オペラなひと♪千夜一夜 ~第十三夜/“歌う俳優”の伝説~2012-10-10 Wed 01:28
さて、漸く次のクールです(^^;
今回はひとつの時代を代表するような歌手を特集していきたいと思います。炎上しないと良いな……というか書けるのかな(笑) ********************* このテーマに沿うようなバス歌手と言えば、やはりこのひとでしょう。 ![]() Boris Godunov フョードル・シャリャピン (Feodor Chaliapin, Фёдор Иванович Шаляпин) 1873~1938 Bass Russia はい、ほぼ100年前のひとですね(^^; ちょっと大昔過ぎて俎上にあげるのはどうかという意見もありそうですが……やはりオペラを語るうえでは欠かせないと思いますので。 当たり前ですがラフマニノフとかマスネー、或いはプッチーニなどは同時代人です(笑) М.П.ムソルグスキーの『ボリス・ゴドゥノフ』や『ホヴァンシナ』、Н.А.リムスキー=コルサコフ『プスコフの娘(イヴァン雷帝)』などの露ものがいまに至るまでレパートリーとなっているのは彼の功績です。また『タイス』の“瞑想曲”で有名なJ.E.F.マスネーは彼のために『ドン・キショット(ドン・キホーテ)』という作品を書いてますし、同じ『ドン・キホーテ』を題材にした映画にも主演しています。 それほどのひとなので殆ど伝説的な逸話もたくさん残っています。 例えば彼は100年も前の人なのにかなりの量の録音が残っているのですが、一方で録音を嫌ったと言われています。というのも、録音をすることによって歌手の命である声を失うと言う迷信が当時はまだ汎く知られており、彼もそれを信じていたと言うのです。だから彼は必ず十字を切ってからでないと録音をしなかったとか。 多くの方にとって見ると「シャリャピン・ステーキ」とか「~~のシャリャピン風」という料理の名前のイメージの方が強いかもしれませんが、これは日本でしか通じません(^^;というのも来日した時に入れ歯の不具合(このへんが割といろんな情報が飛び交っていて虫歯とか歯槽膿漏なんていう説もあります)のために当時の帝国ホテルの料理長が考案したのが一般に「シャリャピン・ステーキ」といま日本で言われているものだからです。 <演唱の魅力> さて100年もたった今も彼が素晴らしい歌手として認識されているのは何故でしょう。伝え聞くところによれば彼はもちろん卓越した美声を持っていたそうです。しかし流石に今現在残っている録音を聴く範囲では、その真価を知ることは難しいように思います。 しかし100年前の録音を聴いても我々が彼の演唱で感動をするのは間違いないことでしょう。それは恐らく彼のもうひとつの特色“歌う俳優”とまで言われた卓越した演技力に拠るものだと言えるのではないでしょうか。録音を聴いているだけでもその演劇的な表現力には圧倒されます。あたかも我々の目の前にボリスやドン・キショット、或いはメフィストフェレがいるのではないかと感じさせるような演唱。それはときに楽譜に書かれていることから大きく逸脱しているように思います。言ってしまえばそれは禁じ手な訳ですが、それでも妙に納得させられてしまう。それがやはりこのひとの凄いところなのかなと。 完全に「演技派」としての部分に重点を置いた紹介になってしまいましたが、もちろんそれは彼の秀でた歌唱技術を下敷きにしたうえでのものです。やっぱり息も凄く長いし、フレージングなんかも絶妙。これほど歌えるひとが敢えて崩して演技をしていく、そのギリギリの匙加減が多くの人を感動させていくのでしょう。 彼の亜流みたいな歌手はたくさんいますが、彼だからこそできることをを真似したところで何となる、と思うことしばしばです。 <アキレス腱> 前提条件として録音は良いとは言えませんので、それに耐えられないと先に進めません(苦笑) 次いでここまでも書いている通りかなり歌い崩したような表現をするので、それがその曲を表現するうえで本当に適切なのかは――それを聴いて感動するかどうかとは全く別口の問題として――考えてみなければいけない問題なのではないかと思います。