Don Basilio, o il finto Signor

ドン・バジリオ、または偽りの殿様

オペラなひと♪千夜一夜 ~第廿二夜/彼こそ大スター!~

※本来なら今回もカラスと同世代の歌手に焦点を当てる回なのですが、2010年12月6日にこのひとのあまりにも素晴らしい実演に接することができたので、予定変更したもの…というかこの回はこのシリーズの体裁を借りたコンサート・レビューになっています。

Nucci.jpg
Rigoletto

レオ・ヌッチ
(Leo Nucci)
1942~
Baritone
Italy

現代オペラ界の最大の重鎮です。
バスティアニーニやゴッビ、カプッチッリに繋がる伊国バリトンの系譜をたどっていくと、現在の彼に行きつくと言って良いでしょう。

当時御歳68歳ということでもうすぐ古稀も見えてこようかというところなので、見た目にはもうイタリアの何処にでもいそうなじいさんでした。

けれどこのじいさんはそんじょそこらのじいさんではありません!
世界に冠たるスーパースターなのです!

<ここがすごい!>
今回は、コンサートの様子を交えてここで書いていこうと思います。

これまで数は少ないなりにも何度か劇場に足を運びいろいろな歌手を見てきましたが、一昨日のヌッチは本当に別格でした。単に往年の人気歌手の持っているオーラというようなレベルをうんと飛び越して、紛れもなく世界一の藝術家としての存在感を、なんら無理することなく示して呉れたのです。

まずはその声量に度肝を抜かれました。
これまで見てきたのは当然ながらもっと若い歌手の公演だったのですが、彼の声はいままで聴いてきた誰よりも大きく、強靭でした。
そしてただ単に声が大きいだけではなく、その声を持っているテクニックでもの凄く巧みにコントロールしていました。音程、声色、強弱…その巧さもダントツだったと言わざるを得ません。難曲ばかりだったのですが、全て自家薬籠中、余裕綽々と言う感じでした。高音も早口も自由自在。
もちろんライヴですし恐らく細かく聴き返せばどこそこの音程がどうだとか出てくるんだとも思うのですが、それを補って余りあるカリスマ!
68歳でこんなことができるなんていうのは、本当に奇蹟的と言っていいのではないでしょうか!
その68年という歳月は、彼にとって少しもマイナスになっているものではなく、むしろ数々の舞台で養ってきたさまざまな表現の抽斗の源になっているようにさえ思えます。

ひとたび歌が始まると空気が全く変わってしまうのです!
まずは肩慣らしといった感じで普通歌われる最初の歌曲でさえもそうなんです。一昨日はF.P.トスティ、G.F.F.ヴェルディ、そしてR.レオンカヴァッロの歌曲を取り上げたのですが、そこでさえ歌っているヌッチは全て別人。特にヴェルディの「乾杯」での堂に入ったヨッパライぶりは最高でした。

ベル・カントオペラの最右翼と言うべきV.ベッリーニ『清教徒』のアリアで気品のある騎士リッカルドになったかと思えば、ピアノ・ソロを挟んで(ここでは余談になってしまいますがこのピアノ弾きもたいそう腕のある方でした!弾きながら鼻歌歌ってたwww)G.ロッシーニ『セビリャの理髪師』の有名なフィガロのアリアでは、軽妙な演技と達者な早口で闊達なフィガロになりきっていました。普通の歌手ならちょっと気合を入れ直して歌う一番の早口の部分もさらっと歌ってしまって、唖然としてる間に終わってしまいました(笑)それぐらいの余裕綽々っぷり(笑)

休憩後はひたすらヴェルディの難曲オンパレード。死に行くロドリーゴ(『ドン・カルロ』)も復讐に燃えるレナート(『仮面舞踏会』)も懺悔するナブッコも説得力溢れるジェルモン(『椿姫』)も、いずれをとっても美しい旋律を聴かせるだけでは話にならない曲ばかりですが、それぞれ役になりきっていて、ピアノ伴奏で格好こそ燕尾服でしたが、彼が歌うだけでもうオペラの登場人物がそこにいる、オペラの世界が広がってくるのです!
極めつけはリゴレット!この役は彼の十八番中の十八番で、今回のプログラムのなかでも白眉でした…もうことばもありません。涙が流れるばかり。

