Basilio大学士の旅宿(その2)2012-09-26 Wed 22:18
わが親愛な楢ノ木大学士は
例の長い外套を着て 夕陽をせ中に一杯浴びて すっかりくたびれたらしく 度々空気に噛みつくような 大きな欠伸をやりながら 平らな熊出街道を すたすた歩いて行ったのだ。 (『楢ノ木大学士の野宿』より) 【旅宿第三日】 一緒の宿に居た3歳ぐらいの男の子が、すっごくかわいい子どもだったんだけれども、朝食とかで同じ部屋にいたり玄関で会ったりしたおねえさんばかりにひたすらハイテンションで話しかけていて、某春日部の英雄を思いだしました(笑) 私が洗面所で髭をあたっていたらそんな彼が全力で近寄ってきたので、何かと思ったら、 「○○くんは、○○くんは、さっきもいったんだけど、またお、お、おしっこにいきたくなったんです!」 !!!!! ええええええええええええええ俺に言わないで俺に言わないでいま口の周りまっちろけだしとかってばたばたしていたら後ろからお父さん現る。 「これこれ君は誰に何を言っているの?(汗」 私の腹筋は、朝から早々に崩壊したのでした(笑) 前の日がハードだったんで、この日は予定少なめ。 しかも朝出遅れティアヌスだったんで、まずは初日に行きそびれたポラーノの広場とイーハトーヴ館を拾うことに。 ポラーノの広場と呼ばれているのは、賢治が設計した花壇のある広場。賢治の多彩な才能には唸らされます。 実は花巻には何か所か賢治設計の花壇があるようですが、この日時計のある花壇はその中でも最も有名なもの。 このときはご覧のとおりどの花も咲いていてとても見事でした。 そう言えば、花巻ではたくさんのつめくさを見ましたが、これは水仙やらコブシやらとは違って自生でしょうね。肝腎のポラーノの広場のそばでは見ませんでしたが、露が当たって白く光っていました。 「ポラーノの広場? はてな、聞いたことがあるようだなあ。 何だったろうねえ、ポラーノの広場。」 (『ポラーノの広場』より) けだし音楽を図形に直すことは自由であるし、おれはそこへ花で Beethoven の Fantasy を描くこともできる。さう考へた。 (『花壇工作』より) もう1個花壇があったんだけど、斜面がきつくて遠目で見て辞めちゃったw そのあとはイーハトーブ館へ。 ここはある種のアーカイヴ的な施設。常設ではなさそうな展示も行ってました。 入り口には「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」笑。 賢治が使ったものかどうかはわかりませんが、同じころのレコードもありました。 賢治は大変なレコード・マニアで、当時の岩手でそのころの最前線の音楽だったR.シュトラウスの新譜を持っていたとか。。。 ここで結構稀覯本を売っていた(税率3%のやつとか)のでドカンと購入♪ 本当はもっと買いたかったんだけど、厳選して、ボランティアガイドの勉強になりそうな奴だけ。しかし積読がたまった。。。 ついでに買った『銀河鉄道の夜』のDVDが2番目に高かったって言うね。もはやついでじゃない(^^; 予定少なめと言いながらこのあと電車でちょっと距離のある羅須地人協会@花巻農業高校へ。 お昼がまだだったので入ったのが花巻空港近くの遠藤という蕎麦屋さん。 ここのお蕎麦がまた大変美味しかった! 薄味の出汁に潰した梅と薬味でいただいて、蕎麦を食べた後の出汁にそばつゆと別の薬味を入れて汁物みたいな感じで飲むという代物。 花巻空港駅からまっすぐです。あの辺に行く方は是非ぜひ^^ 花巻農業高校に行く途中で花巻空港を通ります。ってか真上を普通に飛行機が飛ぶ道を通るって言うww 途中でヒバリと3mぐらいの距離で遭遇しました!写真が撮りたかったんだけど、柵の向こうでかなり難しくて断念…そういえばイーハトーブにはヒバリもたくさんいましたよ~ さて、羅須地人協会@花巻農業高校です。 羅須地人協会に関する詳しい説明はここでは省きますが、さっくり言ってしまえば、賢治が理想とした農村での生活を実現し広めていくことを目的とした集い、と言ったところでしょうか。この建物自体は元々賢治の実家にあった離れで、ここを発信基地に活動が進められました。 いろいろな事情から現在では花巻農業高校同窓会が管理しているため、この建物自体も、現在では学校の敷地内にあります。 たまたま行った日には、建物の中では地元の有志?の方が賢治の映画を撮っていました。 非常に有名な仮病エピソードの場面のようでした。いずれにせよ、悪いんであんまりじっくりは見られませんでしたが(^^; 賢治の使ったマント、通称又三郎のマントもここに。 どっどど、どどうど、どどうど、どどう (『風の又三郎』より) そして再び花巻へ。 駅前のホテルの横にあったのは軽便鉄道の碑。 『銀河鉄道の夜』の汽車を巨大な機関車だと思っている人も結構いるようですが、本来は軽便鉄道なので、そんなに大きなイメージではないはずなんですよね。 モデルはここを通っていた汽車だったんでしょうか…。 ほんとうにジョバンニは、夜の軽便鉄道の、小さな黄いろの電燈のならんだ 車室に、窓から外を見ながら座っていたのです。 (『銀河鉄道の夜』より) ちょっと通りを進んで林風舎へ。 賢治のご親戚の方がやってらっしゃる喫茶店&雑貨屋さんです。 シックな佇まいがとても素敵♪展示はしていませんでしたが、所謂雨ニモ負ケズ手帳などもここで管理しているのだとか。