Don Basilio, o il finto Signor

ドン・バジリオ、または偽りの殿様

オペラなひと♪千夜一夜 ~第五十夜/歌劇王~

いや~感無量ですね、第五十夜ですよ!
当初毎週1人ずつ紹介してアラビアンナイトよろしくやっていこうと「千夜一夜」と名付けたものの、早々に毎週の投稿を諦め、途中で現在の場所に移築して足かけ4年でようやっと五十夜!千夜一夜やろうと思ったら同じペースで書いても80年かかりますねww

という訳でめでたい切り番ですので、なんかしようと。
と言っても指揮者やら演出家やらについて書く力量は僕にはなく(^^;

折角なので今年生誕200年のこの人の話をしようと。
※指揮者の話ができねえなら作曲家の話なんてもっとできねえだろ!という批判は甘んじて受けます。ごめんちゃい(笑)

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ジュゼッペ・ヴェルディ
(Giuseppe Fortunino Francesco Verdi)
1813~1901
Composer
Italy

予想どおりだと思いますけどヴァーグナーではなく、ダルゴムイシスキーでもなくヴェルディです(ヴァーグナーは苦手だしダルゴムイシスキーは『ルサルカ』しか知らないし^^;)

伊歌劇のみならずオペラそのものを代表する作曲家であり、日本に於いては「歌劇王」という敬称を冠されることもあります(尤も、ヴァーグナーのことを指していうこともありますが)。生涯に約26曲ものオペラを作曲(と言ってもカウントの仕方によってこれは変わりうる数で、『第1回十字軍のロンバルディア人』を『ジェルザリム』に仕立て直したり、『ドン・カルロ』や『マクベス』などのように同じ題名のまま改作したりというのを含めるとこれよりも多くなります)しています。この数自体は必ずしも飛び抜けて多い数ではありませんが、その中には現在でも劇場の主要なレパートリーとなっている作品が沢山あります。またオペラ以外の作品では『死者のためのミサ曲(レクイエム)』が有名ですが、それ以外にも小さいものから大きなものまで作品を残しています。
個々の作品への私自身の感想はこちらに。一応全部聴いてはいるのですが、記事を書こうと思って聴き直したりしてると全然進みませんね^^;

ヴェルディの作風だとか音楽的な価値だとかっていうことを詳しく語るには、自分の知識はあまりに貧弱ですし、ヴェルディの人となりだとか生涯、或いは演奏史についてもより詳しい方がたくさんいらっしゃるのでそれらについては一家言ある方に譲るとして、今回は彼の作品の中でも秘密の名盤を、涙を飲んで5つだけご紹介します。
秘密の名盤なので有名なスタジオ録音とかカラスの『椿姫』とかミトロプロスの『運命の力』と『エルナーニ』とか伝説のNHK『オテロ』とかよく言及されるものは敢えて除きました。結果、歌手でも本来触れたいひとが登場せず、更に指揮者で聴く人からすれば噴飯ものかもしれないラインナップになった気もしますが…ま、それでも敢えて絞った結果、ということで(笑)
けどこれいつも紹介してるラインナップな気もする…それに「秘密の」という割には普通だ…ま、いいか俺のblogだしww

・『アッティラ』
シノーポリ指揮/ギャウロフ、カプッチッリ、M.ザンピエリ、ヴィスコンティ等/ヴィーン国立歌劇場管弦楽団&合唱団/1980年
>初期ヴェルディからはこの音盤を。
作品自体はムラッ気の多いテミストクレ・ソレーラが途中で投げてどっか行っちゃってフランチェスコ=マリア・ピアーヴェがなんとか回収した台本なので、相当ずっこけです^^;(詳しくは後日改めて記事を書きますが)だから上演として成功させるには演奏者側に相当の力量が無ければお寒い感じになりかねないのですが、この演奏は物凄い記録です。
何より先ず演奏の温度が違います。初期のヴェルディを演奏する上で欲しい熱気が物凄い!これが誰の力かと言えば一番はエツィオのカプッチッリでしょう。押し出しの強い立派な声と表現でプロローグからハイテンションなのですが、やはりカバレッタでのハイBが凄まじい!しかもこれをbisに応えて繰り返してくれるなんて!人々を熱狂させる娯楽としての歌劇の素晴らしさを端的に伝える演唱と言っていいと思います。また、シノーポリもテンションが高いですね。彼はどっちかと言うと理知的で分析的な演奏を構築するという印象のある人ですが、これを聴くとちょっとイメージが変わります。実は彼を一夜にして有名にした演奏がこれだというので、芯の部分はホットな人なのかもしれませんね(笑)題名役のギャウロフは声について言えば最盛期を過ぎていて、彼にしては渋く纏めている感じではあるものの、やはり特筆すべき存在感。悪夢について語るアリアでは、この作品の中にも後年のヴェルディに繋がる苦悩する人間の姿が確かな筆致で描かれていることを感じさせます。これらのひとに較べると、テンションは高いもののちょっと声が可愛すぎるザンピエリや、やや細めのヴィスコンティ(まあなよっとした役だからいいんだけど)は若干落ちるような気はするのですが、総体として見たときにはめり込まずいい印象を残して呉れます。
オペラの熱狂を好む向きにはおススメです。