更に、彼がプロ中のプロ、超一流の藝術家であるということは、その人柄からも滲み出ていました。これだけのプログラムをこなした後に、何と拍手に答えてアンコールを4曲も披露して呉れたのです!1曲目はモンフォルテ(G.F.F.ヴェルディ『シチリアの晩禱』)、2曲目はE.デ=クルティスの歌曲、そして3曲目にはなんとジェラール!(U.ジョルダーノ『アンドレア・シェニエ』/アンコールまで含めるとこれが1番の出来だったかもしれない!)こんだけ歌ってこんな大曲ばかりまだ歌えるのか、という感じですが、4曲目のサービス精神がまた素晴らしかった!有名な“オー・ソーレ・ミーオ”を歌ったのですが、なんと会場に向かって「一緒に歌いましょう!」という動作!もちろんクラシックのコンサートでこんなのは初めて!!かくしてヌッチ率いる大合唱が終わると満場のスタンディング・オベーションと万雷の拍手で熱狂の一夜は…まだ閉じないのが彼のプロ根性というべきところで、このあと100人近いファンのサインと握手、そして写真にも応えて呉れたと言う懐の大きさ!相当お疲れだったに違いないのに、我々には厭な顔見せず終始ニコニコ…本当の大スターというのは彼みたいなひとのことを言うに違いない…ということで完全にレビューになってしまった(^^;

<ここは微妙かも(^^;>
そんな訳で微妙ポイントを挙げるのも憚られるのですが(苦笑)、演技が興に乗ってくるとやたら音程が上ずるときがあって…音源聴くとあれ?ってこともあります(実は私は昔その点であんまりこの人好きじゃなかったwww)
でも実演観るとそんなの瑣末なことですねwww

<オススメ音源♪>
・リゴレット(G.F.F.ヴェルディ『リゴレット』)
シャイー指揮/パヴァロッティ、アンダーソン、ギャウロフ、ヴァ―レット共演/ボローニャ市立歌劇場&合唱団/1989年録音
>当代最高、史上有数のリゴレット歌いですから、もう多少演出がどうだろうと共演者がどうだろうと彼のリゴレットは絶対観るべきです!この哀感にはもう、ただただ涙…。迷ったんですが、ここでは彼の若々しい声が、豪華な共演者(除くヴァ―レット)とともに聴ける音盤を。ただ、彼のこの役であれば、もっと歳を取ってからのものはまた全然違う魅力を楽しむことができるので、あまり躊躇せずに聴いてみるのがいいと思います^^チューリヒでのベチャーワ等との共演のDVDあたりが手に入りやすいのかな?

・ミラー(G.F.F.ヴェルディ『ルイザ・ミラー』)
・西国王ドン・カルロ(G.F.F.ヴェルディ『エルナーニ』)
アームストロング指揮/ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団/1982年録音
>どちらも彼の『ヴェルディ・アリア集』で聴くことができます(『エルナーニ』はボニング盤で全曲ありますが私は未聴)。ミラーは本当に素晴らしくて、彼の声質とまさにピッタリの役です!流麗なカンタービレと感情の爆発するカバレッタ!まさにイタオペの醍醐味と言うべきもの。youtubeに昔ずっと後年2000年代後半の同曲の録音がありましたが、これがまた若いころと変わらぬ気迫の演唱で鳥肌が立ちます。ドン・カルロもまた優美で風格ある旋律を朗々と歌い上げていて見事。このアリア集は全体に質の高い音楽を楽しめるのでおススメです。
(2013.10.9追記)
レンツェッティ指・ミラー(G.F.F.ヴェルディ『ルイザ・ミラー』)
揮/チェドリンス、M.アルバレス、スルヤン、フランキ、シヴェク共演/パルマ歌劇場管弦楽団&合唱団/2007年録音
>『ルイザ・ミラー』入手しました!音質が悪いもののこれは本当に素晴らしい演奏で、個人的にはこの演目のベストの録音のひとつではないかと思います。上記のとおりヌッチは若いころと違わぬ声を響かせている上に、年齢によって彫り込みが深くなっているように感じられます。アリアはまさに鬼気迫る出来ですし、娘との重唱でも流石の風格です。M.アルバレスはいつもどおりやや粘り気のある声ですが、情熱的でアツい歌唱を繰り広げ、文句ないヴェルディ!チェドリンスは立ち上がりはイマイチなものの後半に行くにつれ調子を上げ、2幕のアリアはスコットに迫り圧巻。正直こんなに凄い歌手だと思っていませんでした。脇役もいいし、レンツェッティの生き生きした指揮も気持ちいいですが、唯一スルヤンがな…めり込みはしないけどやっぱりいつものスルヤン。とはいえ全体に熱気が横溢した演奏で、どっぷり伊ものの世界に浸かれます。
(追記2017.3.14)
>この演奏の映像が登場しました!録音だけを聴いていた時も素晴らしいと思っていたわけですが、映像があってみるとこれはまさに稀代の名盤と言っていいように思います。ヌッチの熱唱ぶりは上で申し上げていた通り、しかしこの役に入り込んだ表情、これ以上は考えられない絶妙な演技、映像としてこれ以上のミラーが今後現れることはあるのだろうかと思ってしまいます。特にやはり1幕のアリアは圧巻です。激しいアリアを急ピッチで歌い越え、最後に高らかな高音を加えた後の、まるで神を冒涜してしまった宗教者が見せるような戸惑いと恐れの入り混じった顔には否応なく作品世界に引き込む力があります。伯爵に引っ立てられそうになる場面でも毅然とした威厳のある演技がお見事。この作品の当時には珍しい娘の意志を尊重する父親としての説得力を強いものにしています。アルバレスは見た目は肥りすぎなものの気迫の籠った熱唱で大ブラヴォーな他、チェドリンス、シヴェク、フランキと見た目も歌唱も最高です。スルヤンも映像で見ると演技が上手くて悪くありません。

