Don Basilio, o il finto Signor

ドン・バジリオ、または偽りの殿様

Basilio大学士の旅宿

これは某所に以前挙げたものを、ちょっといじってます。
ほんとは写真沢山挙げてたんだけど、リサイズすんのが大変なので、ひとまず文だけ笑。

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楢ノ木大学士は宝石学の専門だ。
ある晩大学士の小さな家へ、
「貝の火兄弟商会」の、
赤鼻の支配人がやって来た。

次の日諸君のうちの誰かは、
きっと上野の停車場で、
途方もない長い外套を着、
変な灰色の袋のような背嚢をしょい、
七キログラムもありそうな、
素敵な大きなかなづちを、
持った紳士を見ただろう。
それは楢の木大学士だ。
宝石を探しに出掛けたのだ。

 (『楢ノ木大学士の野宿』より)

私の賢治好きは何度かいろいろなところで触れてきましたが、いよいよこのGWで念願の花巻に足を運ぶことができました。
簡単にその報告、というか記録を。

※なお、Basilioも一応Buchelorは取りましたので、一応は大学士かと笑。

 【旅宿第一日】

上野ではなく東京の停車場から出発したのはいいものの、バカな話で自由席券しか持っておらず、一方で乗る予定だった新幹線は全席指定席(苦笑)
仕方がないので、2本ぐらい待ってのろのろ後の列車で…まぁ、急ぐ旅でもなければ予定もかっちりとは立てていないゆるゆる旅行ですから、1時間やそこら狂ったぐらいでは痛くも痒くもありません^^

そしてようやっと13時ごろ、新花巻に到着♪
意外と予想より暖か。そして予想より遥かに小さな駅…だって新幹線が止まるのに、新幹線と釜石線しか止まらないんだよ…しかも改札2つしかないんだよ…ww
で、この時点で既になんとなく予想はついたんだけど、周りはどこまでもどこまでも家と畑と田圃(^^;一応新幹線止まる駅だから、周りは多少ビルがあって…なんて思っていたわけですが、イーハトーヴの幻想は、そんな幻想を遥かに凌駕していたのでした。

駅を降りてすぐ我々を迎えてくれるのがコブシの花。
やはり賢治の町だけあって、ここには賢治の愛した(或いは賢治にとって宗教的な意味があったと言ってもいいかもしれない)コブシやモクレン(いずれも属名がMagnoria)の木がいたるところに植えられているのが印象的でした。

 諒安は眼を疑いました。そのいちめんの山谷の刻みにいちめんまっ白に
 マグノリアの木の花が咲いているのでした。
 (『マグノリアの木』より)

また、駅を降りてすぐのところにはゴーシュのモニュメントがあります。
これは有名だということもあったし、最初はハイテンションでこの手のものみんな写真に撮ってたんだけど、途中でキリがないことに気づいて辞めちゃったw
近づくと『トロイメライ』が流れます。
(賢治みたいな博学な人が、ロベルト・シューマンのファーストネームを間違えると思えないのですが…何か意味があるのだろうと、個人的には思っています)

 「トロメライ、ロマチックシューマン作曲。」
 猫は口を拭ふいて済まして云いました。
 (『セロ弾きのゴーシュ』より)

そんなこんなでとりあえず駅を出たので、荷物を宿に預けて…と思ったんですが、それらしきものが…あれ?ない?!ww一本道だったはずなのに!といってうろうろ…それらしき建物をみつけて近寄ってみたら違う、なんてコントを一通りしたうえでなんとかケンジの宿へ。
おばちゃんたちがとても気さくで愉しかった♪
あと、ヒバのお風呂がよかったです(^^)

さて荷物を預けたら、まずは徒歩圏内の賢治施設へ。
賢治記念館、童話村、イーハトーブ館、ポラーノの広場、山猫軒は隣接しており、いずれも宿からも新花巻からも遠くないのです。
ただ、賢治記念館があるのは勾配のきつい山の上で15分くらい歩くからと童話村の警備のおばちゃんに言われ、童話村から無料のシャトルバス(といっても普通のバスでしたwちなみにいつも運航してる訳ではないようです)に乗っていきました。