マリオ・デル=モナコのスタイルを良かれとするひとと時代遅れとするひとたちがよく喧嘩になりますが、ある時代に良いとされた在り方が永久に不滅であると言うことはあり得ない筈ですから、彼の記録についても冷静に捉えることが必要でしょう。 <音源紹介> ・ボリス・ゴドゥノフ(М.П.ムソルグスキー『ボリス・ゴドゥノフ』) ・ドン・バジリオ(G.ロッシーニ『セビリヤの理髪師』) ・メフィストフェレス(C.F.グノー『ファウスト』) ・ファルラーフ(М.И.グリンカ『ルスランとリュドミラ』) ・ガーリチ公爵ヴラジーミル・ヤロスラヴィチ(А.П.ボロディン『イーゴリ公』) >ヒストリカルな時代の人ではありますが、意外と録音は残っています。と言っても、全曲はありませんが(^^;探すと結構アリア集とかも出ていますが、一通りの彼の藝を楽しめるという意味では『フョードル・シャリアピンの芸術』というCDで上記のすべてが聴けるのでおススメです。彼の“歌役者”としての本領を間違いなく最も発揮しているボリス、本当にこのひと録音怖がったのか疑いたくなるぐらい楽しく歌っているバジリオ、諧謔味たっぷりのメフィストに、余裕綽々で難曲を歌いこなすファルラーフ、豪快なガーリチ公と聴き較べて楽しむにはもってこいの1枚です♪ スポンサーサイト
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コメント
Basilio様
シャリアピンはおっしゃる通り表現力が卓越していますね。ゴドゥノフといったオペラアリアはもちろん、蚤の歌や黒い瞳、ヴォルガの舟歌といった歌曲でも優れたフレージングで魅了されます。 ただ現代の価値観で言えば、やや感情過多で野暮ったい部分があることは否めない気がします。その点ではシャリアピンの次世代のロシア系バスのマルク・レイゼンの方が優れている気がします。 ちなみにシャリアピンの声の美しさは確かに録音の古さのために分からないところがありますが、本場ロシアではウクライナ出身のバス歌手アレクサンドル・オグニフツェフがシャリアピンと声(と容姿も)が似ているとのことです。 オグニフツェフによる黒い瞳 https://www.youtube.com/watch?v=XHkPboQ8O2k オグニフツェフは70年代に大きく歌唱力を落としているそうですので、50∼60年代の録音を聴く必要がありますが、確かにシャリアピンの声と似ているように思えます。一般的なイメージのバス歌手のような男臭い声ではなく、響きが高い品のある美声であるかと思います。
引続きなかなか時間がとれず、新しい記事のアップができなくてお恥ずかしいところです。それでもだいぶ書いたのですが。
シャリャピン、言ってももう100年以上前の歌手ですからね。聴く側のこちらの趣味もチューニングしながら聴く必要はどうしてもあろうかと思っています。レイゼンも素晴らしいバスだと思うのですが、まだ僕は十分に聴き込めていないところがありまして、少し時間をかけて取り組もうと思っているところです。 オグニフツェフはヴィシュニェフスカヤとの共演が多い(自伝にも出ているとか)バスだったと記憶していますが、シャリャピンが彼に近いのであれば、やはりどちらかというと高い響きのある歌手だったのでしょうね。彼の歌も僕は好きですが、気に入っている音源も割とバリトン寄りの輝きを感じるように思います。 2022-07-19 Tue 18:17 | URL | Basilio [ 編集 ]
バジリオ様
