Don Basilio, o il finto Signor

ドン・バジリオ、または偽りの殿様

1日だけの王様、または偽のスタニスラオ

1日だけの王様、または偽のスタニスラオ
Un giorno di regno , o il finto Stanislao
1840年初演
台本:フェリーチェ・ロマーニの台本の改竄

<主要人物>
騎士ベルフィオーレ(Br)…ポーランドの騎士で、国王スタニスラオ1世の影武者。
ケルバル男爵(B/Br)…ポーランドの男爵。娘と姪を政略結婚させようとしている。
ポッジョ伯爵夫人(S)…男爵の姪でベルフィオーレの恋人。
ジュリエッタ(S/Ms)…男爵の娘。
エドアルド・ディ=サンヴァル(T)…財務官の甥の将校。ジュリエッタの恋人。
ガスパロ・アントニオ・デ=ラ=ロッカ(B/Br)…ブリターニュの財務官。エドアルドの叔父で、男爵が娘と結婚させようとしている相手。
イヴレア伯爵(T)…ブレストの軍司令官。男爵が姪と結婚させようとしている相手。

<音楽>
・序曲
○第1幕
・導入、男爵と財務官の2重唱
・ベルフィオーレのカヴァティーナ
・ベルフィオーレとエドアルドの2重唱
・ポッジョのカヴァティーナ
・合唱とジュリエッタのカヴァティーナ
・ジュリエッタ、エドアルド、ポッジョ、ベルフィオーレ、男爵、財務官の6重唱
・ジュリエッタとエドアルド、ベルフィオーレの3重唱
・男爵と財務官の滑稽な2重唱
・フィナーレ

○第2幕
・合唱とエドアルドのアリア
・男爵と財務官の2重唱
・ポッジョとベルフィオーレの2重唱
・ポッジョのアリア
・ジュリエッタとエドアルドの2重唱
・ジュリエッタ、エドアルド、ポッジョ、ベルフィオーレ、男爵、財務官、伯爵の7重唱
・フィナーレ

<ひとこと>
ヴェルディ最初の喜劇ですが、まあ運の無い作品です。
前作『オベルト』の成功を受けて新作を依頼されたヴェルディですが、まずは台本選びの段階で引っかかります。紆余曲折あって漸く決まったこの台本も、ヴェルディの気に入るようなものではなく(ロマーニが書いたことになっていますが、かなりの改竄が入った粗悪なもの)、渋々だったとか。その上私生活でも子供たちと奥さんの死が相次ぎ、とてもとても喜劇と言う気分ではないときに作曲せねばならなかったのだそうです。
こんな状況ですから初演は失敗に終わり、自分は向かないと判断したヴェルディは喜劇を封印。次の喜劇は最後の作品である『ファルスタッフ』まで待たねばなりません。
そんな訳でこの作品は、「喜劇に向かないヴェルディが、自身の人生の最悪の時に嫌々ながら書かされて、案の定できた失敗作」というありがたくないレッテルだらけになってしまった、ちょっと可哀そうな作品なのです。

では実際どうなのか?
後のヴェルディを知っている耳からすると、前作『オベルト』と較べても更にドニゼッティっぽい気はします。台本から想像するようなドタバタ喜劇感のある音楽ではなく、ロッシーニほどの底抜けな明るさはないし、ドニゼッティに似てるにしても根っからの喜劇の音楽と言うよりは例えば『シャモニーのリンダ』とか『ドン・パスクァーレ』のような感じ(や、『パスクァーレ』はげらげら笑う系ですがね笑)。うまく言えないですが、ブッファの台本にセミ・セリアの音楽がついてしまったようなちぐはぐな印象はあります。
さりとてあっさりとこれを失敗作と片付けていいかと言うと、どうしてどうしてこの作品の水準は決して低くありません。うきうきするようなものではないですが、役者さえ揃えば思わずニヤリとさせられるような作品に仕上げっています。

個人的には、ここでのヴェルディの筆は大きなアンサンブルよりもアリアや2重唱などで冴えているように思っていて、それだけに主要な役どころで人を揃える必要があり、上演は結構大変なのではないかと。私が持っている音源は後で挙げる2つですが、どちらも全部満足とは行っていません。
オモシロ要員でいくならまずはやはり男爵と財務官が大事です。冒頭の小さなものを含めると3回このコンビの2重唱があり、そのどれもがコミカルで楽しいドタバタものです。ここは藝達者なひとに歌って欲しいところ。主人公たるベルフィオーレもまたブッファに於けるバリトンですからオモシロ要素は必要な訳ですが、一方でポッジョとの戀の鞘当てもありますし、偽国王だと自覚して行動しているので、この喜劇全体を斜め上から見ているようなポジションに見えなくてはいけないし、と結構な難役でしょう。ポッジョはF.レハール『メリー・ウィドウ』のハンナに似た役で、勘の鋭い色気のある雰囲気が欲しいし、技巧的にも結構大変。技巧と言えば若い戀人たちもベル・カント的な技術の欲しいところ。
少なくない登場人物への要求がいずれも高いことも、この作品がスターダムになりづらい理由かもしれません。

<参考音源>
○アルフレード・シモネット指揮/ベルフィオーレ…レナート・カペッキ/男爵…セスト・ブルスカンティーニ/ポッジョ…リナ・パリューギ/ジュリエッタ…ラウラ・コッジ/エドアルド…フアン・オンシーナ/財務官…クリスティアーノ・ダラマンガス/伯爵…マリオ・カーリン/ミラノ放送管弦楽団&合唱団
>伊国の古い古いレーベルチェトラの録音。ここの録音は、恐らくまだ時間的な制限もいろいろあった時代のようだし、慣用カット当り前の時代の流れの中にあるので、どの音源もカットがかなり入ってます。これもご多分に漏れずと言うところ。ところがこれ、ものすごく楽しいんです。まずは男性低声3人のできが非常にいいと言うところでしょう。我らが性格派カペッキはコミカルなんだけれども男らしくベルフィオーレを演じているし、ブルスカンティーニのけたたましい男爵も笑えます。ここでしか聴いたことのないダラマンガスも声楽的には不安定な箇所もありますが、雰囲気は満点。オンシーナの歌い方は古風でいまどきの力強さはありませんが、柔らかに響く声はタリアヴィーニやヴァレッティを彷彿とさせて、悪くありません。コッジもまずまず。一番の問題は当時の名花パリューギで、高音がやや不安定なのと、声があまりにも細く可憐でポッジョが小娘のように聴こえてしまうのはちょっと…。音質は当時のものとしては悪くないし、シモネットの指揮にも不満はありません。

○リコ・サッカーニ指揮/ベルフィオーレ…アレッサンドロ・コルベッリ/男爵…エンツォ・ダーラ/ポッジョ…クリスティーナ・ロルバフ/ジュリエッタ…ルチアーナ・ディンティーノ/エドアルド…パオロ・バルバチーニ/財務官…ネルソン・ポルテッラ/伯爵…ロベルト・マッツァレッラ/ヴェローナ野外歌劇場管弦楽団&合唱団
>最近の音源なのでいい音質でカットも少なく聴けるかな、と思って入手したのですが微妙でした^^;正直音質はシモネット盤の方がうんと良く、聴けないものではありませんがライヴとは言え新しい音源でこれはどうなの?という感じ。カットは実際少ないですが、例えばエドアルドのカバレッタなんかは繰り返して欲しかったかな。全体に演奏の質自体は決して低くないし、コルベッリとダーラという名ブッフォ2人はそれなりに面白いのですが、弾けるような楽しさのあるシモネット盤に較べるとやや遜色があります。
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