・『イル=トロヴァトーレ』
クレヴァ指揮/ベルゴンツィ、ステッラ、バスティアニーニ、シミオナート、ウィルダーマン等/メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団/1960年
>熱狂の演奏と言えばこれも外すことのできないもの。この作品のスタジオ録音と言えばやはりセラフィン盤が代表的だと思うのですが、あれが端正過ぎるまたはコッソットが若々し過ぎてキャラじゃないと思っている向きにはこれは超おススメです!
クレヴァはそんなに有名な指揮者でもないかなと思うのですが、ライヴでテンションの高い演奏を結構残しており、その最右翼がこれ。畳みかけるようなテンポが異常な熱気を生み、その異常な熱気が更に音楽を煽っていくような凄い棒です。ライヴらしい疵があったり、合唱やらオケやらがあまり巧くなかったりということはあるのですが、この熱気はそういったものを度外視させるだけのパワーがあります。
そうした熱気の中で歌手たちの奮闘も凄まじいです。やはりセラフィン盤唯一のミス・キャスト、若過ぎたコッソットが迫力満点、老獪なシミオナートになっているのが、まずは大きなポイントです。アズチェーナはこのぐらい異常なオーラを漂わせている方がキャラクターとしても物語としても面白さが増します。この作品の真の主役がアズチェーナであることを納得させて呉れる演奏です。最高のルーナ伯爵、というか伯爵その人のようなバスティアニーニもスタジオ録音での安全運転からハンドルを切るのがギリギリの過激な歌いっぷりになっていますがこれまた見事。シミオナートとバスティアニーニはフォン=カラヤンのライヴでも対決していますが、あの温度の低い重ったるい演奏とは違いふたりともキレッキレで丁々発止というところ。ステッラもこのひとのベストと言っていい歌唱でしょう。彼女のイメージは美しい声による美しい歌唱というところではないかと思いますが、そんなところを飛び越えた力漲る歌。そして、極めつけはベルゴンツィです!彼を単に優等生的な折り目正しい歌を歌う人だと思っている方には是非とも聴いていただきたい!彼らしい歌の端正さをキープしながら、マンリーコはこうあって欲しいという理想どおりの強烈なテンションの高さ、それに輝かしい高音と非の打ちどころのない凄まじい熱唱です。これでフェランドがヴィンコならまったく文句なかったのですが、ウィルダーマンも悪くはないでしょう。
昨今聴けない兎に角テンションの高い『イル=トロヴァトーレ』がお好きな方は是非!

・『ドン・カルロ』
アバド指揮/ギャウロフ、カレーラス、フレーニ、オブラスツォヴァ、カプッチッリ、ネステレンコ、ローニ等/ミラノ・スカラ座歌劇場管弦楽団&合唱団/1977年
>この作品の最高の録音のひとつと言っていいでしょう。
アバドの『ドン・カルロ』と言えばスタジオ録音で補遺まで贅沢に乗っけたものが有名ですが、仏語版だったりアバドのゆったりしたテンポ取りだったりがこの作品のヴェルディらしさを殺いでしまっていて賛否が分かれるところ。普通聴けないところがあったりというのは興味深いものの、僕も今ひとつと思っています。ギャウロフの宗教裁判長が聴けるのが最大のポイントですが←結局そこかい
この録音はそこでの消化不良な気分を解消して呉れる超名演です(このメンバーで悪かったらよっぽどですが^^;)。スタジオ録音同様5幕版に加え通常はカットされる様々な音楽が入っています。アバドはスタジオ録音でのトロさは何処へやら、ライヴだというのもあるかと思いますが見事な采配で、この長い版を飽きさせることなく聴かせて呉れます。同じようなメンバーで録音したフォン=カラヤンがオケを鳴らし過ぎでオペラというよりは声楽的交響曲のような風情になっているのに対し、こちらはしっかりとオペラですしね!(笑)ちなみにここでは述べませんが、この上演はフォン=カラヤンの嫌がらせで放送ができなかったという曰くつきのもの。
歌手ではやはりまずはギャウロフのフィリッポが素晴らしい!この役を歌わせたら右に出る者はいないということを再確認できます。声そのものは全盛期の張りのある輝かしい響きではありませんが(と言っても凡百の歌手とは格が違いますが)、その表現のうまみと言ったら!恐らく唯一だと思うのですが、ロドリーゴの死を受けたカルロとの重唱(後に『死者のためのミサ曲』の“ラクリモーザ”に転用される)を彼の歌で聴けるのも儲けもんです。カルロのなよっとしたキャラクターにはやはりカレーラス!『カルメン』のドン・ジョゼもそうですが彼の虚弱であんまりおつむがよさそうでないのが母性本能を擽る感じがカルロという役にはピッタリです(褒めてます、褒めてます)。フレーニももっと可憐な娘役のイメージが強くはあるのですが、何を歌わせてもうまみのある歌唱をするひとだなあとしみじみ思わせます。これだけのエリザベッタはなかなか聴けるものではありません。ロドリーゴのカプッチッリがまた演劇的な歌唱と華のある存在感でカッコいい!エツィオのときのようなハデハデ歌唱ではありませんが、カルロに寄り添う義人でありながらフィリッポにも近付く高度な政治家という役どころがハマっています。この役についてはバスティアニーニと東西の横綱でしょう。エボリのオブラスツォヴァは技術的にもう一声というところもありますが気迫の歌唱で、美貌のアリアは圧巻。バンブリーやコッソットだったらと思わなくもないですが、充分な内容だと思います。ネステレンコの宗教裁判長はこれだけだと思いますが、若いときの歌だけに大変輝かしい声で上から下まで文句なく鳴ります。ギャウロフとの対決も力負けすることなく、手に汗握るアツい場面に仕上がっています。修道士のローニも流石の名脇役ぶりですし、スカラですからオケも合唱もしっかりしています。
『ドン・カルロ』がお好きなら座右に置きたい演奏のひとつです。

