身だけなんですよね。下半身は割と毛が短い。そこは表現したい一方、意外と肩が突出して盛り上がっている訳ではないというか、背中の筋肉もしっかりあるので背中が平らなんですよね。で、頸だけガクッと下がって大きな頭が来る。このあたりのボディプランが意外といい形で纏まらず。
加えて今回は少なくとも主蹄は折り出したい(サイズ的に副蹄は断念。大きいので作るときは作りたい)と思っていたので、余計にまとまらず笑。
結局滞在後半はずっといじってましたw

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何とか原形を仕上げて今度は作品にと思った訳ですが、あの強い印象をどう纏めたものかなというのが次なる課題でした。
熊羆図みたいに白黒の世界にしても良かったんですが、折角ならもっと別の表現にしたいなと。ちょうど渡米直前に日本画の作家さんに影響されて影響されて恐竜図を作ったりもしましたしね^^
そんなわけで、その時に買った琳派の描く水面のような模様の入った紙の遣いどころが早速出てきました。

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全体の統一感は意識しつつ、逆に一頭一頭微妙に差をつけつつ作ったつもりですが、如何でしょうか。
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熊羆図

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熊羆図
Yûhi-zu
The Grizzly (Ursus arctos horribilis

先日イエローストーン国立公園に行きました。
生物の方面でも地学の方面でも非常に面白い場所で、興味深いものをたくさん観ることができたのですが、なかでもとりわけ幸運だったのは野生のハイイログマ、所謂グリズリーが観られたこと!当地に住んでいても観たことのある人は決して多くないということで、非常に印象的な体験でした^^

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これがその時の写真。私のカメラはそんなによくないのですが、実際には双眼鏡でもっと鮮明に見えました。
この時は食事中だったということで比較的近くで観ることができましたが、通常はこんなに近く寄るのは難しくまた危険でもあるとのこと。

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この印象をもとに作ったのが本作。熊そのものは結構淡白なかたちをしているので、手足の指も作ってみることにしました。
意外とこの体の長さが曲者で、熊らしい丸っこさを出すのに結構苦労しました。
それなりに厚みの出る作品なので、本当は薄めの紙を使った方が貼るのに向くのではないかと思うのですが、熊の重量感や立体感を出すためにはこのぐらい飛び出している方がいいように考えました。観る角度によって表情が変わるところも気に入っています。

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ちなみにハイイログマはヒグマの亜種という格好になるようですね。エゾヒグマとも近縁なのだとか。
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