賢治記念館。
まずはやはりここから行くのが筋だろう、ということでここに。残念ながら写真撮影はできず。
内容としては賢治概論的な部分が強く、賢治の一生、宗教の話、科学の話、農業技術者としての話などなどさまざまな面についてひととおりの説明をしている、といったところ。賢治愛用のチェロも展示されています。
どうでもいいですが玄米四合は展示せんでもいいような気もww
流石、庭にはやまなしが植えられていましたww
ただ、まだ冬芽しかなかったので植物に疎い私にはちょっと詳しいことはわからず(泣)
なお、賢治の描いたやまなしには諸説あるとのこと。

 なるほど、そこらの月あかりの水の中は、やまなしのいい匂いでいっぱいでした。
 (『やまなし』より)

この日は時間もあまりなかったので、回ったのはもう1か所――童話村。
童話村はもっと家族連れとか向けの体験型の施設でした。
時間もなかったのでちょっと駆け足。
後半では人形展をやっていました。

この時点でもう17時過ぎと結構いい時間だったので、近くにあったお蕎麦屋さんなめとこ山庵で早めの夕餉。
山菜の天麩羅がとっても美味しかったです♪(というか花巻で一番凄いのは、行く店行く店一軒たりとて外れの店がなかったこと)

夜は21時過ぎごろから、期待していた星空を観に行きました。
尤も、私のカメラの腕ではさっぱり収められませんでしたが(苦笑)
しかし見える見える。ちょっと鬱陶しいぐらいに明るい上弦の月があっても、かなり暗い星まで肉眼で見ることができました。
有名だけれども必ずしも東京では見やすくはないからす座やらかんむり座やら、ヘラクレス座やらといった星座を見ることができて個人的には大満足でありました。
今度は夏、おそらく『銀河鉄道の夜』の舞台となっている時期に足を運ぶことができたらと思っています。

 いきなり眼の前が、ぱっと明るくなって、まるで億万の蛍烏賊の火を
 一ぺんに化石させて、そら中に沈しずめたという工合、またダイアモンド
 会社で、ねだんがやすくならないために、わざと穫れないふりをして、
 かくして置いた金剛石を、誰れかがいきなりひっくりかえして、
 ばら撒まいたという風に、眼の前がさあっと明るくなって…
 (『銀河鉄道の夜』より)


 【旅宿第二日】

この日はこの旅のメイン・イベントである石鳥谷での散策をしました。

朝、宿を出るときにおばちゃんの一人に今日はどこにと訊かれて、「石鳥谷に、葛丸川を見に」と言ったら、東京の人は何を考えているのかわからんねえという表情をされてしまいましたが、そういう場所です笑。
なんでまたそんなところに行こうと思ったかと言えば、ここが僕の大好きな『楢ノ木大学士の野宿』の舞台だから。

 例の楢ノ木大学士が
 「ふん、この川筋があやしいぞ。たしかにこの川筋があやしいぞ」
 とひとりぶつぶつ言いながら、
 からだを深く折り曲げて
 眼一杯いっぱいにみひらいて、
 足もとの砂利をねめまわしながら、
 兎のようにひょいひょいと、
 葛丸川の西岸の
 大きな河原をのぼって行った。
 (『楢ノ木大学士の野宿』より)

今回はぜひこの川筋と思われる場所に立ってみたかった。
そして、この野宿第一夜に登場する重要な登場人物たちにも“会って”みたかったのです。

 向うの黒い四つの峯は、
 四人兄弟の岩頸で、
 だんだん地面からせり上って来た。
 楢ノ木大学士の喜びようはひどいもんだ。
「ははあ、こいつらはラクシャンの四人兄弟だな。よくわかった。
 ラクシャンの四人兄弟だ。よしよし。」
 (『楢ノ木大学士野宿』より)