ここも美味しかったです。 列車のダイヤの都合とかで思ったより早くこの日の予定が片付いちゃったんで、今回訪問する予定のなかった賢治の生家の場所も探すことに(ファンなんだかファンじゃないんだかww) しかし、ここで予想外のハプニング。 今回の旅程を書き込んだ地図を列車に落としたorzこれはちょっとがっくしきました…尤も、一番必要だったのは2日目だったし、駅前の観光案内用の地図を貰ってどうにか対処することに。 暫く行くと宮沢商会という事務所が。 なんとこの会社、賢治の母方のご親戚の方がご自分の土地でやってらっしゃるとのことで、ここには賢治が産湯をつかった井戸があるそうです。 そんな素敵な寄り道をしながら賢治の生家へ。 何度も改築されたため当時の面影がないというばかりでなく、ここは賢治の弟の清六さんのご家族が現在もお住まいで、見学はお断りということで、写真は控えました。 駅に戻ると、ちょうどよく見たかったからくり時計が動き出しました^^ 一見してモチーフが『銀河鉄道の夜』。 結構ちゃんとしてるので、花巻に行ったら観てみてね♪ この日に入った居酒屋よねしろは、蕎麦のやぶ屋の隣りですが、これがまた非常に美味しかった! やっぱり地方に来たら土地のものが食べられる店に入らないとだめですね。 【旅宿第四日】 この日はこれまで泊まっていた宿を撤退し、別の宿に行くということもあってバタバタして、再び出遅れティアヌスでした。 釜石線はとっくに出てしまっていたのですが、あんまり悠長する時間もなかったので、諦めてタクシーを拾い、本日一番の目的地へ。 夏休みの十五日の農場実習の間に、私どもがイギリス海岸とあだ名を つけて、二日か三日ごと、仕事が一きりつくたびに、よく遊びに 行った処がありました。 (『イギリス海岸』より) 川上の方を見ると、すすきのいっぱいに生えている崖の下に、白い岩が、 まるで運動場のように平らに川に沿って出ているのでした。 (『銀河鉄道の夜』より) 有名なイギリス海岸へ。 賢治は教師をしていた時にここの露頭で日本では初めての発見となるオオバタグルミの化石や、ウシの仲間の大量の足跡化石を発見しています。このときのエピソードがそのまま使われているのが『イギリス海岸』。『銀河鉄道の夜』に出てくるプリオシン海岸のエピソードはこの影響です。 …が、この露頭が見られるのは渇水期のみということで、普通に河原でピクニックになってしまったw けど、探してみれば露頭も結構ありました。いくつか小石を収集。 化石ではないものの割れたクルミがたくさんありました。 これ、結構あったんだけど何が食べてるんだろう…と思っていたら、つれが思いもかけぬ瞬間を目撃!なんとカラスがクルミを空中から叩き落として割って食べてるではありませんか!いまはこういうカラス、普通なんですかね?結構感動したんですが(笑)。 イギリス海岸のバス停に行くと…白鳥の停車場がありますww 観光案内みたいなのにも出ていて結構有名ですが、地元のおじさんが町興しで造られたもの。写真撮ったりしていたら、ご本人が現れていろいろとお話ししてくださり、また、資料もいただきました(本当にありがとうございます!) …二人は丁度白鳥停車場の、大きな時計の前に来てとまりました。 さわやかな秋の時計の盤面には、青く灼かれたはがねの二本の針が、 くっきり十一時を指しました。みんなは、一ぺんに下りて、車室の中は がらんとなってしまいました。 〔二十分停車〕と時計の下に書いてありました。 (『銀河鉄道の夜』より) なお、これも凝り方に愛が感じられますww そのおじさまに教えていただいたのがバス停の向かいの八幡さん。 『銀河鉄道の夜』にも登場する『双子の星』のモデルはこのお宮さんなのではないかとのこと。確かに可愛いお宮さんが二つあります♪ 天の川の西の岸にすぎなの胞子ほどの小さな二つの星が見えます。あれは チュンセ童子とポウセ童子という双子のお星さまの住んでいる小さな水精の お宮です。 (『双子の星』より) お昼をいただいたかみさんというお食事処は、お料理ももちろんなんだけど、ご飯がとても美味でした!夜また来たいところでしたが、この日の宿は食事が出るので、泣く泣く昼のお酌で我慢しましたww 最終日くらいはいい思いをしようと佳松園という温泉旅館へ。 ここがもう、食事もお風呂もサービスも抜群に良かった!雰囲気も抜群だったし、たまにはこういうところに泊まるのもいいもんですね笑。 さて、実はここの裏手には実は名所がありまして。 「何処さ行ぐのす。」さうだ、釜淵まで行くといふのを知らないものも あるんだな。〔釜淵まで、一寸ちょっと三十分ばかり。〕 (『台川』より) この作品の舞台となった釜淵の滝です。 これも私は小さいころから大好きだった作品なので、思わず感興に浸ってしまいまして、あちこち撮りまくってしまいました笑。ああ、ここを賢治と生徒たちが昇って行ったのかと思うと、多少なりとも観光地的になっていようとも、こみあげてくるものがあります。 遊んでたらお風呂遅くなってしまって、遅刻気味で夕食。。。という情けない事態に(苦笑)もったいないのでもちろんもう一度お湯をいただきましたが。 (続く) スポンサーサイト
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