・ナブッコ(G.F.F.ヴェルディ『ナブッコ』)
ルイージ指揮/グレギーナ、プレスティア、M.ドヴォルスキー、ドマシェンコ共演/VPO&ヴィーン国立歌劇場合唱団/2001年録音
>私にとってのヌッチ開眼となった作品。雷に打たれた後の狂気のナブッコをこれだけ真に迫って表現しているのはあとはカプッチッリとゴッビぐらいのものではなかろうかと思います。特にここではその狂乱ぶりが映像で楽しめるのがありがたいところ。これで演出がもっとスタンダードなものだったら、と思わなくはないですが、ヌッチのお蔭でヴェルディを楽しんだ気分になれるのは幸せなことです。

・レナート(G.F.F.ヴェルディ『仮面舞踏会』)
カラヤン指揮/ドミンゴ、バーストウ、クィヴァー、ジョ共演/VPO&ヴィーン国立歌劇場合唱団/1989年録音
>有名なアリア“お前こそ心を穢すもの”が大変見事で、レナートの燃えるような怒りと切ない愛情をこれだけ立派に歌いこなせるひとも少ないでしょう。 暫し、思わず聴き入ってしまいます。クィヴァーとジョは脇をしっかり固めています。ドミンゴは結構嵌っていて悪くないですが、アバド盤の方がノッてたかな…更に言えばこの役のベストはベルゴンツィでしょう。バーストウはあんまり感心しないですが、カラヤンの音楽作りがさらに感心できません。。。なんだか重ったるくて生命力に乏しい気がします。

・フランチェスコ・フォスカリ(G.F.F.ヴェルディ『2人のフォスカリ』)(2012.10.17追記)
サンティ指揮/ヌッチ、ペンダチャンスカ共演/ナポリ・サン・カルロ劇場管弦楽団&合唱団/2000年録音
>マイナーだし作品として盛り上がらない内容ではあるのだけれども、ここでのヌッチの歌唱はまさに感動的なものです。特に息子の死を知ってからの最後のアリアとフィナーレは凄演というべきもので、これをヌッチの映像で見られるというのは非常にありがたい。ラ=スコーラが良いのは前述のとおり、サンティの手腕も見事なもの。

・フィガロ(G.ロッシーニ『セビリャの理髪師』)
ヴァイケルト指揮/ブレイク、バトル、ダーラ、フルラネット共演/メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団/1989年録音
>伊国の気の良いにいちゃんそのまま笑!活力に溢れ勢いのある姿はフィガロそのものと言っても過言ではないでしょう^^軽妙洒脱な歌いっぷりはこの頃からですね。伯爵の重要性が増してもフィガロのキャラクターが薄まらないというのは、今日の上演に於いて重要な課題だと思いますが、彼ならそんな心配は毛頭ありませんね(笑)大アリアを復活させたブレイクは演技面でもコミカルで楽しいし、フルラネットの小心者っぽいバジリオも笑わせます。極めつけはダーラのバルトロで、このころはこの人のコメディ・センスにかなう人はいなかったのではwwwバトルはあんまり好きではないですが、ここではまずまず。見た目もかわいいし。でもラーモアとかヴァレンティーニ=テッラーニにやって欲しかったな。
(2014.8.13追記)
アバド指揮/アライサ、ヴァレンティーニ=テッラーニ、ダーラ、フルラネット共演/ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団/1981年録音
>伝説の来日公演です。ライヴの音源ですし、残念なことにアライサが大アリアを歌えるのに歌っていないなど惜しいところもありますが、全体にロッシーニの愉悦に溢れた素晴らしい演奏です。ヌッチのフィガロは実に快活でパワフル、にやけ具合も最高です。ちゃきちゃきでべらんめえな、義賊っぽい感じのフィガロとでも言いましょうか。フットワークの軽い歌で、殆ど素で演じているのではないかと思わせるほど。よほど演技が面白いのか客席の爆笑も録音されており、映像がないものかと歯痒さを感じるぐらいです(笑)他のメンバー?これで悪かろうはずがありますまい!

