Don Basilio, o il finto Signor

ドン・バジリオ、または偽りの殿様

Basilio大学士の旅宿(その3)

 ところがどうだ名高い楢ノ木大学士が
 釘付けにされたように立ちどまった。
 その眼は空しく大きく開き
 その膝は堅くなってやがてふるえ出し
 煙草もいつか泥に落ちた。
 青ぞらの下、向うの泥の浜の上に
 その足跡の持ち主の
 途方もない途方もない…
 (『楢ノ木大学士の野宿』より)

 【旅宿第五日】

旅館ということでいつもよりかなり多めの朝ごはんをゆったりと食べ、も一度温泉に入ってからバスで出発。さあ、最終日。
…と言ってもこの日は完全に行き当たりばったりに、そういえば行ってないやというところをめぐったのですが笑。

花巻駅の近くのベンチには、かえるくんたちのブロンズが。
何とも言えず絶妙な表情なので撮っちゃった笑。

 あるとき、三十疋のあまがえるが、一諸に面白く仕事をやって居りました。
 (『カイロ団長』より)

で、今日の目的地は高村光太郎の手をもとにした賢治の詩碑。
これが駅から3㎞って書いてあるんだけど、遠い遠い…途中で薬局のおばちゃんはじめ地元の人とかと絡みながら言ったというのもあるんだけど…それにしても遠かった(^^;

 雨ニモマケズ 
 風ニモマケズ
 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
 丈夫ナカラダヲモチ
 慾ハナク
 決シテ瞋ラズ
 イツモシヅカニワラッテヰル
 (通称『雨ニモ負ケズ』より)
こうしてあちこち回ってからここにやってくると、なんというか達成感。
僕自身は賢治の詩については苦手だけれども、こうして有名なフレーズに触れると、旅に円環性が出てくるような気がしてくる。
しかし、、、光太郎さんいろいろ間違えすぎじゃね?誤植がww

この碑が立っているところが、三日目に行った羅須地人協会の建物がもともとあった場所なのだそう。
そりゃあ、ほんまもんの「下の畑」を観に行きたいと思う訳です笑。

 そしてどれも、低い幅のせまい土手でくぎられ、人は馬を使ってそれを
 掘り起こしたりかき回したりしてはたらいていました。
(『グスコーブドリの伝記』より)

思った以上に小さな土地です。
ここで賢治は理想の農村を目指して活動し、やがて挫折していくことになる…賢治の人生の中でも大きな位置を占める土地に立つことができ、感慨も一入でした。
ちなみにこの下の畑ですが、結構協会からきょりがありますww

花巻のランドマーク、マルカンデパートの食堂でちょっと腹ごしらえ。
名物14段ソフトクリーム。懐かしい、昔の、ちょっと重たいソフトクリームで、私はとても好きでした^^

賢治の墓所にもご挨拶に伺いました。
こうしてここまで賢治の世界にどっぷりと漬かるとは…自分でも夢にも思いませんでした。
そして、近くにあった『風の又三郎』の群像を観に。花巻市文化会館のお庭、というか公園に立っています。

 三郎はまるであわてて、何かに足をひっぱられるようにして淵ふちから
 とびあがって、一目散にみんなのところに走って来て、がたがた
 ふるえながら、
「いま叫んだのはおまえらだちかい。」とききました。
「そでない、そでない。」みんないっしょに叫びました。
 (『風の又三郎』より)

この花巻市文化会館は、賢治の勤めていた花巻農学校の跡地なのだそうです。
当時の俤を知ることはできませんが、碑なども立っています。

花巻最後の食事は、ちょっとこじゃれた洋食屋ポパイ。
ここでは岩手名物の白金豚をいただきました。この旅行、魚料理が多かったので、ちょっと久々の肉料理。味はここも上々でした♪

 税務署長がまた見掛けの太ったざっくばらんらしい男でいかにも正直らしく
 みんなが怒るかも知れないなんといふことは気にもとめずどんどん云ひたい
 ことを云ひました。
 (『税務署長の冒険』より)
駅への道の途上で税務署を見かけたので、ちょっとこのマイナーな作品を思い出したりしました笑。ちょっと毛色の違う作品なので、未読の方にはおススメ。

そんなこんなで私の珍道中も、今回はひとまず終わった訳です。

イーハトーブにはゆっくりとした時間が流れています。
せこせことあちこち予定通りに見たいとか、電車の時間をばっちり調べてとか、そういう旅とは無縁の世界があるように思います。
足を運ぶ際には、どかんと時間を取って、ゆったりと過ごしたい。
そういう場所でした。

今回は尋ねられていない場所がたくさんあります。
それこそ盛岡近辺にはまったく行っていないし、賢治の愛した山にもほとんど入っていません。
次に行くときには、そのあたりを回ってみたいと思います。

この長々とした旅行記を読んでくださった皆さんに、感謝を込めて。

 「帰れ、帰れ、もう来るな。」
 「先生、困ります。あんまりです。」
 とうとう貝の火兄弟商会の
 赤鼻の支配人は帰って行き
 大学士は葉巻を横にくわえ
 雲母紙を張った天井を
 斜めに見ながらにやっと笑う。

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