Don Basilio, o il finto Signor

ドン・バジリオ、または偽りの殿様

オペラなひと♪千夜一夜 ~第廿三夜/迫力満点~

カラスの時代の名手について取り上げてきた本シリーズ。
今回はカラスとの共演も多く、声を聴くだけでもド迫力の名メゾに焦点を当てていきたいと思います。

Barbieri2.jpg
Ulrica

フェドーラ・バルビエーリ
(Fedora Barbieri)
1920~2003
Mezzo Soprano
Italy

写真見てみると意外と美人なんだよねwww
というかこういう如何にも気の強そうな美人だからこそおっかないのかもしれない。そう言えばディズニーの『白雪姫』や『眠り姫』の悪役女王はどちらもおっかない美人だし(^^;

前出のジュリエッタ・シミオナートや、エベ・スティニャーニとは同時代の歌手であり、特にシミオナートとは激しいライバル関係にあったと言います。当時は厳格だった契約の関係でカラスは実はシミオナートとの共演録音はあんまりない(わかんない、俺が知らないだけかも汗)んですが、このバルビエーリとは結構よく共演しています。
またアルトゥーロ・トスカニーニ指揮のG.ヴェルディ『レクイエム』のメゾ独唱者としても知られています。

声が衰えて主役を張れなくなった後も、その優れた演技力と存在感の強さでさまざまな脇役をこなしています。そういう意味ではバスのイタロ・ターヨと同じような経歴を歩んだひとと言っていいかもしれません。

<ここがすごい!>
もの凄く力強い声を持った歌手です。
特にその低音の逞しさというのは、群を抜いているように思います。それこそときとして、シミオナート以上のものを感じます。美しいかどうかとはまた別の軸としての、パワーで以て聴く者の心を捉えてしまうタイプの声だと言って良い。

そしてその凄い声を惜しげもなく使って体当たり的な表現をしていくものですから、その印象たるや強烈。歌詞の一語一語の意味を歌いしめて行くかのような、或る意味でかなりねっとりとした歌唱と言っても良いかもしれません。頭が良いんだろうね(^^)ひとによってはその歌い方が濃過ぎて好きではないということをおっしゃるかも知れませんが、ハマってしまうと癖になる。そういう演唱をするひとです。そう見ていくと、テノールのフランコ・コレルリと通底するところがあるようにも思いますね。

加えて言えば演技がかなり達者。単純にねちっこく歌っていくだけではなく、その役の個性というのを最大限に表出して行くという点でも傑出しているでしょう。そういった力があるからこそキャリアの後半での数々の脇役の評価が高いと言っていい。G.ロッシーニ『セヴィリャの理髪師』での不満たっぷりのおばさんベルタは衰えはともかく非常に楽しめますし、私は寡聞にして未聴ですがG.F.F.ヴェルディ『リゴレット』のジョヴァンナや同『ファルスタッフ』のクィックリー夫人の世評も大変高いです。ジョヴァンナなんてチョイ役過ぎて普通は評判とかそういうこととほぼ縁がないような役なんですけどね(笑)

と、こういった藝風のひとなので、全盛期のものとして光るのはやっぱり強烈な個性を放つ役。G.F.F.ヴェルディ『イル=トロヴァトーレ』のアズチェーナであるとか同『仮面舞踏会』のウルリカ、F.チレーア『アドリアーナ・ルクヴルール』のブイヨン公妃なんかも素敵です。
一方意外と(?)G.ドニゼッティ『ラ=ファヴォリータ』のレオノーラ・ディ=グスマンとか同『ドン=セバスティアーノ』のザイーダみたいな役でも聴かせて呉れます。

<ここは微妙かも(^^;>
私はこういう癖のあるひとは大好きなんですが、前述の通りアクが強くてやだという方は居るかもしれません。かなり力押しで表現する藝風ではありますしね(^^;決して悪いとは言いませんがG.ビゼー『カルメン』題名役や、C.サン=サーンス『サムソンとデリラ』のデリラなんかはもはや魅惑のファム=ファタールを通り越して怖すぎかも…趣味の分かれるところです。

全盛期でもあまり高音に強くなく、結構ぶら下がってしまうのも弱点でしょうか。ライヴを聴くと最高音を避けているものも少なくありません。

G.ロッシーニもののアジリタの精度についてはシミオナート同様、今日の耳からすれば聴き劣りしますが、この点について強く非難するのは時代的に鑑みて必ずしも公平ではないでしょう。