・『シモン・ボッカネグラ』
ガヴァッツェーニ指揮/ゴッビ、トッツィ、ゲンジェル、G.ザンピエリ、パネライ等/ヴィーン国立歌劇場管弦楽団&合唱団/1961年
>不滅の名盤アバド盤への対抗盤です。
アバド盤がカプッチッリやギャウロフを配した素晴らしい演奏であることは言を俟ちませんが、だからと言ってそれのみが秀でた演奏だという訳ではなく、このガヴァッツェーニ盤もまた異なるベクトルでの超名演だということができます。端的に言えば、前者が音楽的に磨き上げられた『シモン』だとすると、後者はより劇的な『シモン』だということができると思います。
ガヴァッツェーニは面白くない演奏をすることもある人ですが、ここではオペラのツボを把握した非常に立派な演奏。間の取り方や盛り上げ方、それにテンポ感などいずれもあらまほしきもので、彼の劇場感覚の確かさを感じさせます。生前「シモンを演じられるのならば他にどんな条件があろうとも行く」と語ったというゴッビは千両役者っぷりをフルに発揮。偉大な政治家として風格のあるシモンを演じたカプッチッリよりも、より曲者らしいシモンです。フィエスコについてもスケールの大きな歌唱を繰り広げているギャウロフに対し、非常に人間臭い歌唱をするトッツィという対比が成り立っていると言えるでしょう。メトを代表する演技派のバス歌手であった彼の持ち味が十二分に活かされています。両盤の特徴の違いを一番感じさせるのはパオロかもしれません。アバド盤のファン=ダムが本当に音楽的に美しい歌を歌っているのに対し、ガヴァッツェーニ盤のパネライは演じている、という感じ。自分で自分を呪う場面は特に強烈です。海賊盤の女王ゲンジェルもライヴらしいパワフルな歌唱をしていますし、ザンピエリ(こちらはテノール)も良い声でまずまず。
アバド盤を愛聴している方にこそ聴いていただきたい名盤。

・『オテロ』
セラフィン指揮/デル=モナコ、カルテリ、カペッキ、クラバッシ/RAIトリノ管弦楽団&合唱団/1958年
>今回はこれのみ放送音源ですが、ライヴに負けない熱気があるもの。
『オテロ』の名盤もたくさんあり、なかでもデル=モナコのオテロによるものはそれこそいい演奏がたくさんある訳ですが、その中でもデズデモナのカルテリとイァーゴのカペッキはあまり言及されないけれども忘れることのできない歌唱です。
音が必ずしも良くないのは残念ですがセラフィンの指揮は大変見事。冒頭の嵐の場面から一気に物語の世界に引き込まれます。このあたりは流石の手腕と言うより外ありません。必ずしもオケは巧くないですが、立派な演奏です。オテロのデル=モナコもいつもどおりカッコいい!「喜べ!」の一語だけで聴くものを夢中にさせられるオテロはやはり彼だけかなと思います。このオテロに絡むカペッキのイァーゴがいやらしいぐらいの演技派っぷり。器用な歌い方をする人に共通する点だとは思うのですが、pの表情付けが非常に巧く、心憎いです。そしてカルテリのデズデモナ!このひとは早くに結婚して辞めてしまったのですが、それが全く勿体ない!こってりとした美声で紡ぎだされる彼女の歌の表現力たるや。そしていつもながら渋く脇を固めるクラバッシもいいです。
『オテロ』の隠れ名盤、聴かなきゃ損損です!
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