シャリアピンは1873年生まれですからねえ。確かに古典文学を読むのと同じで大目に見るべきところは大目に見るべきでしょう。 ただ、カルーソやバッティスティーニ、ルッフォもそうですが、19世紀生まれの歌手なのに現代の我々を感動させるのはまったく驚嘆です。ゴドゥノフやメフィストフェレスもそうですが、個人的にはヴォルガの舟歌が一番好きですね。船曳人夫の労働の苦しみが伝わる歌唱で、まさしくイリヤ・レーピンの絵画をそのまま歌にした絶唱と感じます。たぶんレーピンの絵画をシャリアピン本人も参考にしたのでしょう。 ヴォルガの舟歌でシャリアピンを超える歌唱は無いですね。この歌に関してはレイゼンもクリストフも赤軍合唱団もシャリアピンにはかないませんね。 レイゼンは素晴らしい歌手なので是非!もし余裕がございましたら、記事を書いていただければ幸いです。どこがアキレス腱か気になりますので笑。 ちなみにシャリアピンと同世代でウクライナ出身ユダヤ人歌手のlev sibiryakovという名バス歌手もいます。シャリアピンと異なり演劇的な表現力というよりは純粋な歌唱スキルによる表現に優れた歌手かと思います。 自伝によるとオグニフツェフはヴィシネフスカヤとちょっとしたロマンスがあったんですよね。ヴィシネフスカヤが絶賛するように素晴らしい歌手であったと思いますが、彼の悲劇は同世代にイヴァン・ペトロフがいて録音をほとんど持っていかれたんですよね…。ペトロフ相手じゃオグニフツェフといえども分が悪いでしょうし仕方がないのでしょうが…。 オグニフツェフもそうですが、ロシアやウクライナあたりのバス(バッソカンタンテ)歌手は一般的なイメージと違って響きは高いし高音にも強いですよね。それこそ仰るようにバリトンと見紛うぐらいに。レイゼンやピロゴフ、ペトロフ、ネステレンコのボリショイ歴代のバス歌手はまさしくそうであるように思えます。マキシム・ミハイロフのようなバッソプロフォンドやオクタビストとなると少し違いますが。 ロシア圏のバス歌手のイメージはシャリアピン以外ですと、クリストフやチャンガロヴィッチといった西側で積極的に歌った東欧圏のバス歌手で作られているように思えますが、どうも東欧圏のバス歌手とロシア圏のバス歌手とでは歌唱や声に微妙に違いがあるように思えます。意外とロシアの名バス歌手は洗練されている歌手も多いような気がします。
>シャリャピン、カルーソやバッティスティーニ、ルッフォ……
その時代の人々を熱狂させた何か核のようなものはあるんでしょうね。同じぐらいの世代ですとナッツァレーノ・デ=アンジェリスなども圧倒されます。趣味もあるのでしょうが、男声の方がヒストリカルでも魅力を感じる気がします。ヴォルガの舟歌、確かに素晴らしいですね。あの1曲の中にひろがる荒涼とした風景はまさしく彼の藝だと思います。 >レイゼン いやあ、実は公平を期すために書いていますがアキレス腱で取り上げるネタには毎度苦労しています。どうしても自分が気に入った歌手を取り上げるものですから。いずれにせよもう少し勉強させてください笑。シビリャコフというバスは初めて聴きましたが、うちにある露国のバスの合集に出ているかも。あとで探してみます。 >オグニフツェフ、ペトロフ ペトロフはまた特別な声を持った歌手ですよね。若い時から小さな役(モンテローネ伯爵や海王)で起用された理由もよくわかります。確かに彼に較べると分が悪いというか、オグニフツェフはちょっと錆びた地味な色調の声には思いますね。それでもダルゴムイシスキーの『エスメラルダ』のクロードのアリアなど、忘れがたい歌唱と思います。ルビンシテインの悪魔なども似合ったんじゃないかと想像するところです。 >クリストフ、チャンガロヴィッチ どちらも大好きな東欧の名手ですが、おっしゃる通りシャリャピンには似ているかもしれないけれど露国のカラーとは異なるように思います。というかこのあたりの大芝居をする歌手たちによるイメージがボリスのイメージを作り、それが露国のバスのイメージに繋がっているのかもしれません。 2022-07-20 Wed 18:07 | URL | Basilio [ 編集 ]
バジリオ様
