Don Basilio, o il finto Signor

ドン・バジリオ、または偽りの殿様

オペラなひと♪千夜一夜 ~第十三夜/“歌う俳優”の伝説~

さて、漸く次のクールです(^^;
今回はひとつの時代を代表するような歌手を特集していきたいと思います。炎上しないと良いな…っていうか書けるのかな(笑)

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このテーマに沿うようなバス歌手と言えば、やはりこのひとでしょう。

Chaliapin2.jpg

フョードル・シャリャピン
(Feodor Chaliapin, Фёдор Иванович Шаляпин)
1873~1938
Bass
Russia

はい、ほぼ100年前のひとですね(^^;
ちょっと大昔過ぎて俎上にあげるのはどうかという意見もありそうですが…やっぱりオペラを語るうえでは欠かせないと思うので。
当たり前ですがラフマニノフとかマスネー、或いはプッチーニなんてひととは同時代人です(笑)

М.П.ムソルグスキーの『ボリス・ゴドゥノフ』や『ホヴァーンシナ』、Н.А.リムスキー=コルサコフ『プスコフの娘(イヴァン雷帝)』などの露ものがいまに至るまでレパートリーとなっているのは彼の功績です。また『タイス』の“瞑想曲”で有名なJ.E.F.マスネーは彼のために『ドン・キショット(ドン・キホーテ)』という作品を書いてますし、同じ『ドン・キホーテ』を題材にした映画にも主演しています。

それほどのひとなので殆ど伝説的な逸話もたくさん残っています。
例えば彼は100年も前の人なのにかなりの量の録音が残っているのですが、一方で録音を嫌ったと言われています。というのも、録音をすることによって歌手の命である声を失うと言う迷信が当時はまだ汎く知られており、彼もそれを信じていたと言うのです。だから彼は必ず十字を切ってからでないと録音をしなかったとか。

多くの方にとって見ると「シャリャピン・ステーキ」とか「~~のシャリャピン風」という料理の名前のイメージの方が強いかもしれませんが、これは日本でしか通じません(^^;というのも来日した時に入れ歯の不具合(このへんが割といろんな情報が飛び交っていて虫歯とか歯槽膿漏なんていう説もあります)のために当時の帝国ホテルの料理長が考案したのが一般に「シャリャピン・ステーキ」といま日本で言われているものだからです。

<ここがすごい!>
さて100年もたった今も彼が素晴らしい歌手として認識されているのは何故でしょう。伝え聞くところによれば彼はもちろん卓越した美声を持っていたそうです。しかし流石に今現在残っている録音を聴く範囲では、その真価を本当に知ることは難しいように思います(もちろん聴こえる限りでは素晴らしいと思うのですが)。

しかし100年前の録音を聴いても我々が彼の演唱で感動をするのは間違いないことでしょう。それは恐らく彼のもうひとつの特色“歌う俳優”とまで言われた卓越した演技力に拠るものだと言えるのではないでしょうか。録音を聴いているだけでもその演劇的な表現力には圧倒されます。あたかも我々の目の前にボリスやドン・キショット、或いはメフィストフェレがいるのではないかと感じさせるような演唱。それはときに楽譜に書かれていることから大きく逸脱しているように思います。言ってしまえばそれは禁じ手な訳ですが、それでも妙に納得させられてしまう。それがやはりこのひとの凄いところなのかなと。

完全に「演技派」としての部分に重点を置いた紹介になってしまいましたが、もちろんそれは彼の秀でた歌唱技術を下敷きにしたうえでのものです。やっぱり息も凄く長いし、フレージングなんかも絶妙。これほど歌えるひとが敢えて崩して演技をしていく、そのギリギリの匙加減が多くの人を感動させていくのでしょう。

彼の亜流みたいな歌手はたくさんいますが、彼だからこそできることをを真似したところで何となる、と思うことしばしばです。

<ここは微妙かも(^^;>
前提条件として録音はかなり劣悪です(^^;それに耐えられないと先に進めません(苦笑)

次いでここまでも書いている通りかなり歌い崩したような表現をするので、それがその曲を表現するうえで本当に適切なのかは――それを聴いて感動するかどうかとは全く別口の問題として――考えてみなければいけない問題なのではないかと思います。マリオ・デル=モナコのスタイルを良かれとするひとと時代遅れとするひとたちがよく喧嘩になりますが、ある時代に良いとされた在り方が永久に不滅であると言うことはあり得ない筈ですから、彼の記録についても冷静に捉えることが必要でしょう。

<オススメ録音♪>
・ボリス・ゴドゥノフ(М.П.ムソルグスキー『ボリス・ゴドゥノフ』)
・ドン・バジリオ(G.ロッシーニ『セビリヤの理髪師』)
・メフィストフェレス(C.F.グノー『ファウスト』)
・ファルラーフ(М.И.グリンカ『ルスランとリュドミラ』)
・ガーリチ公爵ヴラジーミル・ヤロスラヴィチ(А.П.ボロディン『イーゴリ公』)
>ヒストリカルな時代の人ではありますが、意外と録音は残っています。と言っても、全曲はありませんが(^^;探すと結構アリア集とかも出ていますが、一通りの彼の藝を楽しめるという意味では『フョードル・シャリアピンの芸術』というCDで上記のすべてが聴けるのでおススメです。彼の“歌役者”としての本領を間違いなく最も発揮しているボリス、本当にこのひと録音怖がったのか疑いたくなるぐらい楽しく歌っているバジリオ、諧謔味たっぷりのメフィストに、余裕綽々で難曲を歌いこなすファルラーフ、豪快なガーリチ公と聴き較べて楽しむにはもってこいの1枚です♪
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