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Don Basilio, o il finto Signor

ドン・バジリオ、または偽りの殿様

開幕6周年!

1日過ぎちゃいましたが、昨日9/26でこちらを立ち上げて6年目になりました。

身の回りのことがいろいろと変わり、やっていることもいろいろと変わり、好みもいろいろと変わりで、ここを始めたころからは想像もできないぐらい書いていることも変化しているように思ったりもしています。

メインの記事の1つである“オペラな人♪千夜一夜”も、筆が鈍りつつもどうにか110回を迎えましたが、初期の記事は改めて手を入れたくもなっています……まあこれから全部書き直すのは現実的じゃありませんが^^;
1本書くのにどうしても時間がかかるので次はいつになるやらですけれども、次回からは新たな特集を組む予定ですのでお楽しみに。

折り紙は折り紙でなかなか新作が作れず、こちらも滞っています。アイディアはたくさんあるのですが。。。
まあこちらも焦っても仕方がないのでゆっくり作っていきたいなと考えてはいます。

更新が減って場末感が更に増していますが、気が向いたらまたどうぞ覗いてくださいませ。
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オペラなひと♪千夜一夜 ~第百十夜/優雅さと可笑しみのはざま~

今回は切り番回なので通常ならば楽器紹介というところなのですが、この4月に愛すべき仏国の名歌手が亡くなったということを知り、だいぶ時間は経ってしまっているのですが予定を変更して追悼記事を。

MichelSenechal.jpg
Platée

ミシェル・セネシャル
(Michel Sénéchal)
1927〜2018
Tenor
France

いわゆる超有名歌手ではないものの、「名前だけは見たことがある!」という方は少なくないのではないでしょうか。
本当に幅の広いレパートリーと藝歴を持っていた人で、若い頃には仏ものを中心とした軽い演目で主役として活躍し、キャリアの中盤から後半には味わい深い脇役として数々の録音に登場しています。よくよく見るとあの録音にも、この録音にも……という具合に彼の名前を見つけることができるでしょう。フォン=カラヤン、ショルティ、プラッソン、ミンコフスキ、小澤など多くの指揮者の名盤と呼ばれる録音で、その得難い味わいを発揮しています。

その中でもどちらかといえばコミカルな脇役での仕事が手に入れやすいように思います。以前ご紹介したデ=パルマのように伊ものの小さな役での録音は枚挙にいとまがありませんし、モーツァルトやチャイコフスキーも歌っています。そしてなんといっても彼のレパートリーの中核をなすといってもいいオッフェンバックの作品の数々!70歳を超えてからのユーモラスで憎めない、かわいらしくて楽しいおじいちゃんっぷりが映像に残されていることは、仏ものを愛する人たちにとってかけがえのない財産だといって良いでしょう。

名優を偲び、彼の多面的な歌の魅力を語っていきたいと思います。

<演唱の魅力>
私見ですが伊ものを聴いていると歌手たちの声にメタリックな輝きを感じ、独ものを得意とする人たちの声には硬質な芯を思うことが多いです。では仏ものを得意とする人たちはというと、もちろん上記とかぶる印象の声の人もいますが軽みのある、やわらかな明るさを魅力とする人が多いようです。洗練された洒脱な優雅さは時に歌っている内容の俗悪さを覆い隠し、耳に心地よくさえ響かせてしまう……今日のセネシャルもそんな魅力を持っている人でしょう。
数々のコミック・リリーフを受け持っていることからキャラクター・テノールを中心に活動していたと思われている向きも多いのでしょうが、この人の神髄はその声の魅力に加えて卓越した言葉のセンスと上品な歌い回しを備えていることにこそあると思います。一般のイメージから最も離れていそうな役どころでいけば『ミレイユ』(C.F.グノー)のヴァンサンでの優美な歌い口は特筆すべきもので、仏ものを得意とした歴代の名テノールと比べてもその繊細な表現は抜きん出ています。