ナッツァレーノ・デ=アンジェリスは良いですよね!私も好きです。あの時代の名歌手の魅力は独特ですよね。今のグローバル化されたオペラ歌手からは感じ取られない何かがあると感じます。そして古いレコードは男声は良く録音されていますが、女声はあまり上手く録音されていない傾向はありますね。 毎回アキレス腱は楽しみにしております!世間一般の評論は絶賛が多くてで物足りませんので笑 オグニフツェフは確かに錆びた渋い声で、ある意味シャリアピンの旧世代的声だったのかもしれませんね。ペトロフは当時の新世代的な声だったのかもしれません。オグニフツェフ→ペトロフ→ネステレンコで一つの時代的変化が成立するように思われます。 オグニフツェフの悪魔の役は良さそうですね。オグニフツェフと声がやや似ているレイゼンが「悪魔」のアリアを上手く歌っているので、オグニフツェフも多分良い歌唱をしたでしょう。録音があれば良かったのですが…。 クリストフ、チャンガロヴィッチはともに良い歌手と思いますが、やはりロシアとは少し違う気がしますね。野性味の魅力は東欧勢の方が強いと感じます。確かにロシアバスと言えばボリスで、冷戦下でボリスを西側で歌って大手レーベルでレコードやCDが出回ったのが東欧のバス歌手達なので、ロシアンバス=東欧系バスのイメージが付くのは仕方ないのかもしれません。 一般人が持つ「ロシア=素朴」的なイメージと合致したのも東欧バス歌手がロシアンバスの象徴になった要因かもしれません。
>ナッツァレーノ・デ=アンジェリス
ああ!お好きでしたか!それは良かったです^^一癖あるので好き嫌いは分かれそうに思っていました。 それでもメフィストやモゼを当たり役にしたというのがよくわかるカリスマのある声だと思います。 >アキレス腱 いやはやお恥ずかしいかぎりです。ただ、手放しで絶賛になってしまうと何を楽しんでいるかも整理できなくなってしまう気がするので努力しているところです。 >オグニフツェフ→ペトロフ→ネステレンコで一つの時代的変化が成立する 非常に興味深い分析だと思います。いずれも高い響きに魅力のあるバスですが、なんというか声のシルエットが変わってくる感じがありますよね。 >悪魔 意外といい全曲録音がないんですよね。アレクセイ・イヴァノフの苦渋の感じとかはいいんですが、しっかりしたバスで聴きたいとなると……レイゼンのアリアは素晴らしそうです! >東欧のバス クリストフと同じブルガリアでもアリエのような端正な感じの歌手はいますが、基本的には地味な扱いですよね(彼のノーブルな声は大好きなのですが)。スラヴやバルカンの声や歌にある種の「野卑さ」みたいなものがやや過剰に求められていたのかもしれないとも思います。 2022-07-21 Thu 19:19 | URL | Basilio [ 編集 ]
バジリオ様
アンジェリスはカリスマ的ですよね。ピンツァとはまた全然違うタイプの魅力があります。フィリッポのアリアも良いですよ! やっぱり歌手の良い点のみならずダメな点も指摘する方がより良く鑑賞していると思います。アキレス腱頑張ってくださいませ! だんだんソ連圏も西側のバスの要素を取り入れてきた感じがありますよね。ネステレンコなんて本当に何でも器用にこなせますからね。(ただネステレンコの粘り気のある声はシャリアピンやピロゴフと共通している気がしますね。この粘り気はイタリアのバス歌手にはあまり見られませんね。) アブドラザコフとなるともうシャリアピンっぽさはあまり見られませんね。ただ響きが高くて高音に強いあたりが正統なロシアンバスという感を受けますが。 バスの現代化はウクライナでもコチェルガが出てきたりしていますので、ソ連全体で起こったのかもしれません。一因はフルシチョフの雪解けでイタリア声楽界との交流が再開したことでしょうね。(ただウクライナのバス(キエフ音楽院系)はそもそもシャリアピン一色じゃない傾向があります。レイゼンやピロゴフと同世代のウクライナバスのイワン·パトルジンスキーやボリス·グミリャ、ミコラ·チャスティはシャリアピンとはやや異なる気がします。) もちろんヴェデルニコフやウクライナのドミトロフナチュークのようなローカル色豊かなバス歌手もまだまだ活躍していたやうですが。 ドミトロ·フナチューク https://www.youtube.com/watch?v=E12qmSsVdl8 イワンパトルジンスキー https://www.youtube.com/watch?v=Botx2HZbR84 ミコラチャスティ https://www.youtube.com/watch?v=rtDRyNyMLcw チャスティの声は少し鼻にかかった感じがシャリアピンに似ていますが、シャリアピンと違い歌い崩しはありませんね。