Don Basilio, o il finto Signor

ドン・バジリオ、または偽りの殿様

オペラなひと♪千夜一夜 ~第廿夜/沈黙は金~

今回は記念すべき第20回目の切り番なので、またちょっと普段と違うことを。。。

“Opera”を日本語に訳すと一般的には「歌劇」になります。
これは要するに役者が演技のみならず音楽、多くの場合歌によってその役の心境であるとか情景であるとかを表現するからです。

ところが、これが必ずしも正しいかというとそうではない(^^;

世の中にはオペラに登場するにもかかわらず、歌わないと言う役もたくさんあるのです。

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Chernomor

そもそもオペラと十把一絡げに言ってしまっていますが、そのなかにはいろいろなものが含まれています。
オペラ・セリア、オペラ・セミ・セリア、オペラ・ブッファ、グラントペラ、オペラ・コミーク、ジングシュピール、楽劇、ヴェリズモ・オペラ、それにより広く捉えるならサルスエラ、オペレッタ、或いはミュージカルと呼ばれるものも場合によってはオペラと呼んでしまっても良いかもしれない。これらはさまざまな基準で切り分けられているので、こうやって並べるのは必ずしも正しいかどうかは微妙ですけどね(苦笑)

ま、それはさておきこれらのなかには科白全てに歌が付いているものももちろんありますが、心境を吐露したりするアリアや愛を語らう二重唱といった部分にこそ音楽は付いているものの、具体的に物語を展開させていくような会話の部分は科白だというものも珍しくありません。
例えばジングシュピールやオペラ・コミークなどはそうですし、オペレッタやミュージカルになるともっとそういうものが多い。

そんななかでも重要な役ならば大抵歌のひとつもついているものなのですが、例外も実はたくさんいるのです。
そういった役は多く本業の役者さんがやったりバレエ・ダンサーがやったり、或いは子役がやったりします。
今回は、そんな役をちょっとご紹介。

W.A.モーツァルトのジングシュピール『後宮からの逃走』に登場するトルコの太守セリムもそんな役柄のひとつ。
『後宮からの逃走』のあらすじ自体はちょっと検索すれば出てくるので見ていただければと思うのですが、主要な登場人物は6人居て、彼もその一人として物語の展開で重要な役割を果たします。
なのに、なのに、です。
このひとだけ一切歌がない(^^;
報われないコンスタンツェへの愛を嘆く一節があったりしても良いようなものなのに!
しかもこの物語の決着をつけるのは実は彼なんですが…何とも報われない(笑)
しかし、彼の登場のときにかかる音楽というのはあります。
言ってしまえば彼のテーマ、モティーフなんですが、彼の、というよりはひょっとすると彼の居る後宮の、と言った方が正しいかもしれません。

* * * * *


一方で歌わないうえに特にテーマ音楽もなく、そのうえあらすじ上は全然重要じゃないけれども、もの凄く印象的で、或る意味その夜の出来を象徴するのはその人かもしれない何ていう役もあります。
J.シュトラウスⅡ世のオペレッタ『蝙蝠』に登場する看守のフロッシュです。
上のセリムとは違ってホントにあらすじしか書いていない本にはたぶん出てこないでしょう(^^;第3幕の牢獄の場面で酔っ払って登場し、一発喋りをぶっ放して終わると言うただそれだけの役。
でも、それがやたらオカしい(笑)
恐らく独語ができればもっと面白いのだろうとは思うのですが、巧いひとがやれば日本語訳で見てるだけでも面白い!

* * * * *

さてここまでは歌わないものの科白はあるよ、という役達でした。
に対して今度は一切歌いもしませんよ、という役(笑)
まずはD.F.E.オーベールのグラントペラ『ポルティチの物言わぬ娘』のフェネッラです。
もう題名見てビックリですよね、オペラの主人公、題名役が物言わぬ娘…ってそれじゃ歌えないじゃない!!っていう。
そう、このフェネッラという役、なんと主役なのにものが喋れないという設定で、結局物語の最後まで一言も発しません。CDの録音では必要なくなっちゃうんですね(^^;
ちなみにこの作品いまでこそマイナー作品の地位に甘んじていますが、グラントペラが流行った時代のパリではダントツの上演回数を誇ったとか。実際聞いてみるとかなりいい曲です。

* * * * *

もうひとつ、今度は悪役なのに全く科白がないという役です。
これは序曲が大変有名なМ.И.グリンカの『ルスランとリュドミラ』に登場するチェルノモールです。
この役、オペラの最初でキエフ大公の娘であるリュドミラをいきなり魔法で攫うというとんでもなく美味しい登場をし、4幕では子分たちを引き連れて怪しげな行進曲で登場、そのうえその子分達の踊る豪勢なバレエを眺めると言う贅沢なことをしておきながら、ルスランが登場すると一言も発することなくあっさりやられてしまいます。なんじゃらほい(^^;
ちなみにオペラ自体は5幕まであります。チェルノモール完全に添え物wwwまぁ、G.ロッシーニ『グリエルモ・テル(ウィリアム・テル)』の悪役ゲッスレルも音楽的には添え物ですが。。。

* * * * *

どうです?意外とあるもんでしょ(^^)
こういう役が力を発揮できるのも、或る意味ではオペラの総合芸術性を示しているのかもしれません。

意外と長くなっちゃった(^^;今回はこれぐらいで…
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