Don Basilio, o il finto Signor

ドン・バジリオ、または偽りの殿様

オペラなひと♪千夜一夜 ~第十夜/偉大なる縁の下~

さてさていきあたりばったりにのらりくらりと書いてきたこの企画もついに第十夜に突入しました。折角の切り番なので今回はちょっと趣向を変えて。

僕自身そうなのですが、どうしてもオペラと言うと目立つアリアやアンサンブルのある大きな役に目が行きます。しかし一方でなかなかどうして大切なのが合唱。素人考えだと「話の流れからすればその他大勢ではないか」とも思ってしまいがちなのですが、このひとたちが演奏面はもちろんのことながら演技の面でもしっかりして呉れないと、公演全体が何となく締りのないものになってしまいます。そういう意味でオペラには脇役はいないと言うことができるのかもしれません。

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Gli ebrei

と大風呂敷を広げておいて、ほんとならここでオススメの合唱団とかをご紹介できればカッコいいのでしょうが、残念ながら僕自身は合唱経験もありませんし、どこの合唱団がうまいと言うのを具体的に挙げるには余りにも知識が不足していておこがましいので(^^;、オペラのなかでの印象的な合唱曲を見ていこうかなと思います。

さて特に伊国において古い時代のオペラでは名人芸的なテクニックを見せつけていくアリアが人気がありましたから、古い時代の作品にももちろん合唱は出てきますが、どちらかと言うとロッシーニぐらいからこっちの方が合唱にはいい曲がある気がします。なかでも名曲のひとつとされているのがこの曲です。

・モゼの祈り“天の玉座から”(G.ロッシーニ『モゼ』)
・フィナーレ“ここではすべてが成長し”(G.ロッシーニ『グリエルモ・テル』)

合唱の名曲として取り上げられますが、お聴きになるとお分かりの通りモゼらソリストたちに続いて合唱が登場するかたちで、実は純粋に合唱と言う感じではないですね。どちらかというと大アンサンブルみたいな。合唱自体が主役と言うよりは曲の終わりをダイナミックにしていくために合唱が入ると言う感じでしょうか。そういう意味ではロッシーニの後輩のドニゼッティやベッリーニも同じような感じで合唱を使っていると言っていいのかも。

・フィナーレ“このような瞬間に私を抑えるのは何者か”(G.ドニゼッティ『ランメルモールのルチア』)
・エルヴィーラのポロネーズ“私は可愛い乙女”(V.ベッリーニ『清教徒』)

前者がアンサンブルを、後者がアリアを盛りたてるために合唱が使われていると言ったふうでしょうか。そんな作品が多かった伊国のオペラの合唱でもついに合唱単体の名曲が生まれます。

・ヘブライ人の合唱“行け、わが想いよ金色の翼に乗って”(G.F.F.ヴェルディ『ナブッコ』)

この曲は都市ごとに分裂しさまざまな国にいじめられていた伊国のひとたちと劇中のヘブライ人たちを重ね合わせて大きな共感を呼んだと一般的には言われている名曲中の名曲で、伊国統一運動においても象徴的に使われましたし、今でも彼の国の第2の国歌として(むしろ国歌よりも)慕われているそうです。『ナブッコ』自体は若き日のヴェルディのパワー(と、そしてもろもろの事情)が生み出した非常にエネルギッシュな曲なのですが、そのなかで最も静謐に歌われるこの曲が全曲中の白眉として多くの人々に受け入れられたと言うのはオペラ史のなかでも大きな出来事として取り扱っていいでしょう。
ちなみに余り知られていませんがこのあとでヘブライの大祭司ザッカリアが登場して歌うアリアでも合唱はソリストとかなり緊密に絡んでいきます。“行け、わが想いよ”に隠れてしまいがちですがこちらも大変な名曲であり、そしてなおかつ難曲です。

・ザッカリアのアリア“未来の暗闇の中に”(G.F.F.ヴェルディ『ナブッコ』)

さて伊国の話ばかりをしてきましたが、他の国でも合唱の絡む名曲はたくさん登場します。が、紙面と時間(と知識;汗)の都合でここでは2曲だけ。

・入場行進曲(R.ヴァーグナー『タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦』)
・第4幕への導入曲(G.ビゼー『カルメン』)

そして忘れてはならないのが露国です!
露もののオペラの隠れた主役は合唱だと言って憚りません。特に土臭い五人組の作品のなかではいずれも合唱のウェイトが非常に大きい。ムソルグスキーの『ホヴァーンシナ』などは主役をはっきりと設けているような作品ではないだけに余計にその感じが強くなります。ここではよりなじみ深い『ボリス・ゴドゥノフ』を挙げますが、この有名な場面にしてもボリスよりも合唱の方がひょっとすると強烈な印象を残すかもしれない。

・戴冠式の場(М.П.ムソルグスキー『ボリス・ゴドゥノフ』)

こうした流れは後輩たちにもきちんと受け継がれていたようで、20世紀に入ってから活躍したプロコフィエフの超大作『戦争と平和』も(まあ原作が原作だと言う話も無きにしも非ずなのですが)最も活躍しているのは合唱だと言う感じを受けます。

・フィナーレ(С.С.プロコフィエフ『戦争と平和』)

さてさて今回はこのあたりでおしまい。
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