そしてそこに更に様々な登場人物の個性を乗せることができるからこそ、あれだけ長い間多くの指揮者からオファーがあったのではないかと。例えばオリー伯爵(G.ロッシーニ『オリー伯爵』)は現代のロッシーニ歌唱に親しんだ耳から判断すると単に技巧的でない印象を持ってしまうかもしれませんが、何と言ってもその声はおちゃらけた人物であっても気品のある貴族性をまとったものですし、テンポよりほんのわずかに引きずった歌とまったりとした口跡ではマイペースで鷹揚な人物像が大変見事に表現されています。そしてこれができるからこそのオッフェンバックやコミック・リリーフの諸役での活躍なのです。フランツ(J.オッフェンバック『ホフマン物語』)は幸いなことに音源でも映像でも残っていますがいずれもこの役の決定的名演ですし、トリケ(П.И.チャイコフスキー『イェヴゲニー・オネーギン』)に至ってはうますぎるんじゃないかというぐらいです(笑)。
こうしたうまさ、器用さはバスタンやベルビエ、お国は違えどプルージュニコフにも通ずるところがあります。特にプルージュニコフとはその声区やレパートリーの遷移の点でも類似が多いように思います。

私見ではそんな彼の美質が最もよく表れているのが、ジョルジュ・ブラウン(F.A.ボワエルデュー『白衣の夫人』)と蘇演において重要な役割を果たしたプラテー(J.P.ラモー『プラテー』)です。いずれも作品全体を牽引する主役であり、まさにセネシャルを楽しむためのものと言えるでしょう。格調高くロマンチックなジョルジュではタイプの異なるアリアが3つもありますから彼の歌のさまざまな持ち味を知ることができますし、プラテーでは柔らかで繊細なファルセットの中性的で不思議な響きに魅了されます。特にプラテーは、あらすじとしては数あるオペラの中でも最も悪趣味なものの一つではないかと思うのですが、そういったものを飛び越えた作品の魅力を感じさせる超名演です。

<アキレス腱>
オリー伯爵のところでも少し触れましたが、ロッシーニやベルカントの復興がなされるよりはかなり前の世代の歌手ではあるので、息を呑むような超絶技巧はありません。なので『白衣の夫人』のジョルジュなど例えばロックウェル・ブレイクの技巧的な歌で親しんでいる方には物足りなく思われるところはあると思います。
彼のその他の長所に、そのマイナス以上の魅力を感じることができるかでしょうね。

<音源紹介>
・プラテー(J.P.ラモー『プラテー』)
ロシュバウト指揮/ゲッダ、ミショー、ジャンセン、ブノワ、カステッリ、ユク=サンタナ、ソートロー共演/コンセルヴァトワール交響ソシエテ管弦楽団&エクサン・プロヴァンス祝祭合唱団/1956年録音
>復活に関わったセネシャルを主役に据えた、本作の演奏史でも重要な録音です。ゲッダ、ミショー、ジャンセン、ブノワと仏ものが好きな人にはたまらない豪華メンバーを脇に回し、我らがセネシャルが圧倒的な活躍で印象に残ります。この作品では醜悪な沼の女王プラテーをテノールが女装して歌うという指定がされているのですが、上述の通り彼の歌声の響きがとても中性的で、聴いていて不思議な気分になります。確かに彼はそもそも洋菓子のように軽やかで繊細な声と歌を売りにしている人ではあるのですが、他の録音と比較するとここでは明らかに「女性」の役であることを意識した声と表現になっていますし、しかもそこから不自然さを微塵も感じさせないというとんでもない芸当を成し遂げています。言葉さばきも抜群で、カエルの鳴き声と仏語を引っ掛けた部分もとてもコミカル且つ美しく聴こえます。正直なところ古楽は得意ではないのですが、これはとても愉しんで聴くことができました。

・ジョルジュ・ブラウン(F.A.ボワエルデュー『白衣の夫人』)
ストル指揮/ローヴェイ、ルグロ、ベルビエ共演/パリ管弦楽団&合唱団/1962年録音
>こちらも超名盤です。ゲッダの力強く瑞々しい歌唱やブレイクのハイパー超絶技巧も捨てがたいのですが、個人的にはここでのセネシャルの歌唱が一番好きです。殆ど出ずっぱりで歌い続けなくてはならない大変な役ですが、明るい美声と1音1音を愉しんでいるかのような優雅な歌いっぷりでこともなげに、自然に歌ってしまっています。彼より立派に歌うことができる人はたくさんいるのでしょうが、彼より趣味良く歌うことができる人はいないでしょう……。共演も優れていますし、こんなにいい録音が埋もれているなんてもったいない!と思います。