・西国王アルフォンソ11世(G.ドニゼッティ『ラ=ファヴォリータ』)
・リッカルド・フォルス(V.ベッリーニ『清教徒』)
マジーニ指揮/イギリス室内管弦楽団/1989年録音
>こちらは『ベル・カント・アリア集』に収められているもの。いずれも全曲で聴けないものばかりですが、全曲で聴きたくなります(笑)キャリア後半のヴェルディのイメージの強い人ではありますが、考えてみればフィガロをやってたぐらいだからこの辺のベル・カントものでも素晴らしい歌唱を披露して呉れるのは当たり前と言えば当たり前か。どちらの役も色仇ですが、まあ惚れ惚れするほどカッコいいこと。アシュトン卿エンリーコがないのだけが残念です。

・シモン・ボッカネグラ(G.F.F.ヴェルディ『シモン・ボッカネグラ』)2012.11.27追記
ショルティ指揮/ブルチュラーゼ、テ=カナワ、アラガル、コーニ共演/ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団/1988年録音
>シモンと言えばカプッチッリではあるものの、本盤やゴッビ主演のガヴァッツェーニ盤などなど実は結構名盤があったりします。ここでのヌッチは若い声ながらも性格的な表現がつけられていて、非常に堂々とした総督ぶりを示しています。ブルチュラーゼの迫力ある歌声やアラガルの清潔な声も素晴らしいが、コーニはもう一歩踏み込んでも良かった気がする。テ=カナワは個人的には趣味じゃないものの大過なくといったところか。
(2013.10.9追記)
カッレガーリ指揮/スカンディウッツィ、イヴェーリ、メーリ、ピアッツォラ、ペッキオーリ共演/パルマ歌劇場管弦楽団&合唱団/2010年録音
>いやこれは凄い映像が出ました。私自身はアバドやカプッチッリの舞台は画としては見れていませんので確実なことは言えませんが、手に入りやすい映像としては最高のシモンではないでしょうか。ヌッチのシモンは上記のショルティ盤を遥かに上回る、役と同化した感動的な出来栄えで、アメーリアが娘だと気づく場面やフィエスコとの和解は涙なくして観ることはできません。そして堂々たる演説!見栄の切り方と言い歌い口と言いカッコいいんだぁこれが!やっぱりシモンは役者が必要な演目です。対するスカンディウッツィのフィエスコもまた大変な力演!世界中で何十年もこの役を第一線で歌ってきたことがよくわかる深みのある歌唱です。声といい歌と言い端正な彼ですが、ここではアリアで声を荒げるなどスリリング(もちろんそれがバッチリ決まってるからですが)。ヌッチのシモンと対峙し得る数少ない大物でしょう(あとはF.フルラネットかな?)。イヴェーリは昔実演で観たときにそれほどでもない印象だったのですが、ここではびっくりするぐらい見事。歌も立派ですが演技もしっかりしていて、ヌッチと並んでも遜色ありません。メーリはこの役には声が軽いとは思うのですが、絶好調らしくうっとりするような高音を聴かせます。ベル・カントを得意としているだけあって歌心もありますし、衣装も髭も似合っています(笑)要役のパオロのピアッツォラは初めて聴くバリトンで、老けメイクはしているもののまだ若そうでしたが、こちらも充分立派な歌唱。実に憎々しい、そして脆い部分の見えるパオロでした。ピエトロのペッキオーリも存在感があり、良かったです。カッレガーリの指揮はいつも感心しますが、ここではいつもの清新さに加えて作品に見合った重厚さもあってブラヴォ!蓋し、新時代の名演と言えるのではないでしょうか。