<オススメ録音♪>
・アズチェーナ(G.F.F.ヴェルディ『イル=トロヴァトーレ』)
カラヤン指揮/カラス、ディ=ステファノ、パネライ、ザッカリア共演/ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団/1956年録音
>彼女の藝を最もよく知ることのできる役だと言っていいでしょう。バルビエーリを取るかシミオナートを取るかは殆ど趣味の問題と言って良い。ここでも迫真の歌唱を繰り広げており、ゾクゾクするような音楽になっています。ひたすらバルビエーリ渾身のアズチェーナが見事。そのほかではザッカリアのフェランドがいつもながら手堅く、聴いていて心地よいです。あとはいまいちかな…この録音は、多くの“カラス教徒”の方々が「カラスを聴くためだけにある音源」何て言っていますが、少なくとも私にとってはこれは「バルビエーリを聴くためだけにある音源」。レオノーラがカラスに合っているとは思えません。ディ=ステファノもパネライも頑張ってるけどそれぞれ柄に合わない役を頑張って歌ってるっていうぐらいの感じ。カラヤンはこういう熱気が大事な曲ではのろまな感じがして好きじゃないです。

・ウルリカ(G.F.F.ヴェルディ 『仮面舞踏会』)
・ブイヨン公妃(F.チレーア『アドリアーナ・ルクヴルール』)
(ごめんなさい詳細が分かりません)
>どちらもアリア集から。全曲もたぶんあると思うんだけど…。ウルリカは話全体から見ると登場場面は少ないのですが、主人公リッカルド(またはグスターヴォ)の暗殺を予言する重要な役であり、短い間に存在感を主張しなくてはならない難しい役だと思います。こうした役ではやはり彼女の迫力満点歌唱が活きます。ブイヨン公妃もメゾの代名詞的な役ですが、こういう憎々しい役を演じさせてもうまいですね(^^)見た目もにも華があり、凄味もある悪役ぶりだったんじゃないでしょうか。

・レオノーラ・ディ=グスマン(G.ドニゼッティ『ラ=ファヴォリータ』)
クエスタ指揮/G.ライモンディ、ネーリ、タリアブーエ共演/トリノ・イタリア放送響&合唱団/1955年録音
>ここではうって変わってその深い声を響かせて魅力的なヒロインを演じています。演技派の面目躍如たるところでしょう。迫力、と言うのが今回のキーワードではありますが、ここでは迫力とは無縁のしっとりとした雰囲気を作っています(笑)共演陣も魅力的で、圧倒的な美声で聴かせるG.ライモンディ、頑として動かなさそうな宗教権威の力を感じさせるネーリとは、今でもベストのひとつと言って良いのではないでしょうか。タリアブーエがもう少し別の人だったらと思わないことはないですが(苦笑)

・ベルタ(G.ロッシーニ『セヴィリャの理髪師』)
レヴァイン指揮/ゲッダ、ミルンズ、シルズ、カペッキ、ライモンディ共演/ロンドン交響楽団&ジョン・オールディス合唱団/1975年録音
>所謂シャーベット・アリアぐらいしか見せ場のない端役ではありますが、グチグチと不満を独り言するオバタリアンな感じがもの凄く良く出ていて、思わずゲラゲラ笑ってしまいます。ああ、こういうオバサンいるいるって言う感じww共演、というか主演の皆さんも間違いのないメンバーで非常に愉しい音盤になっています(ロッシーニかって言うとちょっと違う気もするけど^^;)。特にカペッキのケチ臭くてねちっこいバルトロは、コレナやダーラと並ぶ最高の出来!
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コメント

役造り上のこともあるでしょうが、それとは別にシミオナートとの個人的軋轢でいろいろ批判しているところは、すごかった。まあ。他にもあの時代には、火花を散らしている人たちは多かったみたいですけどね。
チェネレントラの歌唱など聴くと。とても朗らかな感じもする歌手なんだけど。
女は怖い...
2012-10-18 Thu 15:05 | URL | 斑猫 [ 編集 ]
まあ、ああいう業界ですからね^^;
加えて、ヴェルディなんかはそうやってバトルをしてる方がいい音楽になりそうな気がします(ぇ

>チェネレントラ
そんなもんまで歌ってるんですかwwちょっと聞いてみたいwww
2012-10-18 Thu 21:39 | URL | Basilio [ 編集 ]

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