・オリー伯爵(G.ロッシーニ 『オリー伯爵』)
グイ指揮/バラバーシュ、カンネ=マイヤー、アリエ、マッサール、シンクレア共演/トリノRAI交響楽団&合唱団/1957年録音
>これも彼が得意とした役どころで3種類ほど録音が残っているようです。僕が聴いたことがあるのはそのうち2つですが、比較的音が良く聴きやすいこちらを。何と言ってもセネシャルの陽気なキャラクターが、このおバカ貴族に実にぴったりなのです!品のいい貴族なんだけどイロゴト好きの本当にどうしようもないヤツを、嫌味にならず憎めない風情で聴かせる絶妙な手腕には脱帽します。こういうところがのちの名脇役としての活躍に繋がるんだろうなあ、と感心することひとしきり。マッサールとのろくでなし主従コンビはとても息があっていて楽しいですし、アリエの風格ある家庭教師もGood!女性陣は全体にもう少しというところなのですが、シンクレアがどっしりとした声でコミカルに演じるラゴンドは絶品!

・フランツ(J.オッフェンバック『ホフマン物語』)
小澤指揮/ドミンゴ、グルベローヴァ、エーダー、シュミット、バキエ、モリス、ディアス、ルートヴィヒ、シュタム共演/仏国立管弦楽団&仏放送合唱団/1986~1989年録音
ロペス=コボス指揮/シコフ、ランカトーレ、スウェンソン、ユリア=モンゾン、メンツァー、ターフェル、ギュビッシュ、ヴェルヌ共演/パリ・オペラ座管弦楽団&合唱団/2002年録音
>知られざる彼の実力が発揮されている演奏の紹介がつい中心になってしまっている感があるのですが、そうは言っても彼の良さが最も活きるのはやはりオッフェンバックかもしれません(笑)ホフマン物語の4役というとヒロインであったり悪役であったりの陰に隠れてあまり注目されないのですが、実はキャラクターテナーが受け持つる道化が重要なのではないかと思うのです。で、こういうところでのセネシャルの良さは得難いものがあります。小澤の全曲ではこのうち2役を受け持っていますが、特にフランツのアリアは巧すぎるぐらい。いい曲ではありますがこの歌を思わず聴き入ってしまうというのは珍しいかもしれません。それから10年以上あとのパフォーマンスが映像に残っているのがまた嬉しい!流石に往年の絹のような輝きのある美声は衰えてはいるのですが、存在感は圧倒的です。このDVDは『ホフマン物語』の映像の中でも音楽面でも視覚面でも群を抜いて素晴らしいと思っているのですが、その中でも際立って印象に残ります。全体に仄暗いアントニアの幕での可愛らしいおじいちゃんぶりには癒されます^^

・メネラオス(J.オッフェンバック『美しきエレーヌ』)
ミンコフスキ指揮/ロット、ブロン、ナウリ、ル=ルー、M.A.トドロヴィッチ、ウシェ、ガブリエル、アルヴァロ共演/ルーヴル宮音楽隊&合唱団/2000年録音
>可愛らしいおじいちゃんぶりが際立っているといえばこちらの映像も忘れるわけにはいきません!この作品、伊歌劇と希神話をこれでもか!というぐらいおちょくっていて、ちょっとおバカな人物にされてしまっているメネラオスなんですが、これがまあ気持ちいいぐらいハマっています!仏ものなのでこういう区分を当てはめるのは必ずしも適切ではないのは承知の上なのですが、地位のある老年の人物が体よく小馬鹿にされるというところで行くと、まさにコメディアデラルテのドットーレを地で行っているような感じで、しかもそれが不快にならない!小回りの効くブロンやナウリ、ル=ルーに対してのそのそうろうろしているところなど、ギャップが効いていて最高です!

・オルフェ(J.オッフェンバック『地獄のオルフェ』)
プラッソン指揮/メスプレ、トランポン、ロード、ビュルル、ベルビエ、コマン、ラフォン、マラブレラ共演/トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団&合唱団/1978年録音
>こちらはうんと若いときのもので優男ですが、まあ役柄もあってかなり笑えるヤサグレっぷりで笑わせてもらえます。ユリディースが死んで自由だとかのたまってしまうとこなんて最高ですし(ここはまたこの後のロードの押し出しのいい歌いっぷりが楽しい!)、わざとっぽいユーリディースとの重唱にもニヤリとさせられます。歌もさることながら地の科白の多い演目でもあるので、ことばの巧みさにも改めて感心させられます。役柄の多い演目でテノールもたくさんいますが、主役として存在感を発揮していて流石の一言(もちろんビュルルのトリッキーなアリステ&プリュトンもめちゃくちゃ楽しいです)。名手を揃えているものの全体には凸凹のある演奏だったりはするんですが、セネシャルについてはブロンと共にこの役のベストと思います。