この歌はベートーベン版とはいえ蚤の歌で歌い崩しそうなのですが。 ルービンシュタインの悪魔はなかなか全曲録音がありませんね。チャイコフスキーやムソルグスキーと比べると西側に知られているというわけでもないからでしょうか。 レイゼンの悪魔アリアのリンクをはっておきます! https://www.youtube.com/watch?v=GV6ZcM0a6jA ただ、このアリアはリシツィアンが一番だと思います。 多分西側はロシアに対する偏見があって、それで東欧のバス歌手にそういう要素を求めたのでしょうね。私も東欧の歌手はそこまで詳しくないので、元々東欧の歌手が表現力重視の大胆な歌唱を持ち味としていたのか、それとも西側のオペラ界がそういう要素を東欧の歌手に要求したのかが分からないところが歯がゆいですね。東欧は名バス歌手の宝庫であることは違いないですが。 ただ、アリエと同様洗練された東欧バス歌手で名実ともに一番なのはギャウロフですが、ギャウロフはモスクワとレニングラードの音楽院で学んでいたんですよね。これは東欧とロシアのバス歌手の違いを考える上で重要な意味があると思います。 若かりし頃のギャウロフ(おそらくモスクワやレニングラード音楽院を修了した直後) https://www.youtube.com/watch?v=zOw1Vxq3ENk この録音を聞くと若い頃のギャウロフはイワンペトロフの歌唱と似ている気がします。
>デ=アンジェリス
フィリッポ、素敵ですよね^^実は最初はフィリッポを聴こうと思ってアリア集を入手しました。 >アキレス腱 精進いたします……!笑 >ネステレンコ そうですね、下で出てきたアリエもそうですがスラヴらしい粘りというのはあるのかもしれません。 あの声でドゥルカマーラなどやってしまうのはちょっとビックリですが、声の輝きで聴かせてしまうという…… >コチェルガ この人も大好きなバスでいつ登場させようかと思っています笑。確かに国際的な活躍はしていますし、シャリャピンとは違う印象ですが、それでも地方色のあるバスのように感じます。そしていつもながらウクライナのバスにお詳しいですね、そのあたりの時代はまだまだ追いかけ切れておりません(流石にグミリャはいくつか聴きましたが!) >悪魔 ボーイトのメフィストではないですがバスとしてはやりがいのある役だと思うのですけどね。レイゼン、ありがとうございます。このアリアは実はアリエの悪魔曲集のものが個人的お気に入りですがyoutubeに落ちていないんですよ…… ちなみにオグニフツェフは別のロマンツェを残してました。こちらもいい曲ですよね https://www.youtube.com/watch?v=bLnpL2PSb8Q >ロシアに対する目 全く同感ですね。実はブルガリアのオペラ歌手名鑑のような音源を持っているのですが、聴いてみるとこちらも思いのほか洗練された歌手が出てきます。が、やはり人気があるのはパワー系の人ですし、自分自身もそういうものを求めて接している気はしますね。 >ギャウロフ ギャウロフについて言えば洗練されている、野性味あふれた大胆な歌といった単純な切り分けはできないように思っています。ベル・カントやヴェルディのレクイエム、チャイコフスキーの歌曲などでは極めて音楽的で端正な歌を聴かせている一方、同じ伊ものでもロッシーニのバジリオやメフィスト―フェレ、露ものでいくならコンチャクですとかお気に入りだったフレンニコフの酔っぱらいの歌では豪快そのものといった風情ですし、年齢による声の衰えのあった人でもあるので、時期によって自分の魅力の引き出し方をはっきり変えていると感じます。とにかく抽斗が多い。この人についてはちょっと偏った語りになる自覚はあるのですが、それでも傑出していることは確かではないかと思うのです。 2022-07-22 Fri 18:57 | URL | Basilio [ 編集 ]
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