Don Basilio, o il finto Signor

ドン・バジリオ、または偽りの殿様

かはくの展示から~第20回/オオバタグルミ~

このblogは国立科学博物館の公式見解ではなくファンの個人ページですので、その点についてはご留意ください。

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オオバタグルミ
Juglans megacinerea
(日本館3階北翼)
130706_1658~01

今回は、実はこんなものもあるのですよ、というものをご紹介。第四紀のクルミの化石です。
博物館で化石を見るというと、どうしても動物化石(特に恐竜!)のイメージが強いですが、当然ながら植物の化石と言うのもたくさん見つかっています。このオオバタグルミの周りを見ると多くの植物化石の展示がありますし、科博全体見回しても少なからずものがあります。

一般的な人気(化石を掘るのが好きな人の人気、ではないです、念のため)とは裏腹に、植物化石は動物化石と同様に重要です。
地質時代の環境、即ち古環境を知るにあたっては、動物だけに目をつけていては偏った見方しかできないからです。いまの環境を考えてください。生態系は当然動物だけではなく植物や菌などさまざまな生物によって成り立っています。当然、地質時代の環境だってそうだったはずですから、古環境を考えていくためには、そういった要素は不可欠な訳です。
と言っても、私自身まだまだ本当に不勉強で、偉そうな口を利けた分際ではないのですが^^;

※そういえばキノコの化石とかって見つかってるんでしょうか?いまの環境を考えると、本来なら古環境を考える上でも不可欠とは思うのですが、なにせ化石そのものが出てこないとどうにもならん話ではありますし。

ちなみに、古環境を知る上での鍵となる生き物の化石を示相化石と言います。
よく定番として紹介されるのは造礁サンゴですね。この連中は大昔から現在に至るまで基本的には暖かかくて浅い海に生息しているので、彼らの化石が出てくればそれがひとつの指標になる訳です。尤も、それが絶対かと言われれば、難しいところでもあるのですが^^;

130706_1659~01

上の写真、わかりづらいですが左上方の黒い塊がオオバタグルミの化石です。

さて今回ご紹介するオオバタグルミ、宮沢賢治が化石を発見していることでも有名です。
宮沢賢治と言うと幻想的な童話や詩のイメージがありますが、実はかなりしっかりとした科学教育を受け、その影響が濃厚に作品に出てきている人物でもあります。というと有名な『銀河鉄道の夜』の印象から星や宇宙が関心の中心だと思われそうですが、彼は地学と農学の人です。特に彼の鉱物への愛はかなりのもので、作品のあちこちにその影響を見ることができます。
古生物は彼の主要な関心からは少し離れるのですが、彼が名づけたことで知られる「イギリス海岸」で、生徒たちとともにクルミや足跡化石を発見しています。その時の出来事は童話『イギリス海岸』で描かれているほか、『銀河鉄道の夜』のプリオシン海岸でのエピソードへと繋がっていきます。
また、後に賢治は盛岡の鳥羽源蔵とともに古生物学者の早坂一郎を案内しています。早坂は論文の中で賢治に謝辞を送っています。
※当時賢治は稗貫農学校(現在の花巻農業高等学校)で教師をしていました。

『銀河鉄道の夜』で、ジョバンニたちがプリオシン海岸で出会う化石を発掘する大学士はこう言います。
「いや、証明するに要るんだ。ぼくらからみると、ここは厚い立派な地層で、百二十万年ぐらい前にできたという証拠もいろいろあがるけれども、ぼくらとちがったやつからみてもやっぱりこんな地層に見えるかどうか、あるいは風か水やがらんとした空かに見えやしないかということなのだ。…(後略)」
これ、そのまんま示相化石の話と解釈することもできるのではないかと個人的には思っています。

oobatagurumi.jpg

おまけ。先日イギリス海岸で一緒に行ったボランティアさんが見つけたクルミの化石。
普段イギリス海岸は川底に沈んでいるのですが、先日はたまたま水量が少なく見つけることができました。

<参考>
宮澤賢治地学用語辞典/加藤碵一/愛智出版/2011
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