ここで登場するラクシャンの四人兄弟、即ち4つ並んだ山の峰に“会って”みたかった。という訳で、この一日ハイキングを旅程に入れたのです。

石鳥谷の駅から西へひたすら歩きます…どこまでもどこまでも。ずうっと一緒に行こうね。
道中…えんえんと電信柱が続くどこまでもどこまでもまっすぐな道…
ちょうどこんな感じ笑。

 「ドッテテドッテテ、ドッテテド、
 でんしんばしらのぐんたいは
 はやさせかいにたぐいなし
 ドッテテドッテテ、ドッテテド
 でんしんばしらのぐんたいは
 きりつせかいにならびなし。」
 (『月夜のでんしんばしら』より)

町のあちこちで水仙も咲いていました。
この冬の話の舞台が水仙月というのにも当然意味があるはずですが。。。

 さあしつかりやつてお呉れ。今日はここらは水仙月の四日だよ。
 (『水仙月の四日』より)

しかし、暫く行くと遠くに待望のラクシャンの四人兄弟!感動!
岩頸というにはかなりなだらかではあるんですが、何はともあれ四人兄弟です!
この四人兄弟、四人が四人してかなりキャラクターの立った人たちで、一度読むと忘れられない存在感があるのですが、お昼ということもあって、静かにしておられました(笑)どんなやつらかはどうぞ『楢ノ木大学士の野宿』をお読みになってください。
で、この時感動して写真大量に撮ったんですが、気づいてなかっただけで結構実は遠くから見えておりました(^^;
(ちなみに、このときはこれが観れて舞い上がってたんですが、ラクシャンのモデルも諸説あり、あくまでその一つを取ると、というものです。)

残すは葛丸川!
そこからまた暫く歩いて行くと葛丸川渓谷に近づいてきました。
僕の当初の予想では、そのあたりからも四兄弟が見えるのではないかと思っていたのですが、これが山に隠れて全く見えない(苦笑)あの四兄弟が見えなければあの話は成立しないのと、葛丸川渓谷までの山道がまだまだありそうだったこともあり、早々に予定を変更して葛丸川沿いに下っていくことにしました。
と言ってもこの時点ではまだ葛丸川と平行した道を通っており、葛丸川に合流していなかったので、まずはそちらへ。しかし。。。

意外と広い&意外と護岸されちゃってる(泣)
ダムやなんかがあるので当時と景観が違うとは聞いてましたが、あすこまでがっちり護岸されちゃってるとぐうの音も出ません(>_<)
しかも護岸されていないところの近くは逆に全く道らしい道がなくて、道沿いに行けないという…ちょっとがっくしでした。。。

けど、“声はすれども姿は見えず”の代表格のウグイスさんと3mぐらいの距離で会うことができました!あまりの藪の中で写真は撮れませんでしたが、これはワクワクしたww

できるかぎりで川沿いに歩いていると…あった!あったーーー!!!
葛丸川の河畔から、結構距離はありますが、あれはまごうことなき四兄弟!!
楢ノ木大学士が歩いたと思われる、葛丸川から四兄弟がよく見える場所はちゃんとあったんです!
やー、これは嬉しかった!思わずにこにこしてしまいました(笑)
もちろんここ以外にも同じような場所はあるかもしれませんが、ひとまずそういった場所が実在することを、自分の脚で確認することができたのが、何より嬉しかったです。
今回の旅のハイライト的な瞬間でした。

尤も、このあとかなりへばってしまって(たぶん脱水)、ひいひい言いつつもつれに助けられて、この日の最終目的地の酒匠館までたどり着いたわけなのですが(苦笑)

本編とは外れますが、ここはいろいろ呑めるし酒造りの文化にも触れられるみたいだしいろいろ呑めるしつまみもあるしいろいろ呑めるしおススメです笑。

この後は花巻の駅前の呑み屋で一献やって(カジキとエンガワの刺身が絶品でした!)、帰った宿で盛大な日焼けを指摘されつつばたんきゅーでした。

(続く)
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