・アルバーチェ(W.A.モーツァルト『イドメネオ』) 2013.11.29追記
プリッチャード指揮/パヴァロッティ、グルベロヴァー、バルツァ、ポップ、ストロジェフ、山路共演/WPO&ヴィーン国立歌劇場合唱団/1983年録音
>不滅の名盤。普段のヌッチのイメージとは全く違うレパートリーですが、ここでの歌唱は素晴らしいものだと思います。主役のパヴァロッティもそうなのですが、伊ものでの脂っこい表現はここでは影を潜め、爽やかで清々しい古典の世界の演奏。特に最初のアリアは音域が非常に高いのにもかかわらず気持ちよく歌いきってます(と言うかこの役そもそもテノールらしいんです…ちょっと良く判らなかったんですが、ひょっとして、移調してない?!)。プリッチャードの格調高い音楽づくりと超強力な共演陣に言葉もありません。チョイ役ですが夭逝した山路が参加しているのも嬉しいです^^

・ジャンニ・スキッキ(G.ドニゼッティ『ジャンニ・スキッキ』)2015.6.27追記
ヴァイケルト指揮/シラグーザ、ピッツェリダー共演/ヴィーン国立歌劇場管弦楽団/2003年録音
>リサイタルが良かったので全曲を仕入れてみて、改めてこれはまた実にヌッチにぴったりな役だなあと思わせる快演です!大きな目立つアリアこそないものの、曲中ほぼ出ずっぱりで演奏を牽引している様子がとても頼もしいです^^演技派の彼らしく、やや屈折した雰囲気と言いますか、いかにも喰えない人物を演じていますが、それが滑っていないあたり当然と言えば当然ですが立派なものです。それでいて憎めない風情を湛えているのも好印象。まさに千両役者的な藝とでもいいましょうか。共演ではシラグーザのなりきったリヌッチョとヴァイケルトの指揮がいいです。肝心のラウレッタのピッツェリダーがはっきり落ちるのが残念。

・ポーサ侯爵ロドリーゴ(G.F.F.ヴェルディ)2015.6.27追記
フェッロ指揮/ファン=ダム、ラ=スコーラ、テオドッシウ、コムローシ、ヴァニェーイェフ、シニョリーニ共演/ナポリ・サン=カルロ歌劇場管弦楽団&合唱団/2001年録音
>ヌッチ・ファンの溜飲を下げる映像!アバド版で全曲入れているものの、仏語のためかいまひとつ燃焼度が低く感銘が少なかったのですが、ここでは伊語ですし、ライヴ!既にそれなりのお歳だったと思うのですが、信じられないぐらい輝かしい声で歌っていてはっとさせられます。特に死の場面は入魂の歌唱というべきでしょう、演出の問題で演技そのものは少ないのですが、その分を歌でしっかり補っていて、涙なしには聴けないし、パワフルで身の詰まった高音は刺激的です。共演の面々もほぼほぼ好調というべきパフォーマンスを披露しているので、少なくない彼の登場する重唱では非常に良いケミストリーが働いているように思います。特にラ=スコーラとの相性は心地いいですね^^彼と同じく大ヴェテランのファン=ダムがまた全体を引き締める声量とダンディな存在感もまた特筆すべきもの。コムローシ、ヴァニェーイェフも立派なもの。テオドッシウも素晴らしいのですが、彼女ならもうちょっとを望んでしまいます。ほとんど何もしていない演出は僕は割と気にしませんが、フェッロ先生の指揮がここではどうももたっとした感じになってしまっていて惜しいです。

・コッラード・ヴァルドルフ(G.ドニゼッティ『ルーデンツのマリア』)2015.9.25追記
インバル指揮/リッチャレッリ、クピード共演/フェニーチェ劇場管弦楽団&合唱団/1981年録音
>ドニゼッティの秘作の名盤。インバルが振っているというのがちょっと面白いところでもあります^^ヌッチは声そのものが一番脂の乗っていた時期で、徐々にヴェルディへと移行していくことが感じられるドラマティックな歌唱が、このドニゼッティの中でもドラマティックな作品にピッタリと来ています。暗く激しい性格のキャラクターを、美しいながらも彫り込みの深いカンタービレでつくりあげています。リッチャレッリは個人的にはあまりぱっとしたイメージがない人なんですがここでは上々のヒロイン。あまり録音のないクピードもやや軽めながらも硬質な輝きのある声で力演しており、ヌッチとの重唱はベル・カント好きにはたまらないもの。伊ものファンなら是非持っておきたい演奏です。
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