・青髭(J.オッフェンバック『青髭』)2019.11.16追記
カリヴォン指揮/ルヴォワル、コラール、ペイロン、ダゲルサール、バルボン、ダシー、デュヴァレ共演/仏放送管弦楽団&合唱団/1958年録音
>オッフェンバックでの主役をもう一つ。プラテーやオリー伯爵を遺している一番脂の乗っている時期の録音で、全編に亘って瑞々しい美声を響かせており、録音に恵まれているとはいえないこの演目の魅力を最大限に引き出していると言えるのではないでしょうか。いかにも彼らしい滑稽な優雅さと傲慢さで、物語の世界を引っ掻き回すエクセントリックな青髭を演じています。他のこの演目の録音などと比べると基本的にはかなり折り目正しく歌っているのですが、言葉の扱いに彼らしいセンスが感じられて実にバカバカしくて愉しい!とりわけ登場のカヴァティーナは名演です。カットがかなりあることもあってほとんど彼と、ブロッテを演じているルヴォワルを聴くための音源といっても差し支えないのですが、彼ら2人のために手許に置いて損はありません。

・ドン・アンドレス・デ=ヒノヨーサ(J.オッフェンバック『ペリコール』)2022.2.15追記
プラッソン指揮/ベルガンサ、カレーラス、バキエ、トランポン、コマン共演/トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団&合唱団/1982年録音
>オッフェンバックの作品で彼が演じた役の中でもはっきりと脇役だと思います。なので少なからずある歌の出番も割と地味で、記憶に鮮明に残るのはむしろその口跡の巧みさによるところかもしれません。兎に角冒頭から科白回しが格段にうまくて唖然とさせられます。トランポンともども暴君(=バキエ)に振り回される中間管理職の苦労をユーモアとペーソスで体現していると言っていいでしょう。そしてこの語りこそが旨みだなどといい気になっていると、細かい歌の部分でリリカルで優美な喉を疲労してくるから油断なりません(笑)。もちろん彼の歌を聴こうと思えばもっといい音盤はあるでしょうが……この面白おかしさをスルーはできないですね。

・ヴァンサン(C.F.グノー『ミレイユ』)
エチェヴリー指揮/ドーリア、マッサール、ミシェル、ルグロ共演/パリ交響楽団&合唱団/1962年録音
>こういう大真面目な役でも一級品の歌唱を残しているんだぞ!というのがこちら。グノーのメロディ・メーカーっぷりがとてもよく出ている作品ですが、派手に歌い上げるのではなくあくまで繊細に上品に仕上げて欲しいという辺りが難しいところだと思っていて、こともなげにそれをこなしてしまうセネシャルのセンスの良さには脱帽させられます。終幕のアリアの美しさなどほとんど神々しいほど。共演の人たちの歌がまた洗練されたもので仏もの好きにはたまりません!

・ニシアス(J.E.F.マスネー『タイス』)
エチェヴリー指揮/ドーリア、マッサール、セルコワイヤン共演/パリ国立音楽院管弦楽団&合唱団/1961年録音
>逆に大真面目な演目の中で物凄い享楽性を表現しているのがこちら。それなりに重要な役のわりに歌う場面も少なくてアリアの1つもないので、結構な大物がやってもあんまり印象に残んなかったりするのですが、ここでの彼の虚無的な明るさはかなり強烈。不器用な修道士とも聖女になってしまう踊り子とも違う、アレクサンドリアの普通の人(でも客観的には異常な躁状態)を、これもまたごく自然に創り上げており圧巻です。

・トリケ(П.И.チャイコフスキー『イェヴゲニー・オネーギン』)
ショルティ指揮/ヴァイクル、クビアク、バロウズ、ギャウロフ、ハマリ共演/コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団&合唱団/1974年録音
>最後2つは仏ものではないものを。知るかぎりでは露もので歌っているのは流石にこの役ぐらいなんですが、まあこういうちょっとしたコミック・リリーフをやらせたらうまいことうまいこと……クープレしか出番がないものの、この歌が結構長いので正直なところ退屈することも少なくはないのですが、弱音を巧みに使った繊細な歌唱で思わずうっとりさせられてしまったり(役としては近所のちょっと変な外国人というところなのでここまで純粋に聴けてしまうのもどうなんだろうというところではあるのですが)。彼の手広さを知ることができる音盤です。

・ペドリロ(W.A.モーツァルト『後宮からの逃走』)
ロシュバウト指揮/ゲッダ、シュティッヒ=ランダル、アリエ、プリエット共演/パリ音楽院管弦楽団&エリザベス・ブラッサー合唱団/1954年録音
>独ものでもモーツァルトはいくつかレパートリーがあります(今回は音盤紹介をしていませんが、ヴェルディやプッチーニなどの伊ものもたくさん残しています)。プラテーでもそうでしたが、同じようにやわらかで上品な藝風ではあるもののはっきりと声の性格の違いが出るのでゲッダとは共演が多いですね^^この演奏でもヒーローのゲッダに対してフットワークの軽い従者を演じていて良いコントラスト。今回ご紹介するものの中でも最も若いころの演奏だということもあってこけおどしっぽいアリアなどは思わずクスリとさせられてしまう可愛らしさがあります。バッカスの重唱などはアリエとバッチリ息が合っていて聴いているだけでも笑みがこぼれるほど。シュティッヒ=ランダルとプリエットの主従も理想的ですし、ロシュバウトの指揮も格調高く隠れ名盤だと思っています。

・ドン・バジリオ(W.A.モーツァルト『フィガロの結婚』)2019.4.28追記
ショルティ指揮/ヴァン=ダム、ポップ、ヤノヴィッツ、バキエ、フォン=シュターデ、モル、ベルビエ、ロロー、バスタン、ペリエ共演/パリ・オペラ座管弦楽団&合唱団/1980年録音
>彼のバジリオは最高だろうなと思いながら手に入れられていなかったのですが、こんな素晴らしいキャストでの映像が手に入りました!映像面でも音楽面でも望月の欠けたるとこもなしと思へば、という最高のDVDと思います。セネシャルはこの馬鹿げた1日の顛末を頭から終わりまで、完全にゴシップとして楽しんでいるいやらしいおじさんになりきっています。が、ものすごく愛嬌があって人好きがするのは、彼のキャラクターだからこそなせる技でしょう。テーブルクロスの下からケルビーノを見つけたときの「ヒャハハハ」という笑い方など思わずこっちも笑えてきます。そしてその上品な歌い口とソフトな声のレチタティーヴォ!お行儀のいい人の好む品のない噂話という風情が最高です。アリアのカットがそれだけに惜しくはありますが、これを超えるバジリオはなかなか楽しめないでしょう。

・ルカーノ(C.モンテヴェルディ『ポッペアの戴冠』)2020.8.21追記
ルーデル指揮/G.ジョーンズ、ヴィッカーズ、ギャウロフ、C.ルートヴィヒ、スティルウェル、マスターソン、タイヨン、ビュルル共演/パリ・オペラ座管弦楽団&合唱団/1978年録音
>あまりにも重厚長大なモンテヴェルディですが、この時代の演奏の趣味を考えれば非常に質の高い公演で、チャールズ・ナイトの恐竜復元を観るような良さがあります。ここでのセネシャルの出番はほんの1場面、セネカの死を受けて邪魔者がいなくなったと言ってネロと小躍りする廷臣というだけの役柄ながら、流石はコメディ・リリーフの達人だけあって存在感を発揮しています。直前ギャウロフが堂々たる感動的なセネカの死の場面を演じて一つのクライマックスを作ったのと好対照になるように、彼の“泥酔ぶり”はとてもヴィヴィッド且つある種の浅はかさまで克明に描いていて、この演目の箸休めな役割も果たしています。このセネシャルに、あの真面目なヴィッカーズが同じテンションの酔っ払いとして絡んでいてかえって不気味でとてもいいです。先ほども言った通り箸休め的な場面ではあるのですが、この2人のちょっと異常な酔っ払いぶりは非常にスパイシーな印象を残します。いやしかしセネシャル先生は本当に手広いですね。
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蕈三題

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蕈三題
Three kinds of Mushrooms

ひょんなことから今年、科博筑波植物園で開催されるきのこ展に折り紙を出すことになりました。

いずれも旧作の焼き直しです。
本当は完全新作を用意したいとも思っていたのですが、思いの外忙しかったことに加えて「これを入れて欲しい」というご要望の3点を作ったところでバランスがとてもよかったので、この3つに絞ることに。

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ベニテングタケ。
いわゆる“妖精の輪”のイメージ。

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キヌガサタケ。
竹林に生えることもあるということで、こういう背景に。

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ヤグラタケ。
キヌガサタケもそうですが、全く別の性格の紙を張り合わせて正方形